国立大学法人 大分大学 北野正剛 学長

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大分から地域創生 ―社会貢献できる 人材育成と確保を―

福岡県立朝倉高校卒業 1976 九州大学医学部卒業1981 九州大学大学院修了 1983 ケープタウン大学(外科 Senior consultant doctor) 1993 大分医科大学第1 外科助教授(診療科長代行)1996 大分医科大学第1 外科教授 2005 大分大学副医学部長 2011 大分大学学長

 今年4月、国立大学では初となる医療福祉専門の新学部「福祉健康科学部」がスタートした大分大学。昨年10月に2期目を迎えた北野正剛学長に話を聞いた。

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―学長として5年、これまで多くの取り組みをされてきました。

 4月から福祉健康科学部がスタートしました。新学部の創設は、1972(昭和47)年に工学部ができて以来、本学にとっては44年ぶりの出来事です。

 この学部は国立大学では唯一、医療福祉を専門とする学部でもあります。理学療法、社会福祉実践、心理学の三つのコースがあり、それぞれが専門性を持って学ぶことができます。

 創設の大きな目的は、地域包括ケアを実践できる人材を育てることです。本学にはもともと医学部がありますから、医療と福祉が一緒になることで、新たな人材の発掘・育成につながると期待しています。

 学生の授業風景を見に行くと、非常に明るく前向きな学生ばかりで、授業中も質問や意見交換が活発に行われています。高い意欲を持った有能な学生が入ってきてくれたとうれしく思います。このような目的意識の明確な学生たちを、社会貢献できる人材に育てることが大学の大きな役目だと思います。

 来年度は、経済学部に社会イノベーション学科(設置申請中)を新設し、自ら新事業をマネジメントし、起業する人材の育成に特化した教育を行います。

 さらに、工学部に「理」の要素を入れ、理工学部への改組も予定しています。そのうち、創生工学科には、機械・電気電子・福祉メカトロニクス・建築学、共創理工学科には、数理科学・知能情報システム・自然科学・応用化学の各4コースを設けます。

 医学部には、国際的対応が求められています。米国での医療行為には、クリアしなければならない判定基準がたくさんあるためです。それに対応できるよう、臨床修練を増やすなど、カリキュラム再編に向けた全国的な動きがあります。

 臨床研修制度についても本学を中心に、各連携病院との協力体制がしっかりできているため、一時は20数%に落ち込んでいたマッチング率が今年は70数パーセントになりました。

―組織改革については。

 組織としてはきちんと物事を決めていかないと前へ進みません。私が学長に就任した当初は、「やり方が独断すぎる」などといった意見もあったようですが、この5年間でずいぶん皆さんが協力してくれるようになりました。

 些細なことかもしれませんが、以前は食事会ひとつにしても、人が集まらないことを理由に5〜10分遅れて始まることも多かった。しかし、開始時刻を「7時」と決めたら、たとえ全員がそろっていなくても7時ちょうどに始めるようにしました。その方が時間を有意義に使えるし、時間通りに来た人たちにも迷惑をかけなくて済みますからね。今ではみんな5分前に集まるようになり、「じゃあ、少し早いけど始めるか」という雰囲気に変わりました。

 学生に対しても、職員に対しても、私が必ず言うことは、「約束は守ってください」と「時間を守ってください」、この二つです。会議も時間通りにピシッと終わります。何でも時間をかければいいと いうものではありませんから。

 会議の場などで、「1人でも反対がいたら決められない」という考え方もあるようですが、多くの人が賛成していることであれば、多少反対意見があっても決めることは決めるという姿勢が大事だと思います。

 病気の診断にしても同じです。自分以外の医師がきちんとした根拠のある診断を下せば、それまでの診断にこだわることなく、「それはそうだね」と意見を変えられる臨機応変さが必要です。とはいえ、実際にはなかなか意見を曲げない人もいるのが実情です。

 本学では学部長の選考方法も、投票制は廃止して、学長指名制に変えました。各学部からの推薦というものもありません。あらかじめ私の方針を示し、各学部にどういう資質を持った人材を求めているのか 意見をもらい、私が候補者を提示します。その後、各候補者から出た所信表明をもとに、私が面談を行い、学部長を決定します。それに対する反対意見があれば聞きますが、最終的には私が決めます。

