エリアマネジメントで地域を支える
1958年に大阪市西淀川区の小さな診療所からスタートした社会医療法人愛仁会。現在は大阪府と兵庫県にまたがる広域でヘルスケア事業を展開。このうち高槻エリアでは高槻病院を基幹に置き、老健施設や介護保険施設、健診予防施設を有する北摂地方屈指の医療グループへと成長した。
愛仁会高槻エリアでは法人内外の地域医療・福祉資源を統括してマネジメントする構想を進めている。前・高槻病院院長の家永徹也・高槻地区エリアマネージャーを中心に話を聞いた。
内藤=高槻市には市民病院がありませんので、当院は市民病院的な役割を果たしてきました。加えて、近隣には大阪医科大学と大阪府三島救命救急センターの3次救急があり、当法人の関連施設や病院も含めると、地域医療のクラスター(集合体)構成要素が潤沢です。
地域医療構想で高槻病院の果たすべき役割は明確で、高度医療領域では大学病院などとの連携を強化し、法人内の垂直統合で地域包括ケアの中心的役割を果たすことに集約されると思います。
さらに、地域の救急医療でも質・量ともに中心的役割を担っており、高槻市は救急の97%を市内で収容できますが、そのうち27%が高槻病院に搬送されています。
そういう現状や急激な高齢化という社会状況を前提としたうえで、ではわれわれはどこへ向かうべきなのか、何に向き合うべきなのかを考えたときに、高槻病院単体で考えるべき事柄ではないという結論に達しました。愛仁会は理念であるトータルヘルスケアを実現するために、それぞれの機能に応じた施設を立ち上げてきましたが、言ってみればこれは、現在提唱されている地域医療構想や地域包括ケアの先取りと見ることもできるわけです。
今回、新設したエリアマネジャー(AM)は、そういった法人内外の施設の地域連携を統括する役割に特化し、法人の人事や予算も含めてエリアが抱える問題点や課題を洗い出して管理、解決する役割を担います。
家永=急性期病院にとっての地域連携とは、これまではいわゆる後方連携を指しました。しかし、後方連携だけでは地域の役に立たないことが実際には多いのです。高齢者ほど合併症も多く、介護施設などでは骨折や肺炎になることもありますので、どの時点で介護や在宅療養へいけばいいのか、急性期に来てもらうのか、それをうまく「トリアージ」しなければなりません。これが可能になれば、高槻病院の急性期機能を最大限に発揮することもできます。
さらに、法人としての施設には限りがありますので、この地域の他施設や行政、医師会などとも連携を構築しながら、患者さんの視点に立ったうえでケアの全体の流れを作っていきたいというのが最終的な狙いです。前方から後方への直線的な連携ではなく法人内外をサークルとして捉え、循環させるイメージですね。
川本=病院の地域医療部が、複数の施設との連携や開業医との連携業務を行ってきました。
他ではあまり見ない陣容だと思いますが、高槻病院の地域医療部には34人の常勤スタッフを置いています。事務以外にも看護師6人、ソーシャルワーカー(SW)8人、臨床心理士が4人いますので、今後は以前からそのメンバーで地域連携に取り組んでいた内容をエリア(地域)で成長、発展させていきたいと思います。
家永=医師と看護師だけでは社会のさまざまなニーズを捕捉できないため、介護や在宅の調整にはSWが最適です。
急性期病院である高槻病院では在院日数の短縮化が要求されており、機能分化して早期退院を促すのであれば、その後をどう支援するのかという調整が必要になります。それぞれの患者さんは多様な課題や問題を抱えていますので、網(ネット)を複数張り巡らせて、可能な限り患者さんの要求には応えてあげたい。
愛仁会の施設だけでは限られた範囲内のエリア構想になりますので、高槻地域の愛仁会以外の医療・介護施設とも連携を深め、そして医師会や行政の方々からのご指導をいただきながら、地域全体での「エリアマネジメント」に発展させたいですね。
今回、AMという制度を作りましたが、エリア(地域)全体でものを見て、考えようというのは、要するに患者さん本位を徹底しようということなんです。これまでは法人内のスタッフ同士ですら面識も交流もないことが多かったのです。今後はその壁を壊して、お互いに顔が見える形で「すべては患者さんのために」という熱意や思いを共有していきます。
社会医療法人愛仁会 高槻病院
高槻市古曽部町1 丁目3 番13 号
☎072・681・3801(代表)
http://www.takatsuki.aijinkai.or.jp/