長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野皮膚科・アレルギー科 竹中 基 准教授

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大学病院だからできる治療と情報提供を

岡山県立岡山操山高校卒業 1989 長崎大学医学部卒業1995 長崎大学医学部研究科皮膚科学博士課程修了1995 長崎大学医学部付属病院助手 1998 国立嬉野病院医長 1999 長崎大学医学部助手 2003 長崎大学医学部付属病院講師 2014 長崎大学大学院准教授

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―ご専門はアレルギーと真菌症。アレルギー性疾患は、昔に比べて増えているようですが。

 確かに、アトピー性皮膚炎・じんましん・薬物アレルギー・金属アレルギーなどの検査や治療で来院される方が増加しています。疾患そのものが広く認知されてきたことが理由の一つかと思います。また、昔に比べて部屋の密閉性が高まったことなど、環境の変化も関係しているのかもしれませんね。しかし、アトピーが増えた原因は、今のところはっきりと分かってはいません。

 最近の学会では、食物アレルギー関連の報告が増えているように思います。牛肉や納豆などに対するアレルギーの症例が報告され、話題になっています。15年ほど前までは、食物アレルギーというと、卵・牛乳・大豆が主でしたが、現在では、大豆から小麦に変わるなど、食生活の変化が大きく関係していることが分かります。

 また、妊娠中の食事制限は子どもの食物アレルギーの発症抑制には有効ではなく、食物アレルギーは、経口感作ではなく、経皮感染ではないかといわれています。乾燥した皮膚表面からは、アレルギー抗原が体内に入りやすくなるため、スキンケアをしっかりして、健康な肌を保つことがもっとも重要です。

―真菌症(水虫)については、いかがですか。

 「真菌」とは、ひと言でいえばカビのことです。中でも一番多いのは白癬菌(はくせんきん)による水虫です。これは、足のみならず、顔、頭、手、そけい部、躯幹(くかん・胴体)など、体のあらゆる場所で発症します。

 また、ヒトからのみではなく、動物からうつる水虫、ミクロスポルム・カニス(Microsporumcanis・動物に宿る白癬菌)による水虫もみられます。以前は、子どもへの感染例が多かったのですが、50〜60代の女性に多くみられるようになりました。ネコなどのペットから感染する菌なので、近年のペットブームが影響しているかもしれません。

 症状が足ではなく体に出ることが多く、かゆみを伴います。普通の湿疹として対応されがちで、悪化して皮膚科を受診し、検査によってわかることがほとんどです。

 いわゆる足の水虫の原因となる白癬菌は、ヒトに特化した菌が原因となることが多く、炎症を起こすことがなく、かゆみもほとんどありません。ところが、ミクロスポルム・カニス(Microsporumcanis)は本来動物の菌なので、ヒトの皮膚に感染した時に強い炎症が起きるのです。感染したら、本人だけでなく、ペットも同時に治療する必要があります。

―水虫の予防法は。

 最近は女性にも増えていますよね。見た目は水虫のようでも、実際には白癬菌がいないことも多いので、きちんと検査することが大切です。白癬菌がいるのといないのとでは、治療法も違います。水虫にステロイド外用剤を塗ると悪化します。また、水虫の薬でかぶれる場合もあるので注意が必要です。

 外用薬は、お風呂あがりに患部をよく拭き、よく乾かしてから1日1回、塗ってください。菌は足全体にいますから、症状が出ている場所だけでなく、足の全ての指の間と足底全体に塗ることも重要なポイントです。

 予防法としては、足をこまめに洗い、よく乾かすこと。ほとんどの菌の場合、体に24時間付着していることで感染を起こします。

 お風呂の足ふき用マットに菌がいた場合は、濡れた足をマットで拭き、そのまま靴下を履くと、足に菌が付着したままの状態になります。できれば部屋の中では、はだしで歩き回るのもよいかと思います。ただ、足に付いていた菌が床に付くことになるので、よく掃除をすることも大切です。

 微細な傷があると、そこから菌が入り込んで感染しやすくなりますから、ボディーブラシや軽石などでゴシゴシこすることは止めた方がいいですね。水虫になったことがある方は、症状が改善しても、予防の意味で週1回ぐらいは足首から下に外用薬を塗ることをお勧めします。また、病院で処方された薬はぜんぶ使い切っていただきたいですね。

―各分野のトピックスがあれば教えてください。

 2001年ごろ、外国から入ってきた白癬菌にトリコフィトン・トンズランス(Trichophytontonsurans)という菌があります。初めは高校のレスリング選手の間で感染し、次第に柔道選手の間にまで広がり、現在、患者の多くは高校の柔道選手です。高校の柔道部と一緒に練習する機会が増えた中学生、小学生の間でもみられるようになっています。ユニホームで覆われていない、頭、顔、首、躯幹などに、症状が見られますが、かゆみや炎症は軽度です。原因と対処法を紹介した冊子も出ていますし、学校(柔道部)での啓発活動も進んでいるようです。

 今までのアトピー性皮膚炎の治療では、症状が治るとステロイド外用剤の使用を止め、再発すると再開するといった方法で炎症をコントロールしていました。

 2016年、プロアクティブ療法とよばれる新しい治療法がガイドラインに載りました。これは、症状が治まった後も段階的に間隔をあけながらステロイド外用剤の使用を続ける方法です。ただ、アトピー性皮膚炎の皮膚症状の評価に精通した医師による治療、もしくはそのような医師と連携した治療が望ましいとされています。また、その際も、保湿外用剤によるスキンケアは継続することが勧められています。

 真菌治療においても、新しく爪の水虫専用の外用薬「クレナフィン」「ルコナック」の2種類が出ました。今までは内服薬しかありませんでしたが、これなら内服薬による副作用が心配されていた人にも使えます。1年間この薬を塗り続けることで、治癒率は約20%とまだまだ低い数字ではありますが、今まで治らなかった水虫も治るようになったことは、大きな進歩ではないでしょうか。

―今後どのような診療を目指されていますか。

 当科では、アレルギーは3人、真菌症は私一人で診療しています。私は25年間、本学で臨床に携わってきましたが、現在は入局した当時より、臨床工学士、看護師の数も増え、非常に仕事がしやくなりました。同時に、チーム医療によって物理的に楽になり、働きやすくなった分、医師の責任はより大きくなったとも感じています。

 これからも臨床を中心に、常に新しい情報を仕入れながら、開業医の先生方から紹介いただいた難治の症例などの治療にも積極的に取り組んでいきたいですね。

 大学だからできる先端医療の実施と情報提供、丁寧な説明を心掛けながら、患者さんに満足してもらえる診療を続けていきたいと思います。

長崎大学病院
長崎市坂本1丁目7番1号
☎095・819・7200(代表)
http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/


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