 他の大学では例がないことかもしれませんが、職員の皆さんもよく理解していただいて、スムーズに進んでいます。

 このように、大学改革を推進するために必要な学長のリーダーシップの確立や学内組織の運営・連携体制の整備、すなわちガバナンス改革は、非常に進んでいるのではないかと思います。

―「大分から地域創生」を掲げています。

 国は「一億総活躍社会」「地方創生」という方針を出しています。そのためにはまず、魅力のある大学をつくり、地域に人を残すこと。そして多くの人材が地域に残れるよう、自治体、企業などと協同で雇用を生み出すことだと思います。

 この地域の大学に若者が進みたいと思える分野が少なかったから他県に流出していた。彼らが望む領域をちゃんと作れば人材は残るし、逆に他県からも多くの学生が来てくれるでしょう。たとえ卒業して地元に戻っても、本学で学んだことをそれぞれの場所で生かしてほしいですね。

―国内外の腹腔鏡下手術における功績も大きいですね。

 きっかけは、1990年にアメリカで腹腔鏡下手術が始まったと聞いたことです。当時勤務していた済生会八幡病院(北九州市)の副院長に、その年の11月、2週間だけアメリカに行くことを許可してもらいました。

 帰国から2週間後、同院で西日本初の腹腔鏡下胆のう摘出手術を行ったんです。そのころは年間約780人に手術し、約500人が手術を見学に来ていました。

 あれから26年間、ただ一生懸命、患者さんのために治療を行い、研究を続けてきました。

 もともと、患者さんの体に優しい治療をしたいという思いがありましたが、昔は、「偉大な外科医は大きな傷跡をつくる」という考え方が強い時代でした。

 今は、腹腔鏡であれば小さな傷で済むし、広く明るくお腹の中を見ることができる。4Kのカメラになると目で見るよりはっきり見えます。

 テクノロジーの発達と、患者さんのQOL(生活の質)を尊重しようという時代の流れがうまく合致したことで腹腔鏡下手術は広く普及したのではないかと思います。

 本学医学部のミッションにも、「内視鏡外科などの低侵襲手術の研究・教育・人材育成」と書いています。最初に取りかかった者の責任として、安全に手術を進めるために、アジアを含め国内外の若い人たちへの教育にこれからも注力していきたいと思います。

―腹腔鏡下手術のための動物モデルによるトレーニングは日本初、同手術による胃の切除は世界初だったそうですね。

 腹腔鏡下手術を始めたころは、トレーニングキットなどありませんでしたから、動物モデルを使うことにしました。1991年7月、鳥栖市(佐賀県)の農協会館でトレーニングを行ったのが初めてです。それ以来、内視鏡を含め、さまざまなトレーニングを考案してきました。

 当時はまだ早期の胃がんでも開腹手術がメインでしたが、「腹腔鏡でもできるのではないか」と思って実施したところ、手術は非常にうまくいきました。術後の経過も良かったですよ。

 もともと新しいことを考えるのが好きなのでしょうね(笑)。

 4〜5年前には、αリポ酸を配合した脱毛予防ヘアトニックの研究開発に着手しました。これは、乳がん患者さんのために、医療ウィッグを手掛けるアデランスと共同で進めてきたものです。抗がん剤の副作用による脱毛、頭皮のピリピリした痛みの予防などの効果が期待されています。

 その他、胃がん手術の際に使用する薬剤の研究も、製薬会社のカイゲンファーマと共同で進めています。今年の冬頃に治験を開始する予定です。いずれも本学が特許を取得して医学部で研究開発を行っています。

―リーダーシップとは何でしょう。

 独断ではなく、明確なデータをもとに方向性を示し、それに集まる人たちとチームを作り、同じ目的に向かって事業を進めていくことです。

 自分ひとりで何かやろうと思っても難しい。資金とマンパワーが必要です。リーダーは組織の中だけでなく、外の人からの協力を得るための算段をしないといけません。そのためには、人とのつながりを大切にし、感謝すること。

 感謝することが人とのつながりをさらに強固にするはずです。

国立大学法人
大分大学 旦野原キャンパス

大分市大字旦野原700番地
☎ 097・569・3311(代表)
http://www.oita-u.ac.jp


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