地域を支える構想を20年で具現化
■役職/岐阜県病院協会理事 岐阜県医師会理事 多治見市医師会会長(2016 年5 月より)多治見市医師会准看学校校長(2016 年5 月より)岐阜県老健協会理事多治見市体育協会 会長
ー高齢化を支える病院などを展開されています。
当法人が経営するタジミ第一病院は、1984年、現在地から5㌔ほど離れた多治見駅近くの多治見市十九田町に80床の病院として開院しました。1986年に、杉山正憲・前院長が人工透析を開始しましたが、それが後にこの病院の大きな特長となります。
私は、名古屋大学医学部を卒業した後、米国で腎臓移植などを手掛けていました。帰国後の1991年に、名古屋大学経由で依頼があり、理事長に着任しました。
私が着任したころ、ここはすでに内科、外科などを行う「高齢者のための病院」として運営されていました。しかし、当時は、現在ほど高齢化も進んでいなかったためか、高齢の患者さんへのケアの知識や技術が確立されておらず、褥瘡(じょくそう)で困っている患者さんがいるなど、現場には課題もありました。
そのような現場を見て「このままではいけない」と、模索が始まりました。まずは自分ができることからと考え、高齢者への透析に注力することにしました。始めた当時、透析の患者さんは10人程度。しかし、透析のために手首付近の静脈と動脈をつなげる「シャント手術」を私が手掛けると、それが評判を呼び、紹介患者さんが年々増えていきました。
現在は200人ほどの患者さんが透析のため通院されています。
ー法人内には施設が多数あります。
多治見市がある東濃地域は、名古屋市が近いため、若者が流出し、高齢化が急速に進んでいました。しかし、高齢者を受け入れる施設が少ない。そこで、高齢者の終の棲家(すみか)をつくりたいと考え、まずは1997年、多治見駅から車で15分程度離れていましたが、緑あふれる小名田町に「介護老人保健施設 アルマ・マータ」を開設しました。アルマ・マータとはラテン語で、慈母という意味です。人が年老いて最後にどんな場所に帰っていきたいのだろうと考え、やはり「母」の腕の中ではないかと考えたのです。
そのころ、この小名田町周辺は全くといっていいほど開発されていませんでした。しかし、私としては、アルマ・マータを手始めに、この地で「ふるさと福祉村構想」を考えていました。
46歳で理事長に着任してすぐに、具体的な構想案を作りました。3年ごとに1つずつ新しい施設を建設し、24年かけて計8施設をつくるという長期の計画でした。70歳までに実現する計画で、現在その歳に。ほぼ計画通りに実現してきました。時代がこのような施設を求めていたのでしょうね。
ー具体的には。
1999年に訪問看護ステーション「コスモス」と居宅介護支援事業所「アクシス」を開設。2003年には、回復期リハビリテーション専門病院「サニーサイドホスピタル」、同年に別法人で特別養護老人ホーム「エバーグリーン」を開設しました。そして2009年には、現在地に当院を移転、新築。
さらに2014年には、小規模特別養護老人ホームが完成しました。周辺地域も開発が進み、宅地も増え、アルマ・マータができたころとはずいぶん変わりました。近くにはアマゾンの物流拠点が出来て注目されています。
2015年10月、多治見市が初めて民間に業務委託をする「地域包括支援センター」を当院が受託することも決まりました。今年4月には、移転前に当院があった多治見市十九田町で、「精華地域包括支援センター」を開所し、運営を開始しました。同センターはコンペ方式で選ばれましたので、大変うれしかったです。1年をかけて職員も勉強して頑張ってくれました。今後、当グループの中核となると期待しています。
ー今後は。
グループ全体の方針として、①透析②高齢者のための病院と福祉施設③リハビリテーションという3つの柱で運営を進めてきました。
おかげさまで、透析は岐阜県内でも有数のたくさんの患者さんが通院しています。2つ目も、タジミ第一病院は老人向けの病院だと認知され、信頼をいただいています。
今後は、③のリハビリテーションにしっかりと力を入れたいと思っています。昨年、タジミ第一病院に隣接してリハビリテーションセンターを開設しました。センターでのリハビリに加え、通所リハビリ、訪問看護ステーションによる在宅リハビリと、相互に連携しながら進めたいです。
また、介護をする家族の方が体調不良の時などのためのレスパイト(respite:介護休暇目的)入院を行っているのも当院の特長です。在宅医療にも今後は力を入れたいです。
ー職員にいつも伝えていることは。
「元気な声かけ、家族の絆」です。今年の入社式でも言いましたが、患者さん、利用者さんはもちろん、その家族、そして職員同士も大きな声で、元気に声かけをしてほしいと思います。
患者さん、利用者さんは、身体的、精神的に弱ってますから、職員には元気に対応してほしいのです。加えて、患者さん、利用者さんは、自分の家族だと思って接してほしいと伝えています。