西播磨の精神科医療を支え続けて
ー高岡病院及び恵風会の役割は。
高岡病院は1955(昭和30)年に西播磨地域で最初にできた精神科病院で、地域の精神科の中核的な役割を担っています。姫路市内には精神科を持っている総合病院がないので、身体合併症は主として姫路赤十字病院と連携をしています。
1977(昭和52)年に医療法人化。病棟の新築や増床を経て、1991(平成3)年には介護老人保健施設老人ケアセンター緑ケ丘を開設しました。当時は病院が満床だったので、認知症の人は老健施設で対応していこうということで開設したのです。
その後も認知症関連として通所リハビリテーション、グループホーム、サービス付き高齢者住宅を造りました。
精神障害者の患者さんの社会復帰施設として地域活動支援センター「けいふう」、福祉ホーム「そよかぜ」、相談支援事業所「けいふう」、グループホーム「けいふう」、「いこい」「いこい2」を備えています。
法人内に精神科の病院と社会復帰施設を備えているので、地域の医療ニーズに応えられる様に努力しています。
当院に併設するけいふう診療クリニックでは外来診療をしています。1日約230人の患者さんが来られます。クリニックの2階ではデイケアをしていて医師、看護師、作業療法士、臨床心理士、栄養士などの専門スタッフが、患者さんの暮らしを支援しています。
近年、児童思春期、発達障害の患者さんが増えてきて、クリニックが手狭になってきました。そこで、2012年に増設。患者さんとご家族の不安を癒やす建物になったと思います。
また精神的な問題で休職されている人を対象にした復職のためのリワークプログラムを組み、職場復帰を支援しています。
ー今後力を入れていく取り組みについて。
やりたいことはいろいろあります。認知症、うつ病、パニック障害、神経症など、さまざまな疾患の人がいらっしゃいます。いずれは、それらに対応する専門外来を設置したいとは思います。
しかし、それをやるには相応の専門医を集めなければならず、今すぐにできるかといえば難しいですね。
患者さんの高齢化に伴い、認知症などが増え、患者さんの疾病構造が変わってきています。それに対してどう対応するかが、今後の課題です。社会の医療ニーズに合わせて精神科病院も変わっていかなければなりません。
ー職員の指導で心がけていることは。
それぞれがプロフェッショナルとして質を高めていかなければなりません。そのために院外、院内の研修会には積極的に参加してもらっています。
法人内には、さまざまな施設があるので、職員同士がお互いを理解するために毎年、院内学会を開いています。朝礼では患者さんとの関わり方や職種ごとの心構えについての話をしています。
技術を磨いたり、知識を高めることは、もちろん大事ですが、医療者の根底には患者さんを思いやる気持ちがないといけません。
患者さんと同じ目線に立つのが最も大切なことだと職員には常に言っています。
ー他の精神科病院と比べての強みは。
地域の精神科の中核病院として、精神科救急入院料を取得。急性期の患者さんを積極的に受け入れています。急性期、慢性期、リハビリを経て、社会復帰に至るまでの流れを作ることができたと感じていますね。
患者さんの高齢化に伴って身体合併症の増加とADL(日常生活動作)低下が顕著でそれに対する対応も必須です。当院では他の精神科では、まだあまりやっていない理学療法もしています。
ー精神科医のやりがいは何でしょう。
精神科は急性期の患者であっても、すぐに良くなる人ばかりではありません。慢性期となるとより難しいケースが多いですが、患者さんが元気になった姿を見ることが何よりもうれしいですね。
精神疾患を抱えた患者さんとは、長い付き合いになります。症状が落ち着いても、継続して診ていく必要があります。その過程で、いろいろなお話をしながら、症状の維持に努めていくことが大切だと思います。