医療安全を病院の核に置き、地域との密接な連携を進める
4月に新病院長に就任。地域との医療連携について聞く
―医療の地域連携はどうあるべきでしょうか。
最初に考えなければならないのは患者さんの利便性で、地域において継続した適切な医療を受けられるようにするために医療機関がどうあるべきかということです。
すなわち、地域医療連携とは、地域の医療機関が自らの施設の機能や規模、特色を把握することが前提になります。そのうえで、地域医療の状況に応じて医療の機能分担や専門化を進め、各医療機関が相互に円滑な連携を図り、それぞれが持つ機能を有効かつ迅速に活用することが必要だということです。
そのなかで当院の果たすべき役割とは、大学病院として先進医療を推進することであり、さらに安心、安全な先端医療を提供することになるでしょう。当院は特定機能病院であり、高度専門医療を提供する拠点病院やセンターとしてさまざまな指定を受けています。これを十分に運営することで地域医療の中核的な役割を担っていかなければなりません。
とくに、高度専門医療については治療を必要とする患者さんがたくさんいらっしゃいますので、病院機能の効率化を図る必要があります。そのためには在院日数の適正化を進め、退院調整機能を充実させる必要があり、来年には入退院支援センター(仮称)を設置する予定です。
―近年では予防医学も重視されています。
2014年、JR天王寺駅に接続する「あべのハルカス」21階に、MedCity21 を開設しました。
ここは、健診事業を行う先端予防医療部附属クリニックで、公立大学法人として初めて設置しました。当院が有する研究・解析力をいかして、健康(未病)状態から病気へと移行する因果関係を探り、それに基づいた新診断法や治療法、バイオマーカーを開発して予防医療の推進に寄与するという目的のもとに設置されています。
さまざまな先進的取り組みを進めていますが、病院としてもっとも気を配るべきは医療の安全です。医療安全と先進医療、地域医療の3つをベースに置いたうえで、できれば経営面でも健全化したいのですが、どうなるでしょうか(笑)。すべての職員と協力して、患者さんのお役に立てるよう、尽力していきたいと思います。
市大病院の地域連携
●がんパスの運用
術後の在宅療養環境を整備・充実させるために、乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんのパス(治療計画書)を運用。
●Face to Face の会
市大病院が提唱、地域医師会を結ぶ医療連携・ネット。症例呈示やミニレクチャーを通じて最新治療法の紹介や症例検討を行い、顔の見える地域医療連携を構築。
世話人会には、大阪市南部地域の7地区医師会代表者(阿倍野、住吉、東住吉、住之江、平野、西成、浪速)が参加。外部世話人として地域医療連携の強化に努めている。年3回程度開催される会合には毎回70人程度が参加する。
●医療連携登録医制度
現在、154人の登録があり、紹介・逆紹介の強化を行っている。医療連携登録医ならびに患者さんの利便性を向上させるために、医療連携システムの稼働準備を進めており(7月稼働予定)、医療連携登録医がインターネットを通じて診療予約枠を取得することが可能になる。
安心の医療ネットワーク
地域の医療機関とも密に連携し、治療などのフォローアップを実践。
▶ MedCity21 では、大学病院の人材と高度先進医療を生かした健診と診療を実施。おもに5大疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、精神疾患)や生活習慣病の早期発見・早期治療を行う。ほかに、レディースクリニック(産婦人科・皮膚科)など、特色ある専門外来も併設する。同施設内の 人間ドックで疾患が見つかった場合は、大学附属病院や地域医療機関と連携し、早期治療に向けたフォローを行う(HP より抜粋)。
大阪市阿倍野区旭町1-5-7☎ 06-6645-2121(代表)http://www.hosp.med.osaka-cu.ac.jp/