高度急性期医療と国内外の医療支援活動を通して地域に貢献
臨床では常に患者さんから学ぶ機会がある
今から107年前の1909(明治42)年に創立された大阪赤十字病院は入院患者数、手術件数、救急搬送数、診療エリアなど全国でも最大級で、大学病院に匹敵する診療体制を有しています。高度急性期病院としての診療と同時に、全国5カ所にある日本赤十字社国際医療拠点病院にも指定され、国内外の災害救護活動や医療支援に積極的に取り組んでいます。
◇国際救援活動
大阪赤十字病院の国際活動は1914年から始まりました。直近5年間の実績は、医師21人、看護師長および看護師17人、事務職員12人、検査技師1人、臨床工学技士3人、薬剤師3人を国外に派遣しています。派遣地はウガンダ、ハイチ、ネパール、東ティモール、レバノン、南スーダン、ケニアなどで、派遣期間は最短6日、最長24カ月となっています。
今年の8月からギリシャの難民支援に2カ月間、医師が派遣されるなど、常に数人が海外に医療支援に出ています。当院の判断で単独に派遣しているわけではなく、日本赤十字社の国際救援部や国際赤十字の要望に従って派遣されます。派遣先の政治・社会状況、衛生環境、安全の確保など、ハードルは高くても、病気やけがで困っている人がいれば国の内外を問わず助けたいと思うのが医療従事者です。個人の活動では限界があり、ミスマッチも起こります。継続的な支援を行うためには、組織的な人材育成が必要です。院内の各職種に経験者がいるということもモチベーションになっていると思います。
派遣される職員は非常にやる気があり、現地でとても高く評価されています。日常の診療とはまったく異なる経験は、本人の人生にとってもプラスになると思います。海外派遣のための余剰人員を抱えているわけではありませんから、不足した業務はみんなでカバーすることになります。病院全体の協力がなければ成り立つことではありません。東日本大震災、熊本地震など、国内の救護活動にも日赤の一員として積極的に参加しています。地域での防災活動も行っています。
◇2025年への備え
医療機能の分化が進められていますが、2025年には大阪府全体としては約1万床ベッドが不足すると予測されています。大阪市は人口が250万人を超える一つの二次医療圏で、他医療圏からの患者さんの流入も多く、たくさんの医療施設があります。急性期や高度急性期は過剰になっていますので、回復期や慢性期医療への転換が課題になってきます。私たちはこの地域で長年、急性期医療を担ってきましたので、今後も高度急性期・急性期病院として診療を行っていきたいと考えています。そのための診療体制の整備や地域との医療連携を積極的に進めています。
◇医学生への助言
知識や技術は自分で勉強して身につけていくものですが、医療は、自分で勉強することよりも、患者さんから学ぶことのほうがはるかに多いのではないかと思います。臨床の現場では、一人一人の患者さんとの人間関係が問われます。医師になった動機がどんなものであれ、目の前にいる患者さんから学び、成長できる機会が常にある仕事だと思います。
患者さんというのは、疾病も人間も多様性に富んでいます。その意味で、非常に幅が広く、その幅は医師の幅よりもはるかに広いです。多種多彩な患者さんに対して100%の名医はいないでしょうから、常に学ぶ姿勢を持ち続けることが大切だと思います。
院長になって6年あまり。院長の仕事は何だろうといつも考えています。私だけでできることは何もありませんから、全職員が頑張ってくれることが、院長としては一番ありがたいことです。職員の皆さんがやる気を持って楽しく働いてくれることが、患者さんのためになると思っています。