九州大学大学院 医学研究院 生殖病態生理学/九州大学病院 産科婦人科 加藤 聖子 教授

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公平な評価でキャリアアップできる社会に

【かとう・きよこ】 宮崎県立宮崎西高校理数科卒業 1986 九州大学卒業 同産科婦人科入局 1986 松山赤十字病院 1987 九州大学病院 1988 九州がんセンター 1989 米国ラ・ホヤ癌研究所 1992 生体防御医学研究所ゲノム創薬治療学分野 2009 順天堂大学産婦人科 2012 九州大学大学院 医学研究院 生殖病態生理学教授

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―九州大学には女性医師のキャリアアップを支援するプロジェクトがあるそうですね。

 2007年から2009年は「女性医療人きらめきプロジェクト」として、妊娠、出産、育児、介護、病気治療などで休職や離職を余儀なくされた女性医師・歯科医師のキャリアの継続や、休職後の復帰を支援していました。2010年以降は「九州大学病院きらめきプロジェクト」に変更し、男性も含めた医療人を支援するものになりました。

 現在、当院の医師(672人)のうち、女性医師は21.9%(147人)。助教以上の常勤(295人)は8.5%(25人)しかいません。上位職になるとさらに少なく、講師は40人中2人、准教授は31人中1人、教授は21人中1人です。医員や大学院生には女性医師が増えてきましたが、教員はまだまだ少ないのが現状です。

 評価は公平であるべきだと思いますが、医師のキャリアアップには症例数や論文などの業績が大きくかかわります。それらが評価の対象となると、女性医師は不利なところがあると思います。

 こうした状況を改善し、女性研究者を増やすため、国は支援制度を設けています。この制度は、育児、出産、介護、通院などと両立させながら研究活動を続ける女性医師を補助する研究支援員を雇用したり、女性研究員が多い部局に別経費をつけたりすることで、研究活動の継続と研究の機会を保障するものです。また、業績が同じであれば女性を優先して採用したり、女性限定公募にしたり、という試みもあります。しかし、一番大事なのは、男女平等でうまくいくシステムをつくることだと思います。

 こうした国の支援制度が始まった当初は、女性重視の考え方でした。院内に託児所や保育所を造るというレベルのものだったのが、最近では、同じ研究所や大学内に勤務する夫婦、または勤務先が違っても共働き世帯の男性医療者には、妻だけでなく夫にも研究を補助するなど、だんだん視野が広がってきています。そうなると、男性の意識が変わることも期待できますし、本当の意味での男女共同参画のかたちに近づいているのではないかと思います。

―ご自身も医師の仕事と家庭を両立してこられました。

 私は子どもが2人います。切迫早産になりやすかったので、妊娠初期から分娩(ぶんべん)まで安静療養をしなければならず、長期間、休職せざるを得ませんでした。

 出産後も子どもの急な発熱で、予定していた手術ができなくなるなど周囲に迷惑をかけることもあり、申し訳ないという思いや、自分自身のキャリアが中断したり、遅れたりすることへの不安などが、常にありました。

 保育園は比較的遅くまで子どもを預かってくれましたが、当時の学童保育は午後3時までしかみてもらえず、大変困りました。学童保育の場所から上の子を、下の子が、通っている保育園の送迎バスに乗せてもらって、保育園に預けるというようなことをして何とか切り抜けていました。

 妊娠・出産はキャリアアップに関して同世代よりも遅れてしまいますが、たとえスローペースでも、ライフプランを立てて継続していくことが大切だと思います。また、そのためには、周囲のサポートが必要です。

 夫が子育てをしてくれる家庭の方が女性の離職率は低いといわれていますし、職場の上司がどれだけ理解を示して働きやすい環境をつくってやれるかが大きなポイントだと思います。

 幼い子どもを持つ女性医師に面談すると「周囲がまだ仕事をしている中、帰るのは心苦しい」という声を聞くことも多いですね。

 そんなときは、今は時短勤務で周囲に助けてもらっているかもしれないけれど、次は自分が他の誰かの助けになると思って切り抜けていくしかないと話します。

 また、管理者にはそうしたスタッフを受け入れる職場の雰囲気づくりが求められていて、いかに不公平感をなくすかが課題となります。

 時短勤務スタッフの仕事をカバーする側は業務量が増えることになりますので、引き受けたスタッフに対して、インセンティブを与えるような優遇制度をつくることも一つの方法かもしれません。

 当院でも検討を始めていますが、実際にやってみると、業務に対する評価を数字に落とし込むことは難しく、悩みどころです。

―産婦人科医不足が問題になっています。

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 2004年の新臨床研修制度導入によって、これまで必修だった外科、小児科、産婦人科、精神科の研修が選択必修となり、産婦人科研修をしない医師が増えました。産婦人科のおもしろさを体験できる機会が減少したことで、産婦人科を志望する医師も減り、2015年に産婦人科に新規入局した医師は365人。必要数は500人と考えられていますから、問題は深刻です。

 研修制度の影響だけではありません。分娩のタイミングは予測できないため、仕事が不規則になり、体力的にもきついこと、訴訟問題に対する不安も、産婦人科医不足の背景にはあるようです

 でも、産婦人科は魅力的な科です。生命の発生である受精卵から始まって老年期まで、長いスパンに渡り女性の一生を診られることが、そのおもしろさの一つではないでしょうか。日本産婦人科学会は、現状改善のために学生や初期研修医を対象にサマースクールを開いたりして、産婦人科の魅力を伝える努力をしています。

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九州大学病院きらめきプロジェクトより提供

 現在、産婦人科の入局者の約60%が女性です。患者さんの気持ちに寄り添えるという意味では女性医師の方が適しているかもしれませんが、反対に男性の方がいい場合もあります。

 月経痛を訴える患者と話すときなど、女性同士だと「私も痛いわよ」などとつい言ってしまうことがあります(笑)。その点、男性は自分に月経がない分、客観的に話すことができると思います。

 そう考えると、産婦人科に限らず、医療の現場は、男性と女性がバランスよく存在するのが理想です。その実現のためにも、男女が公平に働ける場をつくっていきたいですね。

九州大学病院
福岡市東区馬出3-1-1
TEL.092-641-1151(代表)
http://www.hosp.kyushu-u.ac.jp

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