いのちを伴奏する「ケア」のかたち No.2

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―ときに支え、ときに寄り添い、共にあるー
認知症ケアとファミリー・トライアングル 鐘ケ江 寿美子

*にのさかクリニック・バイオエシックス研究会より*

 地域包括ケアシステムにおいて認知症施策は、地域支援事業として新オレンジプランに沿った認知症の早期診断、早期対応、介護者支援等を行い、認知症の人が安心して暮らせる地域づくりを推進するもの、と位置づけられている。

 地域包括ケアという枠組みが示され、行政と医療・介護・福祉関係者のネットワークづくりは進められているが、その中に取り込まれることだけで認知症の人やその家族は十分に安心して暮らせるのであろうか。

 前回紹介した、米沢慧氏が提唱する「ファミリー・トライアングル」は、個人の〈いのち〉の物語に家族、医療・介護等の専門家が参加するかたちである。

 認知症の介護では当事者3人、認知症の人(A)|家族(B)|専門家(C)が三角形・鼎(かなえ)のかたちになり、専門家は3番目の存在・役割として加わる。医療や介護の専門家がリードするのでも、認知症の人のみが中心の態勢でもなく、三者はトライアングルを組み、〈いのち〉の共鳴を目指す。

 認知症ケアにおけるファミリー・トライアングルのケースを以下に紹介し、地域包括ケアについて再考したい。

ある認知症の人の物語とファミリー・トライアングル

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認知症ケアのファミリー・トライアングル

 私が在宅医としてかかわるAさん( 70歳代男性)は30年前に交通事故で片足を失い、2年前に進行がんと診断された。

 がん性疼痛のため通院が難しくなり、在宅医療に移行したが、その直後に幻覚やレム睡眠障害が出現した。Aさんは幻覚のことを人に告げず、妻も夫の変調に気づきながらも自分だけで介護をしなければならないと考え、夫婦ともに疲弊していた。

 主治医となった私はレビー小体型認知症と診断し、抗認知症薬を開始するとともにケアマネジャーや訪問看護師にAさん夫婦のサポートを依頼した。

 Aさんの〈いのち〉の物語に伴奏するファミリー・トライアングルの3番目の役をケアマネジャー・訪問看護師・在宅医が引き受けたことで、Aさん夫婦は安心された。薬物療法が奏功し、幻覚が消えたAさんは自分の病気を地域の人々に伝え、畑仕事と卓球がしたいと希望を語った。すると、近所の人がAさんの畑作りに協力してくれるようになった。

 ケアマネジャーはAさんに障がい者卓球を紹介し、Aさんは障害をもつ人々との新たな交流を楽しんでいる。Aさんは「(自分より)障害の重い人もスポーツ大会に出場している。くじけず、心をみがいて、頑張りたい」と笑顔で話してくれる。

 今、Aさんのファミリー・トライアングルの3番目のポジションは医療介護関係者のみでなく地域の人々も担っている。Aさんのお陰で医療介護関係者と地域の人々の繋がりができ、他の要介護者の支援に生かされている。

 米沢氏は「ファミリー・トライアングル」ではケース・バイ・ケースで、支え・寄り添い、共にある3人目や3番手になる構図(関係)が描かれ、交流が生まれるものと説明している。また、長寿社会の今、地域ケアの中心にファミリー・トライアングルを置いてこそ、「運動」になる思いがすると語っている。

 病気や障がいがあっても安心して自分らしく暮らせる優しい社会づくり、すなわち「市民ホスピス運動」は地域ケアの根幹をなし、地域包括ケアに命を吹きこむ。ファミリー・トライアングルは個人の〈いのち〉の物語に参加するかたちであり、互助や共助を促し、人々との交流を生み、市民ホスピス運動を推進する可能性があるのではないだろうか。


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