地域の在宅医療を支える一助に
■専門医/日本内科学会認定医日本消化器病学会専門医日本肝臓学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医
―貴院の概要は。
1946(昭和21)年に、当地に開院して今年で70年を迎えます。外来では、内科と外科を中心に整形外科、皮膚科の診療を行い、消化器、呼吸器、循環器、糖尿病、神経内科、乳腺などの専門外来も設けています。
2013年の新病院開院後は、消化器内視鏡センターを併設。2014年5月には病棟を再編し「急性期病棟」「地域包括ケア病棟」「療養病棟」の3つに機能分化しました。
名古屋市南区には中京病院と大同病院、隣接する瑞穂区には名古屋市立大学病院という、それぞれ急性期の病院がありますので、当院は、それら急性期の病院と、在宅診療を行う診療所との間の病院としての役割を果たしています。
地域包括ケア病棟の在院日数は60日間ですので、その間にリハビリなどを行い、在宅復帰を目指します。在宅医療に関しては、基本的に、地元のクリニックや在宅診療所にお願いしたいと考えています。
昨年10月、名古屋市医師会の「在宅医療・介護支援センター」が当院の1階に開設されました。
これは名古屋市内全16区それぞれに名古屋市医師会が設置したもののひとつで、医師会から職員が派遣されて業務を担っています。今後、同センターが、南区の開業医の先生方を支えていくことを期待しています。
―センター開設に早くから貢献されたそうですね。
名古屋市内での在宅医療と介護連携は、2013年度、厚生労働省の在宅医療連携拠点事業で、大幸砂田橋クリニック(東区)が拠点として採択され、モデル運用されたことに始まります。
2014年度には、愛知県在宅医療連携拠点推進事業(県補助金)、名古屋市在宅医療・介護連携推進事業(市委託)の新たな事業の拠点として、かわな病院(昭和区)、古山医院(中村区)、そして当院の4つの区の医療機関にモデル事業が拡大されました。
今年4月からは、市内16区すべてにおいて「在宅医療・介護支援センター」の運営が始まったのです。
南区は、名古屋市内の中でも、特に高齢化が進んでいたこともあり、当院の片桐健二副院長は、いちはやく在宅医療の重要性を名古屋市医師会に働きかけてきました。
―地域包括ケアシステムを構築する中で、地域で果たす役割がいろいろありますね。
当院は、名古屋市内に31ある名古屋市医師会の病診連携システム関連病院の1つでもあります。このシステムは医師会が、市民にかかりつけ医(主治医)を持つことを提案したもので、1985(昭和60)年にスタートしました。そのかかりつけ医が紹介する病院として、南区では大同病院、中京病院そして当院の3つが挙がっています。
当院と大同病院や中京病院との連携は以前から密で、2018年度にスタートする新専門医制度の「総合診療専門医」研修プログラムの中で、当院は大同病院の関連施設に予定されています。在宅医療支援病院、二次救急病院という機能もありますから、基幹病院では学べない総合診療医としてのノウハウを学ぶことができます。
2016年度には、名古屋市の認知症モデル病院にもなりました。近年は、認知症がある高齢の患者さんが肺炎で入院してくるというようなケースも多く、その場合、認知症の専門医がいなくとも対応できるシステムが必要です。
このため、名古屋市では、病院の医師、看護師、薬剤師など他職種のチームが認知症の患者さんのケアをサポートするというプログラムがモデル事業として始まりました。NTT西日本東海病院(名古屋市中区)、掖済会病院(中川区)と当院の3病院がモデル病院に選ばれました。次年度、各病院がそれぞれ3つの病院に指導。指導を受けた病院もまた3つの病院に指導、と広げ、最終的には名古屋市内のすべての病院にこのノウハウを伝えるのが狙いです。
このようなシステムが広がれば、認知症であるがために他の病気になっても治療のために入院できないという不具合はなくなるでしょう。住み慣れた地域の病院で診ることができるということは、住民の方や在宅の開業医さんへの貢献にもつながると思います。
2014年からは、機能強化型の在宅療養支援病院として、在宅医療を推進しています。在宅診療所と在宅支援病院がチームを組んで在宅医療を担うシステムで、当院が在宅支援病院。現在5カ所の診療所と連携を結び月1回のカンファレンスを行うなどしています。
今後、地域包括ケアシステムの中で、高齢者を地域で診ていくためには、急性期でも在宅でもない、当院のような中間病院が果たす役割は決して小さくはないと思います。
私自身は消化器内科の医師です。例えば肺炎などで絶食の期間が長くなると、どうしても腸管の機能が衰え、消化機能も低下し、自身で食べることが難しくなります。食べることが難しくなると、在宅への復帰も困難になります。ですから、いかに絶食の期間を短くして、食べる機能を維持し、在宅へ帰っていただくかという課題を解決したいと思っています。