静岡県東部地区の基幹病院の役割を
1967(昭和42)年に町立伊豆長岡病院の運営を引き継いだ順天堂大学附属静岡病院。50年余もの長きにわたり、地域の基幹病院としての役割を担ってきた。約60万人を擁する駿東田方医療圏にある同院の地域での役割などについて、三橋直樹院長に話を聞いた。
■需要とともに規模拡大
静岡県は、静岡市を中心とする中部地区、浜松市などを中心とする西部地区と、富士川を境にした東側にある富士市、三島市、熱海市、伊豆半島などから成る東部地区に分けられます。
当院は、東部地区の中心に位置する伊豆の国市にあります。前身の町立伊豆長岡病院は、1945(昭和20)年に当地で結核の診療所としてスタートしました。
しかし、1965(昭和40)年ごろから赤字経営が続いたことから、当時の首長が、順天堂大学に附属病院化を要請、移譲されたという経緯があります。病院は、90床でスタートしましたが、周辺に大きな病院がなかったこともあり、人口の増加で患者数が増え、現在は577床を有するまでになりました。
現在、当院の1日の外来患者数は平均約1500人です。東部地区は、中部や西部地区と比較すると、医師の数や、医療施設が少ない医療過疎地域で、御殿場市、富士市、富士宮市など遠方からの受診も多く、当院は東部地区では最大規模の病院となっています。
本学には、現在、大学本校の附属病院が、関東地区など、全部で6病院ありますが、当院は、2番目に歴史のある病院となりました。
特徴として挙げられるのは、まず救急医療です。開院当初から、救命救急センターを開設し、力を入れてきました。ヘリポートを設置したのは2006年、現在ドクターヘリは年間800回ほど出動します。ただ、高度熱傷については、他病院に搬送しています。
周産期医療にも力を入れています。産科では、年間約900件の出産がありますが、これに伴い、新生児集中治療病床(NICU)が12床、継続保育病床(GCU)を18床設けています。
同程度の分娩数がある静岡市にはNICUが30床がありますので、東部地区は数が足りないと考えています。
強みの一つは、やはり実力がある医師が数多くいることではないでしょうか。
研修医も含めると、現在220人の医師がいますが、仕事への意識が真摯(しんし)です。例年そうですが、今年もお盆の季節であっても通常通り手術を行うなど、一生懸命に働いています。
当院には、毎年、研修医が20人以上来ています。県内全体で1年に200人程度の研修医がいますので、10%は当院に来ているということなります。
現在は、順天堂大学本体からの医師の数が全体の半分。本学は、附属病院への医師の配置を優先して考えてくれますので、医師が不足するということは今のところありません。この点が、大学の附属病院の強みかもしれませんね。
本学は、日本最古の西洋医学塾として、佐藤泰然先生が創設、その歴史は175年を超えます。
長い歴史が作り出した精神性が受け継がれているのでしょう。順天堂大の医師を見ていると、患者さんにどのように接すればいいのかを、学生時代からしっかり身に着けて来ていると感じます。
看護師の確保については、5年前までは厳しい面もありました。しかし、2010年、本学の保健看護学部(定員120人)が、三島市に開設。同学部の学生が当院にも臨床実習に来ること、卒業生の半分程度は大学の附属病院に就職することもあり、看護師不足はずいぶん解消しました。
■長期的な視点で
当院が抱えている課題の一つは、病院のリニューアルをどうするかという点です。
現在8棟ある建物のうち、古いものは1960年代に建設されたもの。老朽化で患者さんにはご不便をかけています。医局など職員の空間も、狭いなかでやりくりしているのが実情です。それらを解決するためにも、建物の建て替えについて検討を始めています。
伊豆の国市には、公的病院はありませんので、当院は、地域の公的病院のような役割を担っている側面もあります。
難しい課題ではありますが、地域のみなさんの協力もいただきながら、長期的な視点で新しい病院づくりについて考えていきたいと思います。