医療の質を求めて
■済生会らしさ+スタンダードを上回る医療
済生会は、1911(明治44)年、明治天皇から下賜されたお手元金を基金として創立されました。もともと生活困窮者に医療福祉を通じて手を差し伸べる目的で設立された団体です。
ですから、公立病院とも私立病院とも違います。無料低額診療や、済生会の生活困窮者支援事業「なでしこプラン」で"社会的弱者"と呼ばれる方々に無料健康相談などを通して手厚い支援をするという役割を、欠かすことはできません。
一方で、当院は急性期の500床クラスの病院です。どこにも引けを取らない、スタンダードを上回る医療を提供する必要があります。1980(昭和55)年、県内で最初に救命救急センターに認可された病院としても、救急医療を担うことが私たちの使命であり、看板でもあります。
さらに言うと駿河区唯一の総合病院ですので、入院を必要とする患者さんをいつでも受け入れるという、地域包括ケアシステムの重要なパートを担うことも、この地域から求められていると思います。
■新救命救急センターでハード・ソフトとも充実
5月、新館「東館」が始動しました。免震構造で、自家発電装置などを屋上に設置。1階に救命救急センター(救急外来)と放射線検査室、2階には内視鏡検査や超音波検査などが入った総合検査センター、3階には手術室、6階にICUを置き、各階を大型エレベーター
これまでの救命救急センターは、私が研修医で赴任したころからの建物でした。大規模災害発生時にも医療を継続できるように、と考えた東館の稼働によって、やっと災害に強い病院を名乗れるようになったと感じています。
また、4月に小柴真一センター長を県外から迎え、人材面でも強化しました。彼は、当院で2年間研修をした後、救急の道を選び三次救急を担う病院で修行を積んできました。若いですが、救急医としての腕は磨かれています。
彼が戻ってきてくれてまだ4カ月弱ですが、当院の救急車受入台数が1日当たり平均1台増えています。対応が良いため、救急隊員の方が頼りにしてくれるようになったのでしょう。うれしい限りです。
院長としては今後、彼のように若い時期に当院で仕事をした人が他院で経験を積み、また帰ってきてくれる、そんな道筋をつけたいという希望もあります。
■顔の見える病診連携
この地域には、救急車受入台数が年間4000〜5000台に上る病院が当院を含めて四つあります。その中で、われわれの特徴はどの診療科の患者さんでも受け入れられる「フルラインアップ」だということ。周産期センターもあります。
昨年度までは呼吸器内科の常勤医が不在でしたが、この春、浜松医科大学から優秀な3人がチームで来てくれました。今は、開業医の先生方にどんな患者さんを紹介いただいても対応可能です。そのことを医師会の先生方にアピールすると同時に、若い先生方にも医師会との会合に出席してもらい、顔が見える関係を築くことに力を入れています。
■県内初! 共同利用型院内保育所
当院の職員だけでなく、近隣の医療機関で働く医師や看護師の方のご子息も受け入れる県内初の共同利用型院内保育所「なでしこ保育園」を、昨年開設しました。
経験を積んだ女性の医師や看護師が、出産を機に病院を離れてしまうのは大きな損失です。パートで数時間働くというのも、ポテンシャルを十分に生かしているとは言い切れない気がします。ですから、曜日限定で夜間保育の日も設け、夜勤に
県の医師・看護師不足対策とも狙いが一致したことで、共同利用型となり県の補助金を頂いて建設できました。また、待機児童対策として医療従事者以外の地域のお子さんもお預かりする枠も設けています。
現在の入所人数は、当院職員のお子さんが60人、地域医療従事者のお子さん4人、地域一般枠のお子さんが15人。私は園長でもあるので、実質的に切り盛りをしている副園長から報告を受けたり、時には足を運んで小さなお子さんに癒やしてもらったりしています。
■人材確保と教育に注力
本来目指す使命のためには健全経営が大前提。そのためには医師、看護師の確保とともに医療の質の向上が必要です。
この地域には、良い病院がたくさんあります。その中で頼られる病院であるためには、医療サービスの質を追求しなければと思います。
実は地域の方や患者さんから、看護師をはじめ当院職員が優しいと言っていただくことが多々あるんです。その良さは大切にしたいですね。直接収益をもたらす立場・職種ではない職員も、当院の評価を上げることに努力してくれています。すべての職員の力が集まると強くなる。ですから、それぞれの持ち場のスタッフがそれぞれ患者さんのため、病院のためになることを自分で考え、実行してほしいと話しています。
静岡市駿河区小鹿1丁目1番1号
TEL:054-285-6171(代表)