医療法人 善慈会 大分丘の上病院 帆秋 善生 理事長・院長

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心を癒やし、再生へ

大分県立上野丘高校卒業 1970 久留米大学医学部卒業 1983 久留米大学大学院博士課程 精神薬理学修了医学博士修得 1989 久留米大学精神神経科講師 アメリカ・メニンガー病院留学 大分丘の上病院開業、理事長・院長就任

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美しい木々の緑に囲まれた開放的な診察室。精神科としては珍しく、対面式で患者の話を聞くのだそう

―病院創設から28年になります。

 1989(平成元)年の開業当時、九州地区で思春期の精神医療をやっている病院はほとんどありませんでした。診療を始めたばかりの頃は、思春期の患者さんは約20%と少なく、残りは成人患者でした。

 2001年には思春期病棟を造り、2014年に外来棟を新築しました。今でも九州地区では、思春期の精神疾患を診る病院は珍しいようで、福岡、熊本、宮崎など、県外からも患者さんが来院されます。

 当院を訪れる思春期の患者さんの多くは、拒食症・過食症といった摂食障害や自傷行為、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など。中には、境界性人格障害(※1)の人もいます。境界性人格障害の人の多くはPTSDの傾向があり、双極性Ⅱ型(そううつ病)であるケースが多いですね。思春期の子どもたちは、まだまだ人づき合いが得意ではありませんので、接し方には十分に注意が必要です。

 さらに、患者本人だけでなく、親のメンタル面も一緒にケアする必要があります。病気自体を受け入れられなかったり、トラウマとなった出来事からわが子を守れなかったと自分を責めたりするケースが多く見られるからです。

 思春期の患者は成人と違って、どこの学校に進学するのか、何の仕事に就くかなど、将来のことも考慮しながら治療を進めなければなりません。特に高校生の場合は、長期間学校を休むと、復学すること自体がストレスになったり、いじめにあう可能性もある。しかも、卒業に必要な出席日数が設定されていますから、期限内で復学できる治療計画が求められます。当院では、クラス担任と教科担当の先生方とも直接話をしながら治療を進めています。

―集団療法については。

 拒食症・過食症などの摂食障害には「コスモスの会」、うつ病には「陽だまりの会」、統合失調症には「かけはしの会」があり、各グループ内で集団療法をプログラムに入れています。

 入院紹介の多いアルコール依存症については、薬物依存症にも応用できる「アルコール・リハビリテーション・プログラム」があります。依存症の場合、解毒症状・離脱症状(※2)が抜けてから合同面談を実施し、プログラムに進みます。

 3カ月間のプログラムでは、依存症のメカニズムや体に及ぼす影響などを講義形式で学習したり、グループミーティングやレクリエーションなど、仲間とのふれあいの場を設けています。

 しかし、それだけでは十分ではありません。なぜなら、アルコール依存症は、自分の意思で治すことは不可能な病気だからです。お酒のにおいをかいだり、寂しくなったりすると、つい飲みたくなってしまう。そんな時は断酒会などに行くと周囲が止めてくれる。するとその晩は飲まなくてすむ。それを毎日続けることで何とか生活できるようになるのです。

―平均在院日数が短いですね。

 入院患者の約70%の方が3カ月以内、約90%の方が6カ月以内に退院されていて、平均在院日数は116・1日です。全国平均が284・7日、大分県の平均が420・1日(2010年現在)ですから、かなり短いと思います。

 まず、急性期治療病棟に入院してもらって治療を始めます。この病棟の平均在院日数は50日です。3カ月経っても退院できない方は、重度かつ慢性の療養病棟に移っていただきますが、6カ月以内に退院される方がほとんどです。一部の方は高齢者・認知症病棟で治療を続けます。このように病棟機能を分化することで効率化を図ることができ、退院も早くなっているのだと思います。

―うつ病などで休職した人の職場復帰を支援する医療機関による団体「うつ病リワーク研究会」に登録していますね。

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 心の病になったら、仕事ができなくなったり、人間関係がうまくいかなくなったりします。まずは、いろいろなものを失った心を「癒やす」。そして「再生」を目指して治療をしていかなければなりません。

 職場の人間関係によるストレスが原因でうつになった人の「再生」のためには、認知行動療法(※3)に取り組んでもらうことが大切。さらに、職場に戻る前にリワーク・プログラム(※4)を受けてもらう必要があります。

 職場を変えても、生き方が変わらなければ、ただ延々と転職を繰り返すだけになってしまう。自分は変わらなくていい。ただ、苦手な相手から何か言われたとき、どう対応すればいいのか、そのノウハウを学ぶことが大切なのです。

 現在、大分県下でリワーク・プログラムに取り組んでいる医療施設は、中津にある寺町クリニックと当院の2カ所。九州地区で「うつ病リワーク研究会」に正式に登録しているのは、当院を含めて29施設です。リワークは、社会復帰のためのノウハウを教えるものですから、治療ではない。そうした意味で、リワークは病院ですることではない、と考える精神科医が多いのかもしれません。

 しかし、人とのコミュニケーションの取り方を教えることも精神科医の大きな仕事。患者さんが社会に適応するためには、薬物療法とリワークを常にセットでやっていくべきだと思います。

(※1)境界性人格障害
衝動性・攻撃性・感情の不安定さ・対人関係のトラブルの多さなどが特徴的な精神疾患。
(※2)解毒症状・離脱症状
アルコールや薬物を止めることによる副作用のこと。手の震えや幻視(虫が見える)など。
(※3)認知行動療法
認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種。
(※4)リワーク・プログラム
うつ病やストレス関連疾患などで休職中の人を対象にした、職場復帰のためのプログラム。
医療法人 善慈会 大分丘の上病院
大分市竹中1403番地
TEL:097-597-3660(代表)
http://www.okanoue-hospital.com/

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