箕面市立病院 田村 信司 総長

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患者さんに優しく担うべき医療を

【たむら・しんじ】 広島県立呉三津田高校卒業 1980 大阪大学医学部卒業 同附属病院医員 1981 住友病院内科医員 1988 医学博士取得(大阪大学) 2006 大阪大学医学系研究科消化器内科学准教授 2007 箕面市立病院副院長 2009.4 同院長2009.6 同総長

 市内唯一の総合病院として35年間、地域医療に貢献してきた箕面(みのお)市立病院。田村信司総長に、病院の現状と課題について話を聞いた。

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◎市立病院としての役割と今後の課題

 当院は1981(昭和56)年に「日本一親切で信頼される病院」をモットーに開設されて以来、救急医療・地域医療の中核を担ってきました。また、病院経営に企業的手法を取り入れることで効率化を図り、安心・安全な医療を提供するため、2009年に地方公営企業法の全部を適用した組織体制に移行し、2010年には大阪府がん診療拠点病院、地域医療支援病院の承認を受けました。

 総合病院は市内に一つしかありません。当院に勤めていた方で現在開業されている先生方もいらっしゃいますし、こちらの事情をくんで協力していただいています。患者さんの紹介や逆紹介など、病診連携もスムーズにできていると思います。

 ただ、問題なのは、箕面市には救急指定病院がうちしかないにもかかわらず、緊急性の低い軽症の方の受診が増えていて、重症の方の受け入れに支障をきたしていることです。

 当院は317床の中規模病院で、そのうち50床は回復期リハ病床です。それに見合った医師数しかいませんので、できることには限界があります。

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手術支援ロボット「ダビンチ」

 これまでは、情熱を持った医師たちが可能な限り「断らない医療」を続けてきました。入院も外来も、患者さんの多くが「箕面の病院は優しいですね」と言われます。そのこと自体はいいことなのですが、「なんでもすべて診る」という診療スタイルを継続することは難しくなってきています。

 箕面市の人口は現在約13万7000人。隣の豊中市からの患者さんの受け入れも多く、救急の当直勤務も多忙を極めています。医師たちが疲弊してしまう前に、早急な対応が求められているのです。

 そこで、一時的にご批判を受けることになるかもしれませんが、1次救急と2次救急を分離することにしました。現在、会社帰りに夜間診療のようなかたちで当院を受診される方が多いのですが、この時間はまだ開業医でも受け付けてくれます。今後は地域の開業医と協力し、1次救急は徐々に移行させる予定です。

 現在は、そのことを知らせるために、院内アナウンスをしたり、チラシを配布したり、1次救急と2次救急の違いを説明したりしています。当院のホームページでも掲載しましたし、今後、市の広報誌にも載せてもらう予定です。

 こうした広報活動で、当院と診療所・クリニックとの役割の違いなどを患者さんに理解していただきたいと思います。

 総合病院より、地域のかかりつけ医の方がきめ細かに診てもらえる面もありますし、高齢の患者さんについては、将来、介護が必要となったとき、地域包括ケアシステムによるサービスを受けるためには、かかりつけ医が必要になってきます。1次救急と2次救急を分離するメリットが、地域包括ケアの推進という面でも、あるのではないかと思います。

◎患者の体に優しい医療

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ダビンチ・チーム

 患者さんの体に負担の少ない治療を心掛けています。外科においては、鏡視下手術専用の手術室を増設し、消化器内科でもESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をいち早く導入しました。婦人科の鏡視下手術の症例数も増えています。

 2015年には、北大阪エリア自治体病院として初めて手術支援ロボット「ダビンチ」を導入し、同年5月からロボット支援前立腺全摘除術を開始しました。 医師を中心に、多職種の医療スタッフでチームをつくり、高いモチベーションで取り組んでくれていますし、予想を上回る数の患者さんが来院されています。これからも最先端の低侵襲治療に取り組んでいきたいと考えています。

◎充実した医師人生を

 私は広島県呉市の生まれで、実家は3代続くパン屋を営んでいました。将来は店を継いでもいいかなと思っていたのですが、父が「パン屋は大変やからやめとけ」というし、理数系が得意だったので医学部に進学しました。研修医の面接で医者になった理由を尋ねると、みんな立派なことを言うのですが、私の場合は何となく医者になったパターンです(笑)。

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 今の若い医療者は皆しっかり勉強しているし、いろんな情報を持っているなぁと感心します。ただ、いろんな情報を持ちすぎているなと思うこともあります。私が学生のころは、大学卒業と同時に進路を決めなければならなかった。今は2年間の初期臨床研修がありますから、その間にいろいろな診療科を回ることができます。私が懸念するのは、研修中に「この科に行ったらしんどい」「この科に行ったらもうかる」といった類いの情報を耳にすることで、外科や産婦人科などの、いわゆる「しんどい科」を選ぶ医師が少なくなっていることです。もちろん、職業選択の自由がありますし、自分のQOLを保つことは大事です。

 でも、よく考えたら、一日のうちで一番時間を費やしていることは仕事です。医者の仕事に誇りを持ってできることが、一番のQOLではないかと思います。少々つらいことはあっても、その仕事が自分に合っていると思えば、あまり躊躇(ちゅうちょ)せず、ある程度の覚悟を持って進んでもらうのもいいのではないかと思います。せっかくこの世に生を受けたのですから、充実した医師人生を送ってほしいと思います。

 もちろん、忙しい現場を忙しいまま放っておくことは間違いですので、過度な業務負担を減らし、できるだけ働きやすい環境をつくることは、われわれ管理者が責任を持って取り組むべき課題だとも考えています。

 患者さんに対して親切なのは当たり前のことですが、働いている人たち全員がハッピーになれる病院にしていきたいですね。

箕面市立病院
大阪府箕面市萱野5-7-1
TEL:072-728-2001(代表)
http://www.minoh-hp.jp


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