全国、世界から学びにくる教室に
7専門外来で対応研究も幅広く
【臨床】最も専門とするのは自己免疫性の水疱(すいほう)症です。それからメラノーマ(悪性黒色腫)を主とする悪性腫瘍および皮膚外科、アレルギー、乾癬(かんせん)、レーザー、脱毛症、遺伝子疾患、これらはそれぞれ専門外来があり、すべてに対応しています。
水疱症は全国の血清が集まります。メラノーマも筑後平野の患者さんはすべて当科に集中します。アレルギーもパッチテスト専属の医師が3人いますので、周囲の医療機関からも検査の依頼がきます。乾癬も適応となる全ての生物学的製剤を扱っているため、重症な患者さんが紹介されてきます。
「ヘイリーヘイリー病(家族性良性慢性天疱瘡)」や「母斑性基底細胞癌症候群」などの遺伝子疾患は20種類以上取り扱っています。まず本人に話をし、子どもや家族きょうだいにどう伝わっていくかを踏まえて治療や指導をしていく。将来的には遺伝子治療に結び付けていきたいと考えています。
【研究】臨床に準じた分野が多く、自己免疫水疱症、アレルギー、遺伝子疾患が3つの柱です。
最近、当教室の医局員が、接触皮膚炎(かぶれ)の機序を解明し、本邦で最高の「皆見省吾記念賞」(2015年度)を受賞しました。かぶれは原因となるものに初めて触れた際、次にきたら病変を起こそうと準備する「感作相」という段階があります。その後、繰り返して原因となるものに触れた後「惹起(じゃっき)相」を介して、症状が出ます。その惹起相における新しい発症機序の概念を解明しているのです。
また、後天性表皮水疱症(EBA)のモデルマウスを使い、PDF4阻害薬の治療効果をドイツで研究してきた医局員もいます。まだまだこれからですが、スタッフを集め、研究に幅を持たせて、いずれは他大学、他の国からも多くの人が研究に来れるような施設にしたいという夢もあります。
【教育】忘れてはならないのが、地域に貢献できる医師をつくること。地域で活躍できる実力と同時にハートも育てることが必要です。
今はいろいろな患者さんがいらっしゃいます。相手がどんな方であろうと、接し方次第で、まったく問題が起こらなかったり、トラブルを招いてしまったりする。重要なのはコミュニケーションです。昔と同様、「先輩の背中」を見て、常に指導されるのと同時に、自ら積極的に学びながら成長していくしかありません。特に皮膚科は目に見える病気を扱う診療科です。患者さんに真正面から説明し、信頼関係を築いていくことが大切です。
皮膚科はおもしろい
皮膚科医になったきっかけは父です。父は皮膚科医で琉球大学の初代皮膚科教授。私が医学部4年か5年だったころ、「ついてこい」と誘ってくれ、外勤先の救急センターなどに一緒に連れて行ってくれました。
当時は教授といえども外勤先として救急センターに行っていたんです。そこで、開放骨折の患者さんの骨の処置が終わった後、父が植皮術をしていたわけです。1週間後、その患者さんの様子を見に行くと、見事に、植皮片がすべてきれいに生着していました。
当時の私は、外科に興味がありました。しかし恥ずかしながら、皮膚科が手術をすることを知らなかったのです。そのときの驚きと感動が皮膚科に進む大きな理由の一つになりました。
父は皮膚外科学を実践する一方で、真菌の研究もしていました。単身赴任していた父の部屋の冷蔵庫内にはたくさんの培養したカビ。「これも仕事。興味あるカビはなんでも培養する」と。「ここまでやるのか」と思いましたね。
結局、久留米大学の皮膚科に入りました。父は琉球大学に誘ってくれましたが、「ボスの下に息子がいたら、教室員は気を遣う」と断って、別の大学の教室に。しかし、父のおかげで多くの先輩方と出会うことができ、今でも多くの事を学ばせていただいています。
皮膚科はおもしろい科です。研究分野が広くて、とことん突き詰められる。研究を習慣にすると、それが臨床に結びつきます。ごまかしがきかない科であることも魅力です。治ったか、治ってないかが、患者さんに一目瞭然ですから。
今は、医局のさらなる実績と安心して仕事に集中できる環境を作りたいと思っています。謙虚に、そして、どこに出しても恥ずかしくない人材を育てたい。一人一人を大切に、それぞれが目指す医師像を尊重するためにも、医局員の話をよく聞くように心がけています。
久留米大学医学部皮膚科学教室
福岡県久留米市旭町67
☎0942・31・7571
http://kuruhifu.com/