80余年の歴史の岩屋病院が新築移転
「快適な療養環境を最優先に」
2016年4月、80余年の歴史のある岩屋病院が、旧病院の近くに新築移転した。竣工あいさつで小林朝隆理事長は、「各病室は患者様の快適な療養環境を最優先し、地域に開かれた病院として、医療・介護・福祉の連携を深め、地域医療の充実に努めたい」と述べた。また震災など非常時での近隣のライフライン保持に寄与できる施設であることも紹介した。小林理事長を訪ねて話を聞いた。関原事務長が同席した。
当院はこの地で1934(昭和9)年に開業して82年の歴史があり、地域のセーフティーネットとしての役割は変わっていません。
当時、精神科の病院は愛知県に1つか2つしかなく、その時代に私の祖父、小林辰男がつくったのが岩屋病院です。当初は代用精神病院という呼称だったようです。
そのころはのどかなもので、入所者が農作業をしている写真が残っています。そのような雰囲気がずいぶん長く続き、患者さんが農機具を持って行列で歩いて畑作業をするといったような昭和の時代が最近まで残っていました。このあたりは昔から農業が盛んな土地柄で、ちゃんと働けるようになれば地域に帰っていただくといったような作業療法が最近まで続いていたんです。この新しい施設の建っている場所が、当時の畑があったところです。
旧病院はかなり開放型でした。出入り自由で、朝の6時半くらいから外出するような人もいました。時代の流れの中で、7年くらい前から病床の削減も含めて方針を変えてきて、最大時には7病棟500床くらいあったのを徐々に減らし、今は325床です。
今後は認知症の方に対して、施設対応が難しければ、当院に短期間入院していただくというような支援がもっと求められるかもしれません。かなり激しい周辺症状の出る方は、認知症の方の3%くらいかもしれませんが、ここにはそのような方しか来られませんから、なかなか難しい面もあります。こんな時代になるとは誰も予想できませんでしたからね。
患者さんの就労支援については精神保健福祉士で部門を構成し、あるいは「ラベンダー」というグループホームをつくって、当院を退院したあと住居での生活が困難な方に生活支援を行っています。そこからデイケアや学校に通い、また、病院でアルバイトするような環境もつくっています。
※ダルク=DARC▼ドラッグ(DRUG= 薬物)、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)、リハビリテーション(Rihabilitation= 回復)、センター(CENTER= 施設、建物)の頭文字を組み合わせた造語で、覚醒剤、有機溶剤( シンナー等)、市販薬、その他の薬物から解放されるためのプログラムを持つ民間の薬物依存症リハビリ施設。
さらに、覚醒剤や大麻など薬物系の依存症を対象とした認知行動療法を用いた勉強会・イワープ(IWARPP=IwayaAlcohol & MethamphetamineRelapse Prevention Program)を、ダルク(※)のバックアップで2014(平成26)年より行っています。最近は中学生が使用するなど、薬物汚染が広がり、低年齢化もしていますからね。勉強会にはいろいろな年代の方が参加しますが、来る人は立ち直ろうとする気のある方で、来られない人は薬物のほうにスリップしている可能性がありますから、住所がわかっていればできる限り訪問しています。
精神科医として健康法を助言するなら、「酒とたばこは避けるにこしたことはない」ということです。「適量」というのも疑問ですね。
ほかには、一日の歩数や睡眠時間を、スマートフォンの管理機能を使って、チェックしたほうがいいと思います。ただ、歩くだけでは上半身が運動不足になりますから、そこらにも気をつけたほうがいいでしょう。