地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立精神医療センター 籠本 孝雄 院長

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大阪府の精神科医療「最後の砦」

大阪教育大学附属天王寺校舎卒業 1979 山口大学医学部卒業 癌研究会付属病院外科 1980 大阪医科大学一般消化器外科 1981 大阪府立病院精神科 1994 大阪府こころの健康総合センター 1996大阪府精神保健福祉課 2002 大阪府立精神医療センター 2006 同院長

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◎セーフティーネットを担って

 当院は大阪府唯一の公立単科精神病院です。民間の医療機関では診療が困難な症例などに対応しています。

 身体科の場合、二次救急で受け入れた患者さんの処置が難しい時には三次救急の病院に送る選択肢がありますが、精神科には、そうしたシステムがありません。そのため、大阪府では当院が精神科医療のセーフティーネットの役割を担っています。

 もちろん患者さんの自宅近くの病院で診てもらうことがベストです。そのほうが退院後のフォローアップも容易です。それが困難な場合にのみ当院に来てもらうことになるのです。大阪府の精神科医療の最後の砦。そのようにイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。

◎児童思春期病棟「みどりの森」

 1970(昭和45)年に前身の府立中宮病院で、自閉症児施設「松心園」を設置しました。以来、現在に至るまで、児童思春期領域の医療に力を入れています。

 現在の児童思春期病棟「みどりの森棟」は、未就学児童から小学6年生までの患者さんのための「たんぽぽ」と、中学生から20歳未満の思春期青年期の「ひまわり」で構成されています。

 みどりの森棟は医療施設の役割とともに福祉施設の役割も担っています。「たんぽぽ」では大阪府子ども家庭センター(児童相談所)から紹介があった子どもさんを受け入れています。通常の医療機関と異なり、福祉施設なので、在院日数のしばりがありません。よって長い時間をかけた子どもさんの「育て直し」が可能です。

 育て直しは短期間でできるものではありません。そのために半年〜1年単位の長いスパンで医師、看護師のみならず、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士、保育士、児童指導員が多職種でチームを組み、患者さん一人ひとりの病状に応じた治療プログラムを実践しています。

 また県内の児童福祉施設から医療的な介入が必要な入所者がいると相談された場合は、われわれが施設に赴きます。当院に入院してもらい診断、治療をし、元の施設で過ごせるような状態にして戻っていただきます。このような取り組みは全国的にも珍しいと思いますよ。

◎「クロザピン」普及促進のために

 「クロザピン(商品名クロザリル)」という治療抵抗性統合失調症に対して適応を持つ抗精神薬があります。この薬は非常に効き目のある薬です。しかし唯一の難点は、発生例は少ないとはいえ、副作用があることです。

 副作用として白血球の減少が報告されており、治療導入するためには、血液内科と連携し、副作用が発生したら即座に対応できる体制を整えておかなければなりません。

 しかし、総合病院の血液内科では統合失調症の患者さんの受け入れが困難で、クロザピンの治療導入が広まっていないのが現状です。

 そこで厚労省は、クロザピン普及促進のためのモデル事業「難治性精神疾患地域連携体制整備事業」をたちあげました。大阪府では当院が適正使用についての調査を実施。クロザピンが本当に必要だと医師が判断し、ご本人、家族の希望があれば、できるだけ治療を受けられる体制づくりを進めています。まだ道半ばといったところですが、少しずつ形になりつつありますね。

◎電気けいれん療法について

 電気けいれん療法(ECT)をご存知ですか。麻酔科医が麻酔をかけ、脳に電流を流す治療法です。

 それだけ聞くと、なんだか怖そうなイメージだと思います。しかしこの治療法は躁うつ病などに対して劇的な治療効果があるのです。高齢者にも適用できるというメリットもあります。

 もちろん抗うつ剤が効かない、副作用がひどい、自殺未遂を繰り返す、などの人に対してインフォームド・コンセントを得たうえで用いる治療法です。

 電気けいれん療法最大の課題は、麻酔科医を確保しなければいけないことです。全国的に麻酔科医は不足しており、各科、麻酔科医の確保に躍起になっています。そのような状況下、精神科に来てくれる麻酔科医が少ないのも致し方ありません。

 当院も電気けいれん療法のための体制づくりをした時、麻酔科医の確保には、とても苦労しました。

 幸運だったのは市立ひらかた病院が緩和ケアを新設するにあたって、精神科医を探していたことでした。そこで、当院から精神科の医師を派遣することにしました。そのかわりと言っては何ですが市立ひらかた病院から週3回、麻酔科医を派遣してもらえるようになったのです。

◎臨床開発・研修センターの役割

 2012年に高校の後輩でもある岩田和彦先生がセンター長となり、臨床開発・研修センターを設立しました。臨床開発・研修センターでは「臨床現場に役立つ新しい治療・支援の開発」「専門職スタッフのスキルを高める教育・研修の実施」「地域の精神医療・精神保健福祉の向上に貢献」という三つのミッションを担っています。

 同センターが中心となり、毎年3月に研究交流発表大会を実施します。院内の医療職はもちろん、事務系職員もそこで発表します。「医師に効果的に働いてもらうためにはどうしたらよいか」「事務職員が医療を支えるには」「経営面でこんな工夫をしたらどうか」など、さまざまテーマで議論します。優秀な発表には院長賞を贈っています。

 教育、研修に関して一本化できるようになり、研修医にとって魅力的な環境が提供できるようになりました。今では口コミでセンターの噂が広まり、たくさんの研修医が集まってくれるようになりました。

◎独立行政法人化したことのメリット

 2006年に地方独立行政法人化しました。それにより意思決定がとてもスムーズになりました。医師の常勤定数も理事会で決められ、府の許可は必要ない。スタッフも病院の裁量のなかで、いつでも採用できるようになりました。

 せっかくいい人が来てくれたのに「来年まで待ってください」とは言えないでしょう。とりあえず非常勤で雇用して、その後、常勤に、といったことも可能です。人事面でのメリットは計り知れませんね。

 医療機器の購入もスピーディーにできるようになりました。その年度の予算内で消化すればいいし、積み残しがあれば翌年に繰越すこともできます。予算についての裁量権ができたことが最大のメリットですね。

◎依存症対策

 大阪府は、昨年10月、国が全国5カ所で実施する「依存症治療拠点機関設置運営事業」を活用し、大阪府立精神医療センターを「依存症治療拠点」に指定しました。薬物やアルコール、ギャンブル依存症対策のための事業ですが、特に深刻なのはギャンブル依存症です。

 パチンコにのめり込むあまりに借金を抱え、自己破産。家庭が崩壊、家庭内暴力、最終的に自殺という最悪のシナリオをたどってしまう人がたくさんいます。

 依存症の完治は難しいのが現実です。しかし、本当に今の状況から抜け出したいと思う人が、どこにいけばいいのか分からないのも実情です。

 地域全体で元の生活に戻すシステム構築が急務です。医療機関も柔軟に対応できるような仕組みをつくっていかなければなりません。

 一人で悩まずに相談にきてもらい、自分だけで解決できないケースは、病院と連携したサポート体制でしっかりと支える。その体制の構築を進めている最中です。

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立精神医療センター
大阪府枚方市宮之阪3丁目16番21号
TEL:072-847-3261(代表)
http://pmc.opho.jp/


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