鹿児島大学大学院 腫瘍学講座 消化器・乳腺甲状腺外科学 前村 公成 准教授

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研究、臨床、教育の3分野で先進的な取り組みを進める

【まえむら・こうせい】 鹿児島高校卒業 1991鹿児島大学医学部卒業 鹿児島大学医学部第一外科研修医 1997 米国Johns Hopkins大学医学部外科リサーチフェロー 2006 済生会川内病院外科部長 2009 鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科学助教 2015 同准教授

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◎前村式持針器で特許を取得

 私が開発したのは、深部持針器というカテゴリーで、術野の深い部分、視野が狭くて操作しにくい場所で糸を縫合するための器具です。

 私は肝胆膵外科が専門ですので、体のかなり奥のほうで胆道がんや肝臓、胆道の再建手術をするのですが、その煩雑な方法をより簡易に、確実にしたいということが開発のきっかけになりました(2009年に日本内視鏡外科学会のカールストルツ賞を受賞)。すい臓手術でも腹腔鏡手術が取り入れられていますので、腹腔鏡用の持針器もいくつか製作しています。特許を取得し、製品化してからは整形外科、泌尿器科、婦人科、耳鼻科などの他科の先生にも使っていただいています。

 もう一つ特許取得しているのが腹腔鏡のトレーニングボックスです。さまざまなトレーニングに対応できるように形状を工夫しています。ちょっとした工夫なのですが、特にすい臓関係や胆道の再建方法をより効率的にトレーニングできるシステムになっています。

 現在はすい臓手術の再建方法について、より簡便かつ安全にするための術式を、動物実験などを繰り返して研究しています。

 すい臓手術に関しては再建のリスクが高く、術後の合併症などで致命的なことになることもあります。世界中の研究者が術式を改善していますが、私たちの研究室でも長年取り組んでいます。

 胆道系や、すい臓系の術後経過が悪いとその後のがん治療にすぐ入ることができないので、がん治療をより安全に行うための一連の流れとして、合併症が少なくなるような安全な術式にする必要があります。

 もうひとつの研究テーマであるがん治療について、われわれの研究班では分子生物学的にアプローチしています。

 がんの特性を見極めて集学的な治療をするための研究を続けてきましたが、それに遺伝子解析やがんの特性情報を取り入れるなど、将来的には「治療プラス外科」についてベストな組み合わせを解明したいと思います。

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前村准教授が開発した持針器

◎専門教育、研究の本質

 鹿児島県内でもかなり田舎の部類に入ると思いますが、大隅半島の山間部で生まれ育ちました。小学校の高学年くらいの時に祖母が病気で亡くなりました。当時は知らなかったのですが、すい臓がんだったようです。親戚に医療関係者はいませんが、今思うと祖母の死は医師を志すきっかけになったのかもしれません。

になったのかもしれません。 研究のやりがいとはなにかを考えてみると、医学の世界ではまだ解明されていないことが多いことだと思いますね。さらに、今後の研究結果次第ではこれまでの常識が変わっていく領域もたくさんあります。

 また、研究成果が臨床現場にフィードバックされて実際に社会の役に立っているという実感があります。これまでにない新しいものを常に探求しなければならないという厳しさはありますが、研究と実践の距離が非常に近いのは大学で医学研究に携わる醍醐味(だいごみ)だと思います。

 一方、大学は教育機関として人を育てる使命も負っています。医学教育ということでいえば、一般の病院でも教育現場としての側面はあるでしょうが、大学においてはもっと幅広く、よりベーシックな部分から教育に関わっていくという点にやりがいを感じますね。

 では、どのような医師を育てるべきなのでしょうか。私のアメリカでの留学先は、基礎研究と臨床研究の両面で全米トップクラスの水準を維持している機関でしたが、そこで学んだのは、研究と臨床と教育の三つがいずれも重要で欠かせないという姿勢でした。

 現在、学部学生の教育に携わっていますが、「これからの医師はこうあるべき」という、いわば時代に即応した教育はしていませんし、する必要もあまり感じていません。どのような時代であろうと医師に求められるものの本質は変わらないと思うからです。

 医師に求められるものは、科学的な目をもって、常に新しいことを追究するということであり、同時に人格的にも十分に磨かれる必要があります。

 臨床の現場というのは、病気に苦しみ、悩んでいる人たちに常に向き合って治療していく場ですので、人間としてどう対応するべきか求められる状況も少なくありません。

 われわれ大学の教員はそういった総合的な医師としての力を育てていくことが重要で、外的要因に左右されることのない本質の部分の育成が求められているのだと思います。

 小手先の教育ではアカデミックなものが失われて長続きしないという危機感もあります。最先端を追うことも必要ですが、医師や研究者としての基礎や基盤をしっかり持たなければ意味がありません。

◎未来の医療現場

 いま、医療現場ではダビンチに代表されるロボット支援手術が普及してきており、この分野は今後確実に進歩していくと思われます。

 もっとコンパクトなデバイスになったり、あるいはもっと巨大な装置を運用するようになったり、機械

が外科的な治療に関わってくるとすれば、それに対応する術式や手術のアプローチを開発する必要にも迫られるでしょう。

 今後は、そういったインターフェースの部分についても研究開発を進めていくのが目標になっています。

 将来的には、医療はSFの世界観に近づいていく可能性があるんです。より低侵襲な治療法の開発が進みますので、たとえば小さなロボットが体の中に入って病巣を取り除いたり、ほとんど傷跡が残らないレーザースキャンのような手術が開発されたり、想像を超えるような治療方法が出てくると思います。

 私の世代で、というよりは次の世代の研究者によって実現される可能性が高いので、より教育や研究環境の整備を進めて、次代の優秀な研究者を育成していきたいと思います。

 教育や研究について、独創的な発想を育み、実現できるような基盤や土壌をつくりあげる。それも大学が実現すべき課題だと思うのです。

鹿児島大学大学院腫瘍学講座 消化器・乳腺甲状腺外科学
鹿児島市桜ケ丘8-35-1
TEL.099-275-5361
http://gekaichi.com

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