鳥取大学医学部統合内科医学講座周産期・小児医学分野教授鳥取大学医学部附属病院ワークライフバランス支援センター 神崎 晋 センター長

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一人ひとりの職員を大事に
女性用トイレを変えることから始まった、働き方改革

【かんざき・すすむ】 岡山県立岡山朝日高校卒業 1979 岡山大学医学部医学科卒業 1984 岡山大学大学院医学研究科修了 1984 国立岩国病院小児科医長 1990 岡山大学医学部附属病院小児科文部教官助手 1992 アメリカ・ロマリンダ大学研究員 1993 岡山大学医学部附属病院小児科講師 1999 鳥取大学医学部小児科学講座(現:周産期・小児医学分野)

 鳥取大学医学部附属病院は、2010年にワークライフバランス支援センターを開設した。

 当初は女性職員、とくに女性医師や女性看護師のキャリア継続支援を目的として始まった取り組みだったが、現在は病院に在籍するすべての職員に対象を広げている。

 職員の生活を公私にわたって充実させることを目的に掲げる同センターの取り組みを聞いた。

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―ワークライフバランス支援センターの取り組みが成果をあげ、全国から看護師が集まるようになりましたね。

 ワークライフバランス支援センター(以下、センター)は、鳥取大学医学部附属病院の人材確保における大きなアピールポイントになりました。

 センター機能の充実を前面に出した広報活動もしています。東京のJR浜松町駅には「シングルマザーを応援します」と書いた大きな看板を設置しており、とくに育児中の女性に対する支援の手厚さをPRしています。

 センターは5年前に設立されました。当初のねらいは女性医師を確保することで医師不足に歯止めをかけようというもので、鳥取県から依頼を受けて開設することになりました。

 最初は、それこそトイレ環境の改善から始まって、当直室を女性仕様にする、女性ロッカーを新しくするなど、アメニティーを充実させることから手探りで進めていったんです。

 そのうちに、ワークライフバランスというのは女性だけの問題ではないという問題意識が生まれ、医師、看護師、職員など在籍するすべての職員を対象に、働きやすい職場づくりを進めていくことになりました。

 最近ではメンタルの不調についての相談も増えてきました。調べてみて驚いたのですが、とくに事務職で何人か出勤できない状態になっていましたので、対応が必要だと実感しています。

 シングルマザーでも働きやすい環境を実現するのが理想ですので、これまであった院内保育所に加えて病児保育も受け入れる体制を整えました。

 院内保育所は24時間保育体制で、病気の兆候があるときは附属病院の医師が診察します。保育料金についても半額は附属病院が負担して、できるだけ気軽に預けられる体制を作っています。

 子育てに加えて、食事の用意は一般に女性に負担がかかりがちですが、そういった場合に重宝するのが、「夕食持ち帰りサービス」です。複数の外食業者と契約し、電話1本で人数分の夕食が自宅や職場に届くようにしました。

いわゆる利用者目線を追求して始めたサービスで、利用者も増えて好評です。

 支援センターには、私を含めて5人のスタッフが在籍しており、保育所診断医を含めた6人体制で1500人の職員の相談にのっています。

 センター開設以来、相談件数は飛躍的に増えていますが、専任スタッフがいることでなんとか対応することができています。

 たとえば、看護師の離職率は国立大学病院の全国平均が10%程度ですが、当院ではセンターができてから6%台を維持しています。

 一番効果があったのはやはり保育所の拡大ですね。当初の定員60人を90人に広げ、病児保育に加えて、今年からは学童保育をスタートさせました。

―出産や育児を経て復帰する女性医師について、どのような支援体制を敷いていますか。

 そもそも女性医師の確保がセンター発足の目的でもありますので、とくに出産や育児を経た後の復帰支援プログラムを充実させました。

 まず、ブランクがある場合は知識や技術をブラッシュアップする必要がありますので、県を東部、中部、西部の3地域に分け、それぞれの基幹病院(東部:鳥取県立中央病院/中部:鳥取県立厚生病院/西部:鳥取大学医学部附属病院)で医師復帰支援プログラムを受講できる体制を構築しました。

 さらに、複数の勤務形態を用意して、多様な要望に応えられるようにしています。

―女性医師がキャリアを継続していくために最も必要な支援、あるいは制度はなんでしょうか。

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 まずは受け入れる側が女性医師の事情を知って、理解することが必要になるでしょう。

 もっとも、「理解する」といっても女性医師が抜けたり短時間勤務したりする分をカバーするためには、診療科を統廃合してマンパワーを集約するなどの病院運営上の工夫は必要になるでしょうね。3人のうち1人が抜けるとカバーが難しいが、10人いればなんとかなりますから。さらに言うと、カバーするのは主に男性ですから、男性への啓発も重要です。

 医師としてのキャリアのすべてを全力で駆け抜けることを目指す必要はないとも思いますね。人生におけるイベントごとに合わせた働き方があります。女性医師には、一生同じペースを維持するのではなく、細くても長く、医師として成長することを考えてほしいですね。

 最後に、これは男女に共通の課題ですが、子育てを終えると介護という難題が待ち受けていることも多いと思います。ある程度ゴールが見えるからがんばれる育児と違って、介護はゴールも見えず、なにが正解かもわからない混沌(こんとん)とした世界ですから、介護離職が増えるかもしれません。

 それを見据えて、今年は介護関係の講演会を3回実施しました。これから相談が増えると予想されますので、効果的な支援策を考えていきたいと思います。

※鳥取大学医学部附属病院は、2014年の第1回「エンパワーメント大賞」(公益財団法人日本生産性本部「ワーキングウーマン・パワーアップ会議」主催)において、奨励賞を受賞した。

鳥取大学医学部附属病院
鳥取県米子市西町36-1
TEL:0859-33-1111(代表)
http://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp


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