宮崎大学外科学講座 呼吸器・乳腺外科診療科長 富田雅樹 病院教授

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"神の手" より必要なのはスタンダードな技術と知識

とみた・まさき▶1981 宮崎県立宮崎大宮高等学校卒 1988宮崎医科大学医学部医学科卒 1996 宮崎医科大学大学院医学研究科博士課程修了 2012 宮崎大学第二外科医局長 2015宮崎大学医学部外科学講座呼吸器・乳腺外科診療科長/日本外科学会認定医、医学博士、日本胸部外科学会認定医、日本呼吸器内視鏡学会認定医、日本外科学指導医、呼吸器外科専門医、日本呼吸器外科学会指導医、日本胸部外科学会指導医、日本呼吸器内視鏡学会指導医、日本臨床腫瘍学会暫定指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、がん治療認定医

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外科医はかつて3K(きたない・きつい・きけん)と言われていた時代もありますが、今はそんなにハードな仕事ではないと思います。(富田 雅樹)

―「肺がん」は国内のがんの部位別統計をみると、死亡原因の上位ですが、宮崎の現状は。

 全国的に罹患数は増えていますが、宮崎県内の肺がん患者数は、統計の数字より実際はもっと多いのではないかと思っています。

 国内の統計で出た年間の肺がん手術件数を人口で割ると、人口比がわかります。5年前の宮崎県の人口にその数字をかけてみたら、数字が合わなかった。患者数が約100人少なかったんです。

 宮崎県だけ肺がんの発生率が極端に低いわけはありませんから、統計に表れない症例があるということが考えられる。つまり、手術できる段階で見つかる数が少ないのではないかと推測できます。早期発見できる体制が不十分だったため、手術ができない末期の状態になるまで見つけられなかったのだと思います。

 ただ、年を追うごとに県内における検診の意識も高まってきたようで、徐々に数値の誤差は小さくなっています。

 肺がんは、喫煙、食生活、大気中の汚染物質、生活習慣、遺伝的なものなど、さまざまな原因が重なり発症します。

 しかし、ここ数年は、非喫煙の女性の肺がんが全国的に増えていて、喫煙が原因とされる肺がんとは発生学的に別物だと思われます。たばこの影響による肺がんは、禁煙から約20年でリセットされると言われていますが、これは防ぎようがありません。

 また、最近はレントゲンでみつからない肺がんが増えています。CTを撮ってやっと見つかるケースです。レントゲン画像だけでは、がんがどこにあるのか私たち医師にも判断できないものがあります。

 肺がんはほとんどのものが予防できない。だからこそ早期発見が不可欠です。そして、早い段階で手術すれば、治る病気です。CT検診は全国的にみても増加傾向にありますし、検査の精度も上がっています。ぜひ受けていただきたいですね。

―講座の特徴を教えてください。

 これまで、第一外科、第二外科で臓器別に分かれていた外科学講座が再編され、昨年4月、外科学講座としてひとつになりました。現在は、肝胆膵、心臓血管、呼吸器・乳腺、消化管・内分泌・小児、形成の5つの外科学分野を有する大講座です。

 呼吸器・乳腺外科で行っている、がんに対する特徴的な治療法として、胸腔内温熱化学療法があります。この治療法は、胸腔内に、がん細胞がバラバラと散らばっている播種(はしゅ)の状態で手術のしようがない患者さんに適応します。

 理論上、がん細胞は43度で死んでしまうことから、43度のお湯にシスプラチン(抗がん剤の一種)を混ぜて、胸の中をかん流(臓器や組織に液体を流す)させる方法です。これによって、播種がなくなり、転移を防ぐことができます。

 僕は常々、地方の大学病院に神の手はいらないと思っています。症例を報告しなければならないほど珍しい病気の困難な手術をやってのける人は必要ない。そういう難しい手術は、東京や大阪など中央の病院に任せておけばいい。それよりも、肺がんなどの一般的な手術を、高い技術で確実にこなせる医師が必要なのです。そうした手術を受けるために、わざわざ県外に出向かなければならないようなことがあってはいけない。そういう状況を作らないことこそ、地方の大学病院の役割だと思うのです。

―学生に向けてメッセージをお願いします。

 外科学講座の再編に伴い、七島篤志教授と中村都英教授が中心となって、「MANGOU(マンゴー)プロジェクト」を始めました。これは、外科医を目指す若者の育成と外科医療の充実を目的とした活動です。

 学生の不安を取り除き、自信につなげてもらうため、模擬手術の実習などを行っています。県外の医学生、研修医にも門戸を開いていますよ。

 ポリクリで当科に来た学生に感想を聞くと、「外科ってやっぱりハードですね」と言うのですが、本当にそうでしょうか。僕を見て、体力があるように見えますか?

 この僕が28年間も外科医をやっているんですよ。手術に必要な体力とスポーツに必要な体力は少し違う気がします。

 実は、僕も学生のころ、内科に行こうと思っていたのです。外科に誘われてはいましたが、「できるかな」と悩んでいました。周りがどんどん進路を決めていく中で、僕は最後まで決めきれなかった。悩んだ末、外科の教授に断りのあいさつをしに行ったら、先輩がいて、羽交い締めにあい、入局申込書に丸をつけた、それが始まりです。研修の2年間だけのつもりだったのに、今まで続けています。人生って不思議なものですね。

 どこの診療科に行くか悩むことはあると思うけれど、「ここは自分には合わないな」というところ以外は、どの診療科に行っても後悔はない、と言いたいですね。医学は学問としてどれも面白いからです。

 仮に後悔することがあるとすれば、よっぽど嫌な上司がいるとか、人間関係が悪いとか、そういうことだけだと思います。

 だから、少しでも興味があれば、一度のぞきに来てほしいですね。

宮崎大学医学部附属病院宮崎県宮崎市清武町木原5200
☎0985・85・1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/hospital/


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