福岡大学医学部 神経内科学 坪井 義夫 教授

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臨床力を持つ神経内科医を

桐朋高校卒業 1986 千葉大学医学部卒業 同年同大付属病院内科臨床研修医 1997 福岡大学病院神経内科・健康管理学科助手 2000 米国・Mayo Clinic, Neurology留学 2005 福岡大学神経内科学教室 准教授 2011 同教授 2015 福岡大学病院副病院長(兼任)

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―神経内科における疾患の特徴は。

 神経内科で扱う疾患は頻度の高いもので脳卒中、認知症、パーキンソン病などがあります。高齢化に伴いてんかん患者も増加しています。神経内科はそれぞれ疾患の患者数が増加しているだけでなく、疾患の種類が多いのも特徴です。そのため脳卒中、認知症、パーキンソン病と、それぞれのサブスペシャリティーの専門医が必要ですが、患者数の増加に対して、相対的に神経内科の医師が少ないのが実状です。

 また認知症は国内だけでなく世界的にも社会問題となっています。それだけに近年、神経内科がより重要な位置付けになっていると思います。

―教授就任5年目。患者数は、どの程度増えていますか。

 2010年度と2015年度で当科の入院患者数を比較すると、約1・5倍の増加です。福岡大学病院内科全体の新患患者数でも神経内科は常に1、2位を争っています。

 最近は特に、地域のかかりつけ医の先生方からの紹介患者数が確実に増加しています。高齢化で神経内科の患者さん自体が増えているという背景もありますが、当科の診断や治療の実績が、地域の先生方に伝わってきたということも、理由の一つだと思います。

 特にパーキンソン病の患者数は、福岡県内随一で、現在約500人をフォローしています。また、当院の脳神経外科は外科的治療すなわち脳深部刺激術に積極的に関わっており、神経内科・脳神経外科合同カンファレンスも行われています。それも強みの一つであると思います。

―認知症の治療に対してはどのような特徴が。

 厚生労働省は、認知症に対する専門医療の提供や情報発信、医療連携などを目指し、全国各地に「認知症疾患医療センター」の設置を進めています。当院は、2014年11月、市内2カ所目となる「福岡市認知症疾患医療センター」の指定を九州大学病院(福岡市東区)に次いで受けました。

 現在、2病院が役割を分担して、地域の認知症疾患連携に関わっています。私たちは、早期診断・治療が主な役割で「もの忘れ外来」を設けており、医師と臨床心理士が診断や治療にあたります。

 また、認知症医療相談窓口も同時に開設しました。認知症看護認定看護師や精神保健福祉士が、患者や患者家族からの相談にいつでも応じます。

 併せて、当院のもの忘れ外来は神経内科と精神神経科が連携して行っており、定期的にカンファレンスを行うのも当院ならではの特徴です。精神科は精神症状に強く、神経内科は神経症状をしっかりとるので両科が互いに意見を出し合うことで、診断はより精度の高いものになると考えています。

―パーキンソン病や認知症は介護面などで家族にも影響があります。

 認知症やパーキンソン病と診断され、悲観的に考える方もいますが、決してそうではありません。患者さんの人生の質を維持するために、家族や医療者がチームとなってサポートすることで、自分らしい時間をより長く保てると思います。

 そのためにも早期診断は大変重要です。幸いなことに、特に認知症は、ニュースなどで取り上げられ関心も高く「何か様子が変」とご家族が気づいて、早い段階で来院される方が増えています。

 早期に、より正確な診断をすることで、その後症状の進行を抑えることも可能で、介護者のより良い対応が負担を軽くすることにもつながります。

 認知症の大切な情報は、かかりつけ医の先生方にもぜひ知ってほしいと考えており、医師会などと連携しながら、情報を発信しています。

 また、パーキンソン病や認知症は、医療機関だけでなく、行政や地域社会全体で当事者や患者家族をサポートしていく必要があり、患者やその家族を孤立させないためにも、患者会の活動は大変重要です。全国パーキンソン病友の会福岡県支部、レビー小体型認知症の患者会は、私が顧問医となり、良い連携が取れていると思います。

 会員は当事者よりその家族の方が数も多く、情報交換や交流を行いながら支え合っています。

―講座の目標は。

 「臨床力」の高い神経内科医を育てることが第一目標です。的確な診断を下し、疾患の症状を積極的にマネジメントできる若い優秀な医師を育てることが課題です。

 そのためには、患者さんとの話の中から情報を読み取ること、患者さんの頭の先からつま先までよく観察して異常に気づくことや、他にどんな情報が必要かを考えて適切な検査を迅速に行うこと、医師としての〝感性〞を常に磨く必要があると思います。

 その〝感性〞こそが〝臨床力〞だと私は考えており、それらの力を養う教育をするのがわれわれ指導者の役目です。さらには、神経内科医を目指すためには何を学ぶべきかという、正しい道筋を示すことも、指導者が果たすべき重要な責任です。

―研究面は。

 現在、リハビリや食事、ライフスタイルなどのトータルケアによってパーキンソン病の進行を食い止める研究を本学スポーツ科学部と連携し進めています。実践できる具体策を、将来的に発表できると思います。認知症も運動療法や生活指導、栄養素の点から、社会とのつながりを継続させ、より良い「付き合い方」を研究しています。

 神経疾患全般の嚥下に関しても適切な時期に評価を行い、肺炎の予防に取り組んでいます。

 家族性のパーキンソン病Perry 症候群の研究にも、留学した時から取り組んでいます。これは常染色体優位遺伝型の疾患で、これまで世界で17家系が確認され、そのうち日本では5家系と比較的多いのが特徴です。原因となる遺伝子の探求を目的に国際共同研究を進め、2009年にはダイナクチン遺伝子(DCTN1)が原因遺伝子であることを突き止めました。今後も病態解明、治療に向けて研究を深めていきます。

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福岡大学病院
福岡市城南区七隈7丁目45番1号
☎092・801・1011(代表)
http://www.med.fukuoka-u.ac.jp/in_healt/index.php (神経内科)


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