宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野 林 要人 准教授

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認知症の人が迷うことなく生活していく手助けを

東京都立西高校卒業 1987 早稲田大学理工学部卒業 1994 宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒業、宮崎医科大学精神科入局 1997 宮崎医科大学精神医学講座助手 2011 宮崎大学医学部精神医学講座講師 2013 同准教授

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言葉で伝えることができなくなった人がストレスを伝える〝手段〞=BPSD

 宮崎県の高齢化は、全国平均に5〜10年先行しているといわれています。先代教授の三山吉夫先生の専門が認知症だったこともあり、この大学の精神科は認知症疾患を診る機会が多かった。そのため、初期段階の認知症を診断する技量は高いと思います。

 例えば、レビー小体型認知症とうつ病は、気分の落ち込みなど、似たような症状が現れることが多くあります。でも、患者さんとの付き合い方、その病気の特徴などを熟知していると、早い段階で、見分けることが可能です。

 初期の段階での診断で、まず大切なことは、「治すことができる認知症」をきちんと見つけること。脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症や感染症、栄養不足などの場合は、手術や適切な感染症治療、ビタミン補充などで治療することが可能です。

 ただ、多くの場合は「治しがたい認知症」です。これについては、ケアや生活の仕方を考え、家族とも話をして、患者さんが迷うことなく生活していけるよう、手助けすることが大学病院にできることになるでしょう。リハビリやデイケアを持つ施設に、いかにつなげていくかが重要です。

 認知症には、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia=周辺症状)と呼ばれる幻覚、妄想、興奮、徘徊(はいかい)などの症状もあります。

 ストレスとBPSDの関係を調べたところ、BPSDの出現には本人の性格傾向や周囲の関わり方が影響することが分かりました。このBPSDは、言葉で表現できなくなった人が、「つらい気持ち」「悲しみ」「痛い」「かゆい」などのストレスを伝える手段となることもあるのです。

 BPSDが強く出ている患者さんの場合、「何があったのだろう」と考え、さまざまな方面から調べ、〝聞こえない声〞に耳を傾けることが大切だと思っています。また、BPSDが出ないようにするためには、認知症になった人がこれまでどんな生活をしてきて、家族関係はどうだったか、などを把握することが求められます。精神科医には、患者さんやご家族とのコミュニケーション能力が必要ですね。

 さらに、高齢の方は認知症だけでなく、がんなどの他の疾患も合併することが多々あります。BPSDがコントロールできていれば、認知症があっても、内科や外科など他の診療科で対応できます。BPSDを抑えることは、そういった面でも重要です。

■患者に優しい治療

 私たちはBPSDが出た患者さんへのファーストチョイスとして、漢方薬の抑肝散を使用しています。

 調査の結果、すでに何らかの薬物治療を受けていたとしても、抑肝散を追加することで、精神状態が穏やかになるなどの改善が多く見られ、それまで使用していた薬剤が減量できる可能性があること、抗不安薬や抗精神病薬は、足もとがふらついて骨折につながるなどの影響が大きいことが理由です。もちろん、抗不安薬などを使わざるを得ない状態の場合もありますが、極力患者さんの負担にならないものから使用したいと考えています。

認知症にならない、認知症が治る、そんな時代は・・・

 脳にアミロイドがたまり神経細胞が傷害されると認知症になるといわれています。例えば、アミロイドの生成や蓄積を防ぐ方法(酵素阻害薬や免疫療法)も候補としてあります。でも、使用した結果、その酵素の持つ別の大事な役割の抑制や脳炎といった副作用の問題が出ています。また新規薬剤の投与時期と適切な患者さんに対して試用されているかが重要であることも分かっています。今、なかなか新しい治療薬が出てこないのはそういうところでしょう。

 ただ認知症のリスク因子はわかっています。生活習慣病を抑える生活を若いうちに身に着けることで認知症を減らすことはできる。みんなが意識することで、将来の認知症が減るかもしれません。

 かつては、延命に力を入れた時期もありましたが、今はその峠を越えて、自然な形で最期を迎えることを目指す方向になっています。私が認知症になったら...。初期だったら、治療薬を試してもらってもいいかなと思います。でも、進行してきたら、穏やかに暮らせさえすれば、特に何もしてもらわなくていい、と考えています。

■高齢者のための医師に

 もともと人の気持ちを考えることが好きでした。大学の理工学部を卒業した後1年間、医学部受験のため浪人。タイプ事務所で働きながら、夜は勉強するという生活を送りました。

 東京で生まれ育った私が宮崎大学(当時・宮崎医科大学)に来たのは、タイプ事務所の社長が鹿児島県出身だったことがきっかけです。「日本の南のほうに行ってみようかな」と受験したことが、今につながっているのですから、不思議なものですね。

 精神科でイメージするのは、統合失調症やうつ病などだと思いますが、私がこの科を選んだのは、高齢者を診る専門の医師になろうと思ったからです。当時の精神科教授だった三山先生が認知症を専門にされていて、「これからは認知症が増える」と話されていたことも、大きかったと思います。

 今、高齢者を診る医師の必要性が高まっています。三山先生は、将来を見る力があったのだなと思いますね。

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宮崎大学医学部附属病院
宮崎市清武町木原5200番地
☎0985・85・1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/hospital/


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