福岡大学医学部精神医学教室 川嵜弘詔 教授 就任から1年

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若い人も研究も、芽をつぶさずに大切に

川嵜弘詔(かわさき・ひろあき):ラ・サール高校出身。1984 年九州大学医学部卒業、同附属病院医員(研修員、精神科神経科)。マサチューセッツ工科大学癌研究所、脳認知科学学部留学九州大学医学部附属病院助手、同講師(精神科神経科)、九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野講師、同准教授を経て、2015 年から福岡大学医学部精神医学教室教授(福岡大学病院精神神経科・診療部長兼任)。

豊かなものがたくさんある教室見守っていれば確かな実りにつながっていく

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―昨年4月、九州大学准教授から福岡大学教授へと就任されました。

 福岡大学の精神医学教室は、九州大学の同門の先輩である西園昌久先生が初代教授です。

 私自身が福岡大学で働いたことがないとはいえ、同門の先輩方が立ち上げた教室で、知っている先生もたくさんいましたので、近しい関係だと感じていました。

 でも、実際に着任してみると新鮮でしたね。前任の九州大学病院には1999年から2017年3月まで18年ほどいましたから、体に染みついていたものがあったのでしょう。驚きもありました。

―力を入れてきたことは。

 就任して、まず初めに、ここの医局会でマニフェストをお話しさせてもらいました。その中で、もっとも強調したかったのは、「医局の中にある芽をつぶさない」ということです。若い人でも、研究でも、今、いる人、あるものを大切に育てる。私が教授になり、医局の雰囲気が大きく変わるようなことはしたくありませんでした。それは今も大切にしています。

 福岡大学の教室は、豊かなものがたくさん残っていて、何も足さず、何も引かず、見守っていれば確かな実りにつながる感じがします。ただ、この教室は、今まで生物学的な研究をしたことがありませんでした。それは、僕が長年やってきたものでもありますので、少しだけプラスすることにしました。

 そのための研究設備のセットアップにも力を注いでいます。臨床研究も基礎研究もする「ニューロサイエンス・精神医学研究講座」という寄付講座が昨年10月に成立、今年4月に助教が1人入りました。現在実験室を整備している最中です。これから、基礎医学の実験を進めていきたいと思っています。

 福岡地区には福岡大学病院と九州大学病院があり、それぞれの役割分担を考えることが大切です。

 福岡大学では臨床を中心とした人材育成をしていかなければなりません。専門医と精神保健指定医の資格をきちんと取れるよう、一緒に勉強会をし、昨年は専門医5人、精神保健指定医は3人が合格。よくがんばってくれました。九州大学の神庭重信教授とも協力できる体制ができていますので、ありがたいと思っています。

 また、私がここに来てから、小児科、産婦人科、救急部とのカンファレンスを始めました。他科との連携を大切に、特定機能病院としての役割を果たしていきます。

大学病院初の精神科デイケア、性別違和、精神分析、自殺対策...
多彩な取り組みが特徴

―教室の特徴を聞かせてください。

 福岡大学精神医学教室の特徴のひとつとしてまず挙げられるのは、精神科デイケアを1974年に大学病院として全国で初めて発足させたことでしょう。以降、先駆的な役割を果たしてきました。

 また、国内で性別違和(Gender Dysphoria)の診療ができる大学病院は大阪より西では福岡大学病院が唯一。患者さんは九州一円、沖縄、山口からも来院します。性別違和の診療は、産婦人科、泌尿器科との連携が不可欠です。当病院でも、協力して診ています。

 近年、トランスジェンダー自体がものすごく幅広くなっていますから、患者さんは今後も増えていくでしょうね。

 精神療法のグループがあり、精神分析が学べることも、特徴のひとつです。かつては、精神分析を専門とするグループがさまざまな大学にありましたが、今は生物学的精神医学が中心となり、ほとんどなくなりました。アメリカでは精神分析に批判的なこと、エビデンスがはっきりしないので論文が書けないことなどが理由です。

 個人的な意見ですが、こころの問題を扱うには、さまざまな「作法」が必要です。もちろん、生物学的な薬の治療をなくして治ることはほぼありませんが、「薬さえ飲んでおけば治る」というわけでもありません。

 患者さんと医師の距離感や、感情をきちんと整理しながらこころを扱う。その作法のようなものが精神分析的な視点で、それが完全になくなるのは、つらいなと思いますね。精神分析的な視点と、生物学的視点、その両方を持っていたほうがいいと、私は思います。

―自殺対策にも力を入れているとお聞きします。

 当院は救急に力を入れていますので、自殺を図った患者さんも数多く運ばれてきます。私たちは厚生労働省自殺未遂者再企図防止事業の実施施設のひとつとして、その人たちの身体的処置をした後、自殺企図の背景や後遺症を調査したり、リハビリを支援したりという活動をしています。また、傾向調査や、予防のための講演会活動にも取り組んでいます。

 自殺の若年齢化も深刻ですので、中学や高校での自殺予防教室での講演依頼も多いですね。

こころに対する標準的な作法を持ち温かい医療ができる人材を

―今後の展望は。

 医局員がたくさん入ってくる教室にすること。そのために、学生にとって魅力ある精神科教室をつくることが目標です。

福岡大学の良さをわかってくれる医師の卵が増えてくれることを望んでいます。こころに対しての標準的な作法を持って、温かい医療ができる人材を育てたいなと思っています。

 精神科は、人が人を治す科です。患者さんとの相性もありますので、いろいろな人がたくさんいるほうがいい。極端にいえば、「誰もがなれる、誰でもできる」のが精神科医だと思っています。

 女性医師も大歓迎です。福岡大学は4月21日、JR博多駅前のKITTE博多ビル8階に、ステーションクリニックを開設しました。女性のこころの外来もあります。女性医療を、女性医師とともに。そのためにも、女性を支援する体制の充実は不可欠ですね。

 保育所を24時間体制にしたり、産休育休を取りやすい環境をつくったり。かなり改革しないと、女性医師は仕事を続けられないと思います。

福岡大学医学部精神医学教室
福岡市城南区七隈7-45-1 ☎092-801-1011(内線3385)
http://www.fukuoka-psychiatry.jp


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