地域のリーダーとなる医師の育成を目指す
6月30日(木)と7月1日(金)の2日間にわたり徳島市で「第11回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会」が開催される。学会長を務める武田憲昭・徳島大学耳鼻咽喉科教授に話を聞いた。
―小児耳鼻咽喉科の特徴は。
小児の病気は主に小児科が担当しますが、小児の頭頸部の病気は耳鼻咽喉科が担当します。小児に多い耳鼻咽喉科疾患は、中耳炎や扁桃腺炎ですが、大学病院の耳鼻咽喉科は、地域医療の最後の砦(とりで)です。
当科では、徳島県に出生した難聴児を早期に発見して診断し、補聴器や人工内耳などによって言語を獲得させる治療を行っています。また、小児の気道管理も重要で、小児の睡眠時無呼吸症候群の診断と治療も行っています。小児耳鼻咽喉科は、耳鼻咽喉科における重要なsubspecialty ですが、私が徳島大学に着任したころは、小児耳鼻咽喉科を専門とする医師は四国にほとんどいませんでした。当科で小児耳鼻咽喉科専門医を育成し、関連病院に派遣することができるようになりました。日本小児耳鼻咽喉科学会は、研究会の時代から数えると約35年の歴史がありますが、今回、四国で初めて本学会を開催します。当科が徳島県において難聴児を支える連携を構築し、小児耳鼻咽喉科の臨床と研究を推進してきた実績を評価していただいたものと、大変うれしく思っています。
第11回の本学会では、日本赤ちゃん学会理事長で、同志社大学赤ちゃん学センター長の小西行郎先生に、特別講演「子供の精神運動発達:生体機能リズムと発達」をお願いしています。
シンポジウムでは、「学校保健における耳鼻咽喉科医の役割」と「小児の嚥下(えんげ)障害への対応」を取り上げます。4つの教育セミナーに加えて、臨床セミナー、ランチョンセミナーなども予定しています。全国から約300人の会員が参加する予定で、懇親会では有名連の子どもたちによる阿波踊りをご披露する予定です。
―高齢出産が増加しています。難聴児の増加など影響はありますか。
先天性難聴は、子どもの先天性異常の中でも最も多い疾患の一つで、1000人に1人の割合で生まれると言われています。高齢出産もリスクの一つです。徳島県では年間約6千人が出生していますので、毎年6、7人の難聴児が生まれます。
県内の難聴児は新生児聴覚スクリーニングとその後の精密検査により難聴を早期に発見し、徳島聴覚支援学校と徳島大学病院耳鼻咽喉科の小児難聴外来が連携し、難聴児の療育を行っています。
難聴児を早期に見つけるためには、「新生児聴覚スクリーニング」が有効で、徳島県のほぼ全ての産科で実施しています。この検査は、赤ちゃんが眠っている状態で実施できます。小さな音を聞かせて聴性脳幹反応という脳波を測定し、耳の聞こえが正常かどうかを自動的に判定する検査です。要精密検査と判定された場合、徳島県の精査機関である4病院で精密検査を受けます。そこで難聴と診断された場合には、当科の小児難聴外来に紹介されます。日本では残念ながら公的補助はありませんので、新生児聴覚スクリーニングは自費となります。
徳島県では、行政や医師会と連携し、「新生児聴覚スクリーニングと聴覚障がい児支援のための手引き」を作って小児科医、耳鼻科医、産婦人科医に配布し、ご両親への啓発も行っています。
―貴講座の概要は。
現在、大学勤務は8人のスタッフ、7人の医員、2人の診療支援医師で臨床と研究を行っています。徳島大学病院は、昨年9月に新外来診療棟をオープンしました。これに伴い、耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来の診療機器を更新し、6室全ての診察室に電子内視鏡、診察用顕微鏡とモニター、赤外線眼振画像装置を配置しています。手術は、週に8〜10件の全身麻酔手術を行っています。最近増加している頭頸部悪性腫瘍に対しては、積極的に手術治療を行い、再建術を必要とする場合は、当院の形成外科や消化器外科と共同手術を行って、根治性の向上を目指しています。化学放射線治療は、放射線治療科と毎週カンファレンスを行い、治療方針を検討しています
―どのような人材の育成を目指していますか。
地域の医療を支えるリーダーとなり得る医師を育成しています。まず、耳鼻咽喉科専門医や指導医を取得し、次に専門医や指導医を育てる医師になって欲しいと考えています。同時に、国際レベルの質の高い医療を目指すように指導しています。また、国際レベルの研究を行い、医学博士を取得するだけでなく、医学の進歩に貢献できるように指導しています。
国立大学法人 徳島大学大学院医歯薬学研究部
徳島市蔵本町3 丁目18 番地15
☎088・633・9116(代表)
http://www.tokushima-u.ac.jp/hbs/