徳島県と香川県を拠点に、幼稚園から大学院までを傘下に持つ学校法人村崎学園。学園中枢の徳島文理大学は、2007年から毎年、「徳島文理大学連続特別講義」を開催している。
今後の日本・地域を担う学生たちに、「人類が直面している課題を再認識し、課題解決に貢献してほしい」という願いのもとに始まった同講義は、2016年で10回を数えた。
本書は、2015年(9回目)の同講義、「地方創生から日本、世界の未来を考える」の講義内容を加筆修正してまとめたもの。毎年の講座ごとにまとめて出版している。
この年の第1講義は、全国平均より速いスピードで高齢化が進む四国の現状を「課題先進地域」と捉え直し、同じような状況にある他の地域に先駆けて「課題〈解決〉先進地域」として脱皮を図ることをテーマとした。2015年は「地方創生元年」ともいわれたため、連続講義を起爆剤に「再生」議論を活発化させるねらいもある。
連続講義には、毎年各界の第一人者を複数招へいしている。この年の第1講義には、政党公約「マニフェスト」という言葉の普及に尽力したことで知られる北川正恭・元三重県知事が登壇。ほかにも、ロコモティブシンドローム予防の権威、鶯春夫・徳島文理大学保健福祉学部教授、食品衛生管理の田畑秀樹・ティービーティー社長、小林利彦・東京大学薬友会会長が講義を行った(特別協力:青木豊彦・アオキ取締役会長)。
講師それぞれに活動するフィールドは異なるものの、自身の体験を交えながら具体的に語られるのは、「モデルのない生き方、課題解決のリアリズム」そのものだ。監修を務めた桐野豊・徳島文理大学学長は、連続講義の内容を「イノベーションにつながるヒント」と評価する。
ところで、第1講義の北川氏は、江戸期から現在までの日本の歴史をたどりつつ、「固定観念に縛られるな」「世の中のルールは誰かが勝手に作ったもの」と総括する。地域の宝を発掘し、自分たちで時代を作りだしていけ、という提言は、インターネット網の発達で時間と距離を克服できるようになった現代において、地域活性化への力強いエールとなるだろう。