一般財団法人 日本尊厳死協会理事 白井 正夫

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

リビングウイル時代 ⑧「加齢」という〝連鎖球菌〞

k15-2-1.jpg

 「費用約1億円は数分の一に減らせます」と聞いて、それでも医学の進歩も酷なものよとつぶやいた。iPS細胞からつくった網膜を使う加齢黄斑変性の治療が新段階に入った話である。

 失明の恐れを抱え、全国に70万人いると推計される加齢黄斑変性患者への朗報を6月5日、理化学研究所と京都大学チームが発表した。健康な他人の良品質の細胞からつくったiPSストックを使う革命的な治療が来年から始まるというのだから喜ばしい。

 1億円は、患者自身のiPS細胞を使った1例目(2014年)の移植費用。「ストック」なら培養や検査費用も大幅に減らせるから「数分の一」というが、暗算してみても庶民にはまだ縁遠い数字だ。それを「酷」というのは、私も70万人の1人だからだ。

 4年前、前立腺がんの手術を受けたあと、尿の出をコントロールする薬を服用した。将来、緑内障薬と併用すると副作用もあり得るというので、念のため眼科クリニックへ行った。意外や〝加齢病〞が発見された。

がん体験に加え加齢黄斑変性も

 加齢黄斑変性のニュースで紹介される東京タワーがぐにゃぐにゃ曲がることはないが、少しの自覚はあった。前立腺がんの方もそうだが、私の体内にはどうも「加齢」という〝連鎖球菌〞が活動中らしい。

 高齢者の病には「トシだから」とか「加齢により」が付きまとう。

 前立腺がんの告知を受けたときもそうだった。医師は「白井さんのおトシから考えて、何も治療をしなくても平均寿命は生きられますよ」と言ってくれた。当時の男性平均寿命は確か79歳台だったから、暗算して「余命はあと6年か!」としんみりした。

 顔つきが悪いがん細胞だったので、告知を受けた病院は諸検査だけで切り上げ、がん専門病院に駆け込んだ。平均寿命はともかく、悪相にきちんと始末をつけてやろうと思ったからだ。間もなく、術後5年目にはいる。いま男性の平均寿命は80歳台に伸びたから、少なくともあと4、5年はがんばらないと手術に申し訳ない。

iPSの恩恵が長寿構図崩すのか

 さて病名自体に「加齢」がつく加齢黄斑変性。大学病院に駆け込んだら眼底の新生血管の活動を抑える薬物治療で硝子体内注射が待っていた。ひと呼んで〝目ん玉注射〞である。

 これが目ん玉が飛び出るほど高額だ。私の場合、高額医療費補助を利用しても、3回1セットの注射代の支払いが13万円超。それを5セット施してようやく新生血管の活動が落ち着いた。iPS治療と違い、治ることはない。

 長寿大国ニホンは、医学や医療技術の進歩と国民皆保険制度がもたらした。それを脅かすのも長生き、つまり果てしない加齢による病気なのだが、iPSの恩恵がこの構図を崩す時代がくるのだろうか。

 iPS細胞が自分に回ってくることは考えにくいが、「人生の最終段階」への備えはしている。がん病院にも大学病院眼科にも初診時に「私は尊厳死協会の会員です」と伝えてある。医師がそれをカルテに記入した(PC画面に打ち込む)のをしかと確かめてある。

■一般財団法人 日本尊厳死協会=東京都文京区本郷2の27の8の501
☎03・3818・6563


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る