熊本赤十字病院 中島 伸一 副院長

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過去の震災に学び経験を進化させる

1981 熊本大学医学部卒業 1982 熊本大学医学部附属病院 1984 熊本赤十字病院 整形外科部 2006 同院診療部長 2007 第二整形外科部長兼務 2009 形成外科部長兼務 2010 同院副院長

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◆震源地に最も近い 基幹災害拠点病院

 この度の地震では、前震(4月14日)、本震(同16日)ともに、当院は震源地から最も近い基幹災害拠点病院で、益城、西原、南阿蘇と、ちょうど活断層にかかわるエリアにあったので、患者さんが集中的に搬送されてきました。

 以前から、1~2カ月に1回、災害に備えたさまざまな災害対応訓練を行っていたこともあり、前震のときは落ち着いて訓練通りに対処することができました。人的にも精神的にも少し余裕があり、被害が大きかった益城地区に当院のDMAT、救護班を送ることができたほどです。前震直後と翌朝には、一時的に多くの急患が搬送されてきました。しかし、そのあとは落ち着きを取り戻し、「訓練をやっててよかったね」などと話をしながら、当直を手厚くしてほとんどの職員は帰宅させ、私自身も午後9時ごろには帰宅しました。

 すると、16日午前1時25分、本震が発生。まったく想定外の極めて大きな地震で、体感的には病院が壊れたのではないかと思うほどでした。病院に向かう車の中、「職員は大丈夫だろうか。徹夜勤務の状態で、果たして何人かけつけてくれるだろうか」と心配していましたが、病院に着いてみると、すでに654人(約半数)の職員が参集していました。

 ただ、救命救急センターが地震により停電。普段はレストランや売店があるエリアでトリアージをして、病院の真ん中にある廊下に重症度別に患者さんを運びました。この廊下は幅4.8mあり、災害時の診療スペースとして使えるよう設計されていて、重症者の処置をするエリアのそばには、CT、MRIなどの検査機器もすべてそろっています。

 災害医療の現場は、多くの患者、その家族、警察、DMAT、マスコミ関係者、医療者でごった返しています。今回の場合、救急隊員による病院前トリアージ(どこの病院に運ぶか)が徹底されていたこと、病院到着時の最初のトリアージに力を入れていたことで、現場の混乱を防ぐことができました。

◆くまもとクロス ネットシステム

 本震後の受診者数は、一時間に100人のペース。重症者も含まれていますから、日ごとに患者数は増えていきました。4月14日~18日までの患者総数は1397人。ベッド数も足りなくなったため、100人ほどの入院患者さんに転院をお願いしたりもしました。転院先を探す際、役に立ったのは、「くまもとクロスネットシステム」です。これは、同じ医療圏にある病院、診療所、クリニックなどをインターネットでつなぐシステムで、平時から、処方、注射、検体検査、退院サマリー、画像の閲覧など、患者さんの情報を共有していたので、スムーズにやりとりができました。

◆助言に救われた

 東日本大震災のとき、私は石巻赤十字病院に救援に行きました。そのとき、現場責任者をされていた石井正先生からの助言に、今回ずいぶん救われました。助言は重要機器を守ること、帰宅困難者への対応、水の備蓄などです。

 当院の建物のほとんどは耐震構造なのですが、検査機器、電子カルテのサーバーなど、重要機器のあるエリアだけは免震構造を追加し、今回は、故障した機器もなく使用することができました。

 また、当院のすぐそばにある熊本県立大学とは、以前から結んでいた協定があります。災害時、帰宅困難者が出た場合、一時的な避難所として場所を提供してもらうのです。処置が済んだ軽症の患者さんとそのご家族を深夜にもかかわらず受け入れてもらえたので、院内の医療スペースを確保することができました。貯水タンクも、もともとは90tだったものを、石井先生のアドバイスで350tのものに替えておきました。そのおかげで、3日間は持たせることができ、その後は自衛隊などの給水のおかげで病院機能を維持できました。先日、泥水からでも毎時4tの上水をつくることができる浄水機能を持つ機械を設置し、病院機能を高めました。

 食料は3日分備蓄していましたが3日分では足りず、ガスも途絶えてしまったため困っていました。すると、福岡赤十字病院からの食料が16日の深夜には大量に届いたのです。また、各施設からもたくさんの支援物資が届けられました。

 こうした外部からの支援が何よりの励みとなりました。

◆反省点を生かす

 全職員の安否確認はすぐにできたのですが、職員の被災状況の確認ができたのは、震災から1週間後。非常時で、マンパワーが落ちていたとはいえ被災した職員のケアももっと必要でした。自宅が倒壊し、車中泊をしているような職員の手も借りている状況でした。

 十分な休息、食事もできず働きづめでは、職員全員がつぶれてしまうのも時間の問題でした。そこで、日本赤十字の本部に依頼して、災害救援に向かうチームとは別に、熊本赤十字病院を支援してもらうチームを派遣してもらったのです。

 4月21日、第一陣が到着して以降は、全国各地の赤十字チームが交代で来てくれました。この支援がなければ乗り越えられなかったと感謝しています。

 災害時は、まず "自助(自分で自分を助ける)"、次に "共助(家族、企業、地域などで助け合う)" そして "公助(行政による救助、支援)" が受けられます。しかし、公助は公平性を重んじるので、被害が大きいところが優先です。今回でいえば、建物に損壊も少なく、診療を続けていた当院への救援は、優先順位が低い。もっと早く状況を確認し、被災した職員たちのケアをすべきだったと反省しています。

 当院は、これまで基幹災害拠点病院として、ハード、ソフトの両面でモデルケースになることを求めてきました。今回の地震で経験したことを風化させず、反省すべきことは反省する。変えるべきところは変えて、足りないものは足していく。基幹災害拠点病院としてのあるべき姿を常にイメージしながら、少しずつ進化させていくことが大事なのだと思います。

熊本赤十字病院
熊本市東区長嶺南2 丁目1 番1 号
TEL:096-384-2111(代表)
http://www.kumamoto-med.jrc.or.jp/


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