愛知医科大学医学部 内科学講座 糖尿病内科 中村 二郎 教授

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糖尿病学の夢の実現を目指して

三重県立四日市高校卒業 1981 名古屋大学医学部卒業 中部労災病院研修医 1988 米国・ミシガン大学内分泌代謝内科客員研究員 1991 名古屋大学第三内科医員 2007 名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科准教授 2011 愛知医科大学病院糖尿病センター教授 愛知医科大学医学部内科学講座糖尿病内科教授

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―糖尿病が全世界で増えています。

 特に発展途上国で増加傾向です。日本の場合、糖尿病患者の73%が65歳以上の高齢者と言われるほど、高齢化の影響が大きいですね。

 国民健康栄養調査によると、いわゆる境界型と言われる糖尿病予備軍は減少しているのですが、糖尿病の患者さん自体は増えています。食生活、運動不足など生活習慣によるものが大きいでしょう。気になるのは、子どもの2型糖尿病患者が増えていること。大人同様、肥満がその原因です。ファストフードなどによる気軽な食生活がその背景にあります。世界的な傾向ですが、国内でも注意が必要です。

―2011年糖尿病センターのセンター長として現センターを立ち上げました。

 講座で特に力を入れているのは、糖尿病合併症のひとつである神経障害です。

 糖尿病の三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)のうち、最初に現れるのが神経障害ですから、これを早期発見し、治療することは大変意義のあることです。

 当講座では、これまで神経障害の診断に使われていなかった検査法を取り入れ、データを集めることでその診断方法を確立しようとしています。

 早期に診断をし、薬を投与することで神経障害そのものが抑制されることにもつながります。

―治療での特徴は。

 糖尿病の治療は薬物療法が中心となります。従来のように、血糖値さえ下げればよいというのではなく糖尿病治療の最終目標は健康な人と変わらない寿命を確保することにあります。

 そのためにどのような薬剤を使うのかが問われます。昔は、飲み薬と言えば膵臓からインスリンを出させる1種類でしたが、今は飲み薬だけで7種類もあります。

 実は、糖尿病と診断された時点で、既に膵臓の機能は正常の半分程度しかありません。ですから、私は昔から、膵臓に刺激を与えるだけではなく、膵臓を守るような治療を念頭に、治療に当たってきました。

 血糖値を下げるだけでなく、膵臓β細胞の負担を減らし、合併症に対してもいい効果が期待できる薬剤を選択することが大切です。

―病診連携については。

 地域連携室を中心に、病院全体として取り組んでいます。

 当センターでは、実地医家(開業医)の先生がファクス一本で教育入院の予約ができるような仕組みを作っています。

 2泊3日で、患者さんに合った食事を理解してもらったり、合併症に関する検査を行ったりし、糖尿病に関する勉強もしてもらいます。

 糖尿病食については、管理栄養士が個別の指導を行い、患者さんに知識を持ってもらいます。糖尿病というと、「あまり食べられない」というイメージがあるようですが、実際に糖尿病食を食べると、「意外にたくさんの量を食べられるんですね」という感想を持たれますね。調理の工夫の仕方などがわかって役に立ちますよ。

―来年は、日本糖尿病学会年次学術集会の会長を務められます。

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世界糖尿病デーのシンボルカラーであるブルーにライトアップされた名古屋城(2015年撮影)

 2017年5月18日(木)から3日間にわたって名古屋市内で行われる「第60回日本糖尿病学会年次学術集会」の会長を務めます。メインテーマは、「糖尿病学の夢の実現へ:未来への架け橋」です。

 糖尿病の研究、治療に取り組む医療者や研究者にとって最終的な目標であり夢は、やはり、糖尿病の治癒であり、合併症の治癒です。それができる方法が見つかれば、もう糖尿病は怖くありません。

 第60回という記念の学会として、糖尿病の最新の治療、糖尿病のこれから、糖尿病の課題などについて参加者の皆さんと論議したいと思います。予定では、1万5千人が参加し、演題も3千ほど集まるのではないかと思います。

 学会ポスターには版画家・山本容子さんの作品を使わせていただいています。一つのテーブルを囲んだ人々が食べて、飲んで、踊っている、楽し気な様子は、正に私たち医療者と患者さんの夢です。

 11月は世界糖尿病デーに合わせてブルーライトアップが各地で行われますが、翌年学会を控えている名古屋市では今年特にキャンペーンに力を入れます。

―糖尿病治療における医師の役割は。

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中村二郎教授監修のテキスト「糖尿病とともに」。同院の患者さんなどに配布される

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 患者さんを叱って頑張らせようというタイプ、指示の多いタイプなど、医師にもさまざまなタイプがあります。

 私の場合、病院へ来ている人は病気への意識がそれなりにある人と考えています。この方たちは、「食べ過ぎてはいけない」という自制心も備えています。ですから、その気持ちをくじくような指導はしません。まずは、その頑張りを認めることから治療が始まります。

 医師が怒って指導しようとすると、結局その患者さんが来なくなり、治療が中断することも多々あります。さらに一旦、治療が中断すると、合併症が起こりやすくなります。

 また、糖尿病の治療の基本は、食事と運動です。しかし、患者さんも「食べたい」欲求があるわけですから、私はそれをある程度認めようと考えています。そのうえで、それを補う治療を一緒に考えます。今はさまざまな薬がありますので選択肢も広がっています。

 糖尿病があっても、患者さんにとってのQOL(人生の質)がある程度満足のいくものになるよう支えるのが、これからの糖尿病治療に関わる医師の役割ではないでしょうか。

愛知医科大学医学部
愛知県長久手市岩作雁又1番地1
TEL:0561-62-3311(代表)
http://www.aichi-med-u.ac.jp/su06/su0607/su060703/06.html
(内科学講座糖尿病内科)


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