目的にたどり着く過程が答えを深いものにする
泌尿器科は、欧米では外科の専門部門という位置づけですが、日本ではその意識が一般に低いのが現状です。しかし最近では、高齢者が増えたことも反映して、泌尿器科医の必要性が増しつつあるように思います。
診療面も多様化し、外科的な面だけでなく、内科的側面や婦人科的側面も併せ持つ科に成長し続けています。
日本の泌尿器科学の特色は、腫瘍、前立腺、結石、排尿機能、内視鏡、手術、などのほかに、腎移植、男性学、小児や女性泌尿器、性機能、感染症、画像診断など幅広い範囲をカバーしていることです。
ですから、泌尿器科を選んだ人は、手術がうまくならなくても、やれることがたくさんあり、すみ分けのできる診療科だと思っているんです。
―なぜ泌尿器科医に。
進路を決めようという時に大阪大学の泌尿器科はアクティビティーが高いと知り、比較的こぢんまりとした診療科でもあったので、自分に向いているだろうと思ったんです。大所帯は自分向きじゃないと。
大学に残ったのは、両親が教師だったことが影響しているのか、教育が好きだからです。研究も、大学院に入った若いころにやってみたら意外に面白い。
―今の学生に思うことは。
私が学生のころは情報が少ない時代で、汗をかいても大した情報が集まらず、いろんな不安があるまま決断していかなければなりませんでした。
今の学生は、なにかをやろうとする時に情報が得やすい環境にあります。でも逆に、自分で悩んで考える機会は少なくなっているのではないでしょうか。
学生には雑談の中で、「ものごとを調べる時は、目的とする答えにたどり着くまでの過程が大事。そこにいたる思考や周辺の知識が、答えを深いものにする」と話しています。すぐにネットに頼るのではない昔風の調べ方も重要だと思います。
これは診断をつける場合も同じです。患者さんの訴えを聞いて、「たくさんの情報があれば正確な診断がつけられる」とばかりに、いきなり全部の検査をやるのではなく、筋道を立てて考えて、一つずつ過程を経て診断をつけていくことが大事だと学生には指導しています。医療経済にも関わることですからね。
症例検討会のプレゼンテーションでもそのような例が現われます。いきなり核心に迫る画像を出す研修医と、検査の手順をプレゼンする人と、どちらが正しいかといえば後者のほうです。そのようなことを指導するのが最近の若い人には必要だろうと思いますね。
―医局内の交流が盛んだと聞きました。
外科系はチーム医療ですから、診療科のスペシャリティーごとにグループ分けされています。だからグループ内での結束はうまくいっていますが、それだけだと閉鎖的になるので、グループ間の交流や情報交換は意識して行うようにしています。場合によっては看護師さんなど他職種が参加することもあります。
大阪大学医学部附属病院
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