医療の質で選ばれる病院へ 病院建て替えを控え、医療の原点に立ち返る
医療者が選ぶ病院へ
今年4月に病院長に就任しました。病院の基本理念である「愛と誠の精神」をもって医療を提供することと、地域の基幹病院として高度な医療・ケアを行うという2つの大きな方針を、より具体化するのが病院長として課せられた使命です。
これまで、当院はどちらかといえば立地条件で患者さんから選ばれてきたと個人的には思っています。広島市内から少し離れていて周囲に大きな病院がないのが逆に病院としてのメリットになっている面があり、地域の患者さんは「ここしか行くところがない」という消去法で来てくださっているのかもしれません。
しかし、これからはそうはいきません。2022年をめどに建て替え(移転)が決まっています。移転先まで来てもらえる、地域に「ある」病院ではなく、地域から「選ばれる」病院に脱皮する必要があります。
移転で医療圏は少しずれますので、それでも来てもらうためには、「あそこの医療じゃないと困る」という声があがるだけの高度な医療の質を維持していかなければなりません。
もっとも、医療は建物や医療機器などのハード面だけが「質」を決めることはありません。医師が患者さんの話をきちんと聞くこと、医療者が円滑にコミュニケートできることというのは医療の一環です。
ですから、病院が選ばれる理由として、「あの先生に診てもらいたい」「あの看護師さんの顔を見にいこう」でもいいと思います。お互いが心を交わして「この人になら生命を託そう」と思われる病院にならなければならない。そういった病院であるかどうか、わかりやすい判断基準は病院で働く医療者自身が選ぶ病院かどうかです。
実際、私もここで治療を受けたことがありますし、私の義理の両親もここで治療を受け、父親も入院しました。もちろん、身内がいたらやりやすいという面もあるでしょうが、私だって医療のレベルが低かったらこっそりとほかの病院に連れていきますよ(笑)。
現段階では、地域から求められている高度先進医療を提供できていると思います。心臓血管外科のハイブリッド手術施設がない、あるいは周産期母子センターや精神科閉鎖病棟がない、などの課題はありますが、それ以外はどこに出しても恥ずかしくないと自負しています。
決して独り善がりになっているわけではなく、客観的にはDPCⅡ群病院への指定(2014年)が医療の質の高さを証明しているのではないでしょうか。
建て替え計画の現在
昨年9月に建て替えとそれに伴う移転が正式に決定し、現在地の住民向けの説明会を複数回開催してきました。
JRが廃線になった路線を延伸するのは初めてと聞きましたが、延伸した新たな終点駅に隣接して新病院を建設する予定です。もともとは病院移転のみの計画だったのですが、単なる移転だけでは市議会に認められなかったため、現在地に住民の方のためのなんらかの医療施設を残すことになりました。
現在は、現病院の北側にある建物を使って地域包括ケア病棟と緩和ケア病棟を残そうということになっています。さらに日常的なことを診たり、安佐医師会が行っている可部夜間急病センターや行政機関が入る計画もあります。
地域住民のみなさんの惜しむ声は非常にありがたいのですが、新病院建設を待っている方々もいますし、それだけ期待されているところが大きいということだと、身を引き締めています。
新病院は高度急性期機能をさらに充実させるとともに、国指定のがん診療拠点病院として県下3番目の実績をもつ現病院の診療機能をさらに発展させます。救急車の受け入れも現在の年間4000台を4500台まで増やそうと計画中です。
安佐市民病院の建て替え計画2022 年をめどに
建物の老朽化や未耐震化建物があるなどの問題を受け、広島市と市立病院機構は、安佐市民病院を2022 年をめどに同区の荒下地区に移転させることを決めた。移転に伴う医療環境や経済環境の悪化を危惧する地域住民の意向を受け、現病院の機能を一部残す方向で話し合いが進められている。
地方独立行政法人 広島市立病院機構
広島市立安佐市民病院
広島市安佐北区可部南2丁目1番地1号
☎082・815・5211(代表)
http://www.asa-hosp.city.hiroshima.jp/