利用者のためにやるべきことは
医療の後の時間のほうがずっと長い
当院ほどの規模の病院は、医療だけでなく、16年前に始まった介護保険について詳しくなければ、これからの地域医療はまかなえないでしょう。
人間が生涯を生きていく間、医療に頼るだけでは難しい。急性期病院にしばらくいたとしても、寿命から見ればそのあとのほうがずっと長く、そこは在宅なり介護、福祉の分野です。
昔は一つの病院で予防から治療、退院まで完結していました。でも今はそうではなく、野球に先発・中継ぎ・締めがあるように、医療も分担されるようになりました。いわゆる急性期、亜急性期、慢性期です。
当院は160床のうち、回復期リハビリテーション病棟134床、地域包括ケア病棟が26床あり、亜急性期と回復期の患者さんを受け入れる病院だといえます。
そして在宅復帰した人はいいとして、帰れない人はどうするかといいますと、当法人でいえば介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、あるいはサービス付き高齢者向け住宅ということもあるでしょう。
時代の流れの中で、病院の数がどんどん減り、これからも地域医療構想の中で減ってきます。なくなるのはほとんど100床以下の中小病院です。生き残るには専門性しかありませんから、当院は今の道を選んだのです。
熱田区の回復期病棟は当院だけです。隣接の中川区にもありません。そこに地域包括ケア病棟が加わりますから、しばらくはニーズに応えられると思います。
回復期の医療は多職種で分担
急性期は指揮命令系統がトップダウンで、組織もピラミッド構造ですが、回復期や地域包括ケア、老健などは、医者だけでなくさまざまな職種の人たちが並行的、横断的に関わる、チーム医療としての色合いが濃いと思います。
利用者のためにやるべきことは
私たちの仕事は地域の顔が見えていることが大切ですから、老健ではお祭りをやりますし、リハビリテーションの担当者も社会福祉協議会や町内会の依頼でリハビリ講座を開くことがあります。介護保険の仕事に関わるなかで、医療とは違った要望があったり人間関係が生まれたりするのは面白いことですね。
今後に目を向けますと、医療圏は病床が減る一方でしょう。他方、高齢者はますます増えていくことが統計で明らかになっています。冒頭にも申し上げましたが、医療と介護・福祉の連携ができて、それを提示できれば、利用者はその中から選ぶことができます。そのためのサービスを、規模も種類もさらに増やしていくつもりです。