一般財団法人 淀川勤労者厚生協会附属 西淀病院 大島 民旗 院長

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「かかりやすさ」を追求した病院へ

1990 京都府立医科大学卒業 西淀病院呼吸器内科 2003 家庭医へキャリアチェンジ 2006 ファミリークリニックなごみ所長 2013 西淀病院院長 大阪家庭医療センターセンター長

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◎万人に等しく平等な医療を提供

 ここ大阪北部は、比較的大規模な病院が多く、218床の当院は、小規模に近い病院だと言えるかもしれません。

 施設に入所されている人や認知症の人は侵襲を伴う治療がしにくく、大規模病院では敬遠されがちなのが現実です。そういう方が必要な医療を受けられるようにするのが当院の役割だと考えています。また入院後も経済状況などで医療が継続できないというようなことがないように意識しています。

 当院では差額ベッド代をいただいていません。もし差額ベッド代をとれば、年間数億円単位の収入増につながるでしょう。しかし「お金がある人は個室へ」となると、その裏では「お金がないので個室に入れない人」が出てきます。

 入院ができるかできないかを、お金がありそうかどうかで捉えるようになると、経済的に貧しく、入院が難しい人を「厄介な人」とみてしまう可能性があります。

 経済的に困っている、精神的に問題を抱えている、などの理由で医療にかかれない人を誰かが診ないといけません。私たちがその役割を果たすことで、地域全体の幸せにつながると考えています。

 当院は内科系の医師の割合が大きいのが特徴です。専門分野を持っていても総合内科医的な力を持つ医師や家庭医・総合内科医が在籍しているので、患者さんを総合的、全人的に診ることが可能です。

 入院患者のなかには、社会的な問題、精神的ストレスなどを抱えている人も大勢います。そこを意識しながら診療していくことが、今後ますます求められてくるのではないでしょうか。

 大規模病院では先端医療を提供するための医師が求められているのかもしれません。しかし、われわれのような中小規模病院では、より総合的なアプローチができる医師の方が、力を発揮できると思うのです。

 初期研修のころに指導を受けた先生は循環器が専門でした。ある日、トラックの運転手さんが運転中に心筋梗塞を起こし、運び込まれました。私は、必要な処置をして命を救ったことで、満足していました。

 すると指導医の先生が「この患者さんの働き方は労働災害になるのではないか」とサジェスチョンをされ、その後、労災認定に至りました。自分自身は、患者さんの背景を診ているつもりだったので、衝撃を受けた出来事でしたね。

◎2013年に総合外来を開設

 当院は、かかりやすい病院であることを目標に掲げています。数多くの診療科に分かれている病院では、患者さんは、「果たして自分はどの科に行けばいいのだろう」と迷われると思います。

 そこで、当院では2013年5月に「総合外来」を開設。内科に限らず、それ以外の科の症状についても初期対応ができるようにしました。そのうえで必要であれば専門医療機関への紹介もしています。

 自分の専門分野の疾患を繰り返し診ることが多い病院にいれば、専門領域の診療能力は向上するでしょう。しかし、総合的な診断能力を身につけようと思うのならば、どんな症状の患者さんが来るか分からない環境に身を置く方が成長できると思います。プライマリ・ケアを担いたいと考える医師にとっては、当院は最適な環境だといえるかもしれませんね。

 日本は総合診療医の割合が、諸外国と比較すると圧倒的に少ないと言われています。欧米では総合医の割合が2、3割ですが、日本には数%しかいません。将来、地域で開業するには総合的に診療できる能力は必須ですし、ますますニーズが高まることが予想されます。総合診療医の育成が、今後の日本の医療の課題でしょうね。

◎医療の現場を知る

 高校生を対象に医師1日体験をしています。病院について知ってもらうということは、仮に医師にならなかったとしても意義のある活動だと思っています。参加者の中で医学部に入学して、将来ここで働く人が出てくれればうれしいですね。高校の先生からも見学をした生徒が刺激を受け、勉強に身が入るようになったと好評です。

 医師になる前に医療の現場を知ることは重要だと思います。医師は理系の成績優秀な人が選択しがちな職業です。しかし必ずしも理系の要素だけを求められる仕事ではないと思うのです。

 患者さんやメディカルスタッフとのコミュニケーション能力、チーム医療をするうえでの協調性、リーダーシップなども問われます。

 意外と文系的な感受性、共感力、想像力などといったものが要求される仕事なんです。人との会話の中で生まれる感動、共感、驚きなどを味わえるのは医師の醍醐味(だいご味)だと思いますね。

 医師は忙しいですが、やりがいのある仕事だと思います。医療の世界は日進月歩です。自分自身が日々勉強をして、レベルを上げていかないと取り残されてしまいます。職業を選択するうえで、自分自身の成長ができる環境かどうかを優先条件とするならば、医師は結構いい仕事かもしれません。

◎働きやすい環境

 医師には画一的なノルマを課さないようにしたいと考えています。その人が持つポテンシャルの範囲内で、できることをしてくれたらいいのです。女性医師や子育て中の医師も家庭の事情に合わせた勤務が可能です。各人が置かれている状況で、働きやすいように配慮しています。

 メディカルスタッフ、事務職員も含めてヒエラルキーがなく、それぞれが患者さんを中心に患者さんにとって最も良いと思えることをやる。それを目指してやっています。特に学閥があるわけでもなく、それぞれの職種が自負を持っているので言いたいことを職種に関係なく言い合える環境だと思います。

 一人でできることには限界があります。院長がリーダーシップを発揮し、周囲を強引に引っ張っていくのは緊急時には機能するかもしれません。しかし病院全体が成長するためには、職員一人ひとりが目標を持ち、目標のために努力する姿勢こそが大切です。そのための土壌をいかにつくるかが、私の役割だと思っています。

一般財団法人淀川勤労者厚生協会 附属 西淀病院
大阪市西淀川区野里3丁目5番22号
TEL:06-6472-1141(代表)
http://nishiyodo.org


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