九州初の肝腎同時移植膵臓移植実施施設にも認定
―第53回九州外科学会をハウステンボスで開催されたそうですね。
第53回九州小児外科学会、第52回九州内分泌外科学会も併催し、外科のベースとなる基盤学会として開催しました。
会場はハウステンボスの「タワーシティプラザ」で参加者は5月13、14日の2日間で439人。これまでの学会は、長崎市内の会場が多かったものですから、今回は少し趣向を凝らして企画しました。気候も良く、ちょうど110万本のバラ祭りの期間中だったこともあり、皆さん楽しんでいただけたようで、評判も上々でした。ハウステンボスで学会が開けるのは、長崎県民の特権ですからね。
特別講演では、日本外科学会の理事長をされていた東京大学大学院肝胆膵外科・人工臓器移植外科の國土典宏教授、近畿大学医学部奈良病院の米倉竹夫教授、愛知県がんセンターの岩田広治部長に最新のトピックを話していただきました。また、今回は、研修医を含めた若い先生たちの発表にも評点をつけて、表彰式なども開きました。この経験をきっかけに外科医を目指す人材が増えればいいなと思っています。
―九州初の肝腎同時移植をされたとお聞きしました。
今年の6月のことです。長年、人工透析を受けられていた患者さんで、肝臓疾患もあり、悩んでおられましたが、幸い臓器提供を受けることができました。われわれのチームが肝臓を、本院の泌尿器科が腎臓を。二つの科が協力して手術をしました。国内では7例目になります。先日、無事に退院されました。
本院で実施した肝臓移植の症例数は10月1日現在248例。250例を記念して、患者さん方との交流会を開きたいと思っています。ジャポニカ学習帳の表紙を手掛ける写真家・山口進さんによる講演なども企画したいと考えています。
―8月に香港で開かれた国際移植学会に参加されたそうですが、いかがでしたか。
日本国際移植学会の国際戦略委員会の副委員長をしているので、幹事の立場から日本の移植医療を世界に向けてアピールしてきました。
欧米の場合は脳死移植が多いのですが、香港はアジアの一部ですから、日本や韓国と同じように生体移植が多い。生体移植となると、ドナーの安全性が重視されますので、外科手技にも精緻な技術が要求されます。手術の質をいかに高めていくか、各国の外科医と議論を交わしてきました。
―今年9月には、膵臓移植の実施施設に認定されました。
膵臓移植は、Ⅰ型糖尿病などの患者さんに適用されます。こうした患者さんは、腎臓疾患も抱えていて透析も受けているので、ほとんどの場合は、膵腎同時移植です。今までは、九州内の認定施設が九州大学病院しかなく、福岡まで行かなければ手術を受けられませんでしたが、今後は長崎でも受けられることになります。当科の大野慎一郎助教が担当します。
また、重度の肥満症や糖尿病の患者さんを対象とした肥満外科手術も症例を重ねています。手術によって胃を小さくするもので、現在6例実施しました。当科の金高賢悟講師が専門で担当しています。
―「ブラックジャックセミナー」を始めたのも全国初ですね。
子どもたちを対象に、シミュレーターを使った外科手術などを体験してもらう「ブラックジャックセミナー」は、2005年から始めて、今年で12回目になります。
藤田文彦・病院准教授が担当してくれていて、今年の8月は、川原小学校(長崎県五島市)で開催しました。まもなく統合廃校になるとのことで、最後の思い出にと企画しました。
セミナーの最後に、「ぼくら川原っ子」という歌を合唱してくれたりして嬉しかったですね。
第1回目のセミナーに参加した子が、現在、本学の医学部6年生と3年生に在籍しています。ついこの間も肝移植手術を見学にきていて、「ついにここまで来たか」と感慨深いものがありました。
セミナーに参加した子どもたちの中から、一人でも多くの外科医が育ってくれることを願っています。
長崎大学病院
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