地域になくてはならない病院に
―三菱重工業長崎造船所病院で5年間院長を務めた後の就任ですね。
三菱長崎病院では院長業務のほかに、消化器内科医として外来や検査などもしていました。消化器内科医としては、特に予防医療の充実に注力し、経鼻内視鏡検査をいち早く取り入れるなどの取り組みを行いました。
当院への就任が決まったのは、2015年7月。長崎大学病院消化器内科の中尾一彦教授からお話をいただいたのがきっかけです。
ここの職員や病院運営に、早く関わりたいと考え、その年の10月から週1回、この病院で内視鏡検査の担当医として仕事をするように。今年1月に特命副院長、4月には院長に昇任しました。
当院の柱となる重症心身障害児(者)医療をしっかりと継続していくとともに、地域の皆さんの成人病の予防にも力を入れたいと思っています。就任後、上・下部消化管内視鏡システムを最新機器に更新しました。今後、胃がんや大腸がんの検診受診者数も増やしていくつもりです。
―民間病院から異動して感じたことは。
グループは九州だけでも28施設ありますが、職員研修が充実していることには感心しました。私も、管理職として東京本部で2日間の研修がありましたが刺激を受けて帰ってきました。
―地域での役割は。
重度の重複する障害がある重症児の医療を中核としながら、一般小児科診療、子どもを取り巻く発達上の問題に対応した診療、心と体の問題に対応した診療も行っています。
病床数は280床。うち91床が重症心身障害者病棟です。
県内で重症心身障害児(者)医療を行う施設は、当院と、諫早市内の諫早療育センター、みさかえの園総合発達医療福祉センターの3カ所だけです。そのため、県内全域から患者さんがお見えになります。
また、特殊外来として重症児(者)を対象とした発達療育外来のほか、県内では数少ない発達外来やこども心療科外来を設けているため、こちらの受診も増加しています。
背景には、発達障害の子どもの増加があります。軽度の児童・生徒が通常の学級に在籍しながら各教科の補充指導などを別室で受ける「通級学級」という制度があります。ここで指導を受けている生徒が今年5月の文部科学省の発表では、初めて9万人を超えました。1993年と比較すると7・4倍に上るそうです。
発達障害の原因については、先天的な素因によるものが大きいということがわかってきました。社会環境の影響もあるようです。
当院の小児科医によると、親子の関わりが希薄だったり、逆に過剰だったりという親子関係の問題も背景にあるそうです。学校関係者からの相談も増加していますので、教育機関との連携も重要です。
また、当院には、地域包括ケア病棟も設けています。
脳血管疾患リハビリテーションⅠ、がん患者リハビリテーション、運動器疾患リハビリテーションⅠ、呼吸器リハビリテーション、障害児(者)リハビリテーションⅠなどの施設基準をクリアしています。
理学療法士9人、作業療法士8人、言語聴覚士2人と、リハビリテーション部門も充実させています。
急性期病院で初期治療を受けた患者さんを、在宅や後方支援病院へつなぐための役割も担っています。
―新病棟の建設が始まっていますね。
築44年が過ぎ、かなり老朽化が進んでいます。昨年9月、第1期工事として3階建ての「リハビリ療育棟」が完成しました。ここに発達外来の診療室を新たに設け、従来のリハビリテーションセンターも拡充して移設しました。
来年8月の竣工を目指し、5階建ての新病棟を建設する第2期工事が始まっています。古かった浴室を使いやすくするなど、患者さんに安心して過ごしてもらえ、看護師などのスタッフも仕事をしやすい環境を整備したいと思います。
―職員に日頃伝えていることは。
あいさつを大事にしてほしいと伝えています。当院の基本理念は、「地域になくてはならない病院として質の高い、あたたかい医療の提供をめざす」です。これを実践するためには、患者さんに対してだけでなく、スタッフ間のあいさつも大切です。
患者さんに対しては、「おじいちゃん、おばあちゃん」などではなく、きちんと名前を呼ぶようにということも徹底しています。基本的なことですが、患者さんの尊厳を守るという意味で、大切な行動の一つです。
―医師の教育にあたっての取り組みは。
着任直後に、月1回のカンファレンスを始めることができました。まずは、カンファレンス実施の提案をしたところ、みんなが賛同してくれ、自主的にやろうとまで言うようになりました。
当初は内科系の医師中心の会でしたが、今は看護部も交えて話し合う場にもなっています。
日頃忙しいので、お互いに顔を合わせる機会ができ、風通しのよい職場環境にもつながっていると思っています。
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長崎病院
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