神鋼記念病院 東山 洋 病院長

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急性期医療の広域連携で支える地域の明日
社会医療法人に改組、神鋼記念病院が描く地域医療ビジョン

京都府立鴨沂高校卒業 1982 京都大学医学部卒業 京都大学医学部附属病院外科入局 1 9 9 3 ドイツKurhessisches Diakonissenhaus Kassel血管外科 1995社会保険小倉記念病院外科部長 1997 大阪赤十字病院外科副部長 2007 神鋼病院肝胆膵外科部長 2015 神鋼記念病院病院長

 製鉄大手の一画を占め、阪神工業地帯に拠点を置く神戸製鋼所。1905(明治38)年の創立以来、製鉄所の炉心は地域を照らし続け、地場産業の象徴として神戸市民に愛されてきた。

 神鋼記念病院のルーツは、1915(大正4)年に産声をあげた神戸製鋼所の所内診療所までさかのぼり、「神鋼病院」となってからは、広く地域医療を展開してきた。

 神鋼病院は、昨年、社会医療法人に改組し、「神鋼記念病院」として再スタートした。医療の激変期に同院の舵取りを任されたのは、「外科医が自分の天職」と語る東山洋病院長だ。

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ー昨年、病院長に就任されました。長い歴史をもつ病院をどう運営されますか。

 外科医というのは手術のことしか興味のない人が多く、極端なことを言えば、一日中手術をしてそれで給料をもらえたら満足なんです。現に私がその典型で、自分が担当した手術の点数以外に、これまで経営やお金のことについて興味を持つことはありませんでした。1年経って、ようやく慣れてきたところです。

 病院長として経営に向き合うにあたっては、病院としての特長を見極めることを重視しました。神戸市にはたくさんの病院がありますが、民間の急性期病院としてどのような役割が求められているのか、あるいはどのような役割を果たせるのか、経営の本質はそこを追求することに尽きると考えています。厳しい言い方をすれば、その議論なしに今後病院として生き残ることは難しい時代を迎えています。

 神戸市全体でみれば、中央市民病院の存在感が際立っています。そのため、急性期を標榜していたとしても医療レベルを伴わなければ、市民に対して存在価値をアピールできません。

 当院は「地域医療に貢献する」という明確な使命感をもって医療を行っています。医療圏としてカバーする地域は、神戸市中央区と灘区、東灘区、芦屋市ですが、この地域の人口に対して市民病院がカバーしきれていないのが現状です。

 当院は昨年、社会医療法人に改組しましたが、近隣には公的役割を担う病院として、当院のほかに神戸労災病院が山側に位置し、海側には神戸赤十字病院があります。

 最近になって、医療連携の有効性が注目されるようになりましたが、この3院については、以前からかなり綿密な医療連携を進めてきました。3院とも300床規模の病院ですので、協力することで中央市民病院並み、あるいはそれ以上の医療を提供できるのではないかと思います。

 お互いに不足している診療科機能を補い合うなど、今後もその関係性を強化する必要があります。

ー救急医療も担うべき役割の一つです。

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 社会医療法人の認定にあたっては、当院の救急医療に対する貢献度が評価されています。

 神戸市の2次救急輪番制度に参加しており、よく言われる「断らない医療」ということでいえば、たとえば昨年は神戸市2次救急病院群で最多の4,200台以上の救急車を受け入れました。

 救急医療に加えて、がん医療も当院が重視しているテーマです。

 地理的なアドバンテージもあって、医師数は120人とかなり充実しています。能力的には十分な救急体制を敷くことができますし、兵庫県指定がん診療連携拠点病院として本格的ながん治療に着手することもできます。

 今年4月の診療報酬改定は、比較的好意的に受けとめました。つまり、救急を受け入れればその患者さんは2日間は急性期として認められますし、手術後の患者さんも急性期として認められますから、救急医療とがん診療に力を入れている当院のような病院としては非常にありがたい。

 7対1入院基本料の施設基準である重症患者割合についても、改定では25%にハードルが上がりましたが、当院は約33%を維持しています。当院はDpCⅡ群病院にも認定されており、この地域における市民病院的役割を果たしていきたいと思います。

ー増え続ける医療費について、社会保障費で手当てするのは限界であるという見方もあります。

 社会保障費(特に医療費)が、国家財政に占める割合は急激に増加しており、現状のままでは早晩制度が破たんすることは目に見えています。

 医療費を押し上げているものの一つに、病院間の過剰な設備投資競争もあると思われます。たとえば、医療の質を向上させるための意味ある競争は歓迎するとして、経営面で競争する意味があるのでしょうか。

 病院間の無駄な経営競争を排して、医療機器などを共同活用するような連携モデルをつくってはどうでしょう。少ない資源を有効活用して、医療費を抑制するための連携を模索する。厚労省が提唱している地域医療連携推進法人という制度は、まさにこういった考え方に基づくものだと思います。

 皆保険制度についても、世界に誇るべき優れた制度ですが、免疫チェックポイント阻害薬のような高額ながん治療薬が次々に普及すれば、あっという間に保険制度はパンクしてしまいます。

 ところで、湿布は市販のものがたくさん販売されていますが、どうしても病院で処方されたいという方も多い。ちょっとした風邪だって、効果の不明な抗生剤が処方される。そういった細かな保険適用を精査して、不要なものをはずしていくべきではないかと思います。

 逆に、働き盛りの方が治療のために困窮するのを防ぐために、高額医療については手厚く守ってもいい。

 医療保険の上乗せ部分のみを議論するのではなく、ベースの部分の要・不要についても考えるべきだと思います。かつて、食費も保険で出るから入院していたほうが得だ、という時代もありましたからね。

ー外科医として、たくさんの患者さんを救ってこられました。

 放射線治療も各段に進歩しましたし、高い効果を持つ抗がん剤も作られるようになりました。これまでなら手術が不適応だった患者さんでも、先に抗がん剤で小さくしてから手術することが可能になったことは大きな変化ですね。

 治らないと言われているすい臓がんだって、手術で治る方もいるんですが、すべての患者さんを救うことができないのが非常につらい。

 ときどき患者さんに話すのですが、人間って誰もがいつかは必ず死ぬ運命なんですね。ただ、だからといって「いつ」死ぬかがわかってしまったら、あっという間に元気がなくなってしまう。私自身もそうなると思うんです。結局、人間ってわからないほうがいいことがあるんですよね(笑)。

 患者さんは、手術すると「治るかもしれない」と思います。仮に再発するまでの期間だったとしても、落ち込んでいた人が元気になる。

 肉体的治療はもちろんですが、精神的治療も患者さんにとっては同じくらい重要です。最近は緩和医療が注目されていますが、緩和はあくまでも患者さんのサポートであって、治る可能性を感じてもらうという意味ではやはり手術が最大の効果を持つでしょう。

 外科医である私の独断かもしれませんが、手術には魔法みたいな効果もあるんです。

社会医療法人 神鋼記念会 神鋼記念病院
神戸市中央区脇浜町1丁目4番47号
TEL:078-261-6711(代表)
http://www.shinkohp.or.jp


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