九州合同法律事務所 弁護士 小林洋二

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医療と法律問題 33

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 前回、昨年9月の個人情報保護法改正により、小規模事業者も個人情報保護法上の義務を負うことになったことに触れました。この機会に、カルテ開示に関するもうひとつの重要な改正点に触れます。

 これまで、個人情報保護法二五条は、「個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない」と定めていました。第29回で紹介したとおり、東京地裁平成19年6月27日判決は、この義務はあくまでも医療機関の公法上の義務であり、情報主体である患者本人に対して開示請求権を付与したものではないとしています。その後、医療機関の患者に対するカルテ開示義務を認めた裁判例も、診療契約に付随する義務あるいは民法上の顛末報告義務としてそれを認めたものであり、個人情報保護法上の義務として認めたものではありませんでした。

 すなわち、医療機関が個人情報保護法に違反してカルテ開示を拒否した場合、個人情報保護法としては、主務大臣の勧告・命令といった手続によりその違反状態の是正を図る仕組みだということになるのですが、現実には、カルテ開示を拒否された患者に、主務大臣の勧告や命令を求める手続は整備されていません。一方、カルテ開示が個人情報保護法以外の個人情報保護制度によって請求される場合、すなわち医療機関の設置主体が独立行政法人や地方公共団体である場合には、開示拒否はひとつの行政処分であり、患者側は行政不服審査法による不服申立ができますし、最終的には行政訴訟で争うことも可能です。このことと対比すると、従来の個人情報保護法の仕組みはいかにも迂遠で、未熟な印象を拭えませんでした。

 しかし、今回の改正は、この二五条を、「本人は、個人情報取扱事業者に対し、当該本人が識別される保有個人データの開示津波避難学命が助かる行動の原則と地域ですすめる防災対策清水宣明[ 著]すぴか書房 刊/四六判224 頁/ 1800 円+税ISBN978-4-902630-25-1を請求することができる」と改めました(改正後は二八条)。

 これは、医療機関の公法上の義務とされてきたカルテ開示義務を、患者のカルテ開示請求権に対応するものとして位置付けなおしたものであり、開示を拒否された患者は、この条文を根拠として、医療機関に対して直接的に開示を求める訴訟を起こすことができます。私的医療機関のカルテ開示拒否に対し、患者側から是正を求める直接的手段がないというこれまでの問題が、立法的に解決されたといえます。

 ただし、いきなりカルテ開示請求訴訟を起こすことができるわけではありません。まずは、相手方医療機関に対し、カルテ開示請求を行い、その請求が到達した日から2週間を経過した後、あるいは医療機関がカルテ開示請求を拒んだ場合に、この訴訟が提起できることになっています(改正後三四条)。

 なお、個人情報が事実ではないことを理由とするデータ内容の訂正、追加又は削除の請求、及び個人情報の違法な取得あるいは目的外利用を理由とする利用停止又は消去請求も、この開示請求と同様の扱いになります。この改正部分の施行も、成立した日から2年以内とされています。すなわち平成29年9月までには施行されます。あまり注目されていないようですが、小規模事業者の問題と併せ、ぜひ知っておいていただきたい改正点です。

■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10―2メディカルセンタービル九大病院前6階
☎092・641・2007


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