鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 佐藤 雅美 教授(写真右) 呼吸器外科学分野 大塚 綱志 助教(同左)

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失敗しても共有すればみんなの経験になる | 鹿児島大学呼吸器外科の文化に触れる

さとう まさみ▶1982 東北大学医学部医学科卒業 同抗酸菌病研究所 1991 公立学校共済組合東北中央病院 2000 東北大学医学部附属病院呼吸器外科病棟医長 2001 同加齢医学研究所助教授(呼吸器再建研究分野) 2002 文部科学省在外研究員(ハーバードメディカルスクール客員助教授) 2005 宮城県立がんセンター医療部長 2010 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器外科学分野教授
おおつか つなゆき▶1998 鹿児島大学医学部卒業 同第一外科入局 2010 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器外科へ転籍し同助教 2012 虎の門病院呼吸器外科で胸腔鏡手術を学ぶ 2013 University of Miami Thoracic Surgery ExchangeVisiting Scholar 2014 から現職

 佐藤雅美教授は2015年5月号にも登場している。鹿児島県の肺がん治療について語り、後半で、「積み重ねていくと見えてくるものがある」「極限まで削り落とすこと」「感覚を研ぎ澄ませること」など、真理に迫る話をしている。

 それは学生に伝えられるのかと、今回は尋ねてみようと思った。そこに大塚綱志助教が入ってきた。剣道の腕前はかなりのものだと佐藤教授は言う。着陸地点の見えないインタビューが始まった。

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―今の学生に思うことは。

佐藤雅美教授 学生は欲張りなんですよ。あれもこれもどこかに転がっているものだと思って、それがうまくいかなければ、教える側が悪いように捉えがちになります。

 現実はそんなものじゃない。本当のプロは、どんどん感覚を研ぎ澄ましていく過程で、いろんなものを削っていく。

 何かを得ようとする時、そこらにぼた餅が転がっていても、それはきっとプロのぼた餅じゃないんですよ。

 でも学生は、自分の周辺に必ずあると思っているでしょう。

大塚綱志助教 私が医者になったきっかけは、父が天草の御所浦島の出身で、そこに暮らしていた祖母が子どもの私に「孫の中で誰か、この島の医者になってくれないか」と言ったからです。

 一人前の医者になるためには、実際の臨床の現場で知識や技術を習うほかに、佐藤先生も言われたように、余計なものを捨てて研ぎ澄ますことも大切なことだと思います。でも私がそれを、システマチックに教わったかといえば、そうでもありません。日々の現場で先輩や患者さんから教わりながら身についていったように思います。ですから、若い人たちが一人前の医者となるために、多少のヒントくらいは見せてあげたいですね。

佐藤教授 世代が違うと、考えることも見えるものも違ってくるでしょう。

 私が若い人を見て、成長を感じられる人というのは、自分を削っても決してマイナスになっていない。手術がどんどん上達したり、思い描いた手術ができている人間は、何かを削ったなんて思っていないでしょうね。自分の判断で患者さんが元気になるとうれしくなりますから、時間を費やすのは損ではなく、むしろ楽しくなっているんですよ。それは私が学生だった頃と変わりません。

大塚助教 若い時にいろんな先生から教わったことを全部まねしてみて、自分ができる立場になった時に削る作業が入って来るのでしょう。

 いろいろなものが見られるからとの理由で研修先を決める学生がいます。10年も経てば使われないものも多いのですが、若い人は元気がいいですから、いろんな人からいろんなことを聞いて、気になれば試してみればいいと思います。

―学生が警戒すべきことがあれば。

大塚助教 安易な方向に流れないこと、そして、患者さんによくない事態が起こっているのに、それを気づけない医者にはなってほしくないです。また重要な場面では、どんなに自信があっても独りよがりにならず、先輩でも後輩でも同僚でも、身近な誰かに相談してみることも大切です。

佐藤教授 そこがグループでやる場合の良いところで、その文化を医局として育てなければいけないと思います。それに加えて、個々に、すべてが勉強なんだ、患者さんが教えてくれるんだと思う姿勢があれば、ネガティブなことは何もないわけです。知識と経験を共有すれば、どんなことでもプラスになってきます。隠そうとするから失敗になるのであって、失敗も共有すれば経験になっていくわけです。みんなで共有するというスタンスが最も基本になる。そんな気がしますね。

―医師の仕事のいいところは。

大塚助教 患者さんの命や人生に関わるところに関与できる仕事だと、自分の中ではダイレクトに感じています。

佐藤教授 私は、「いいことは患者さんと一緒によろこぶ」と決めていて、回診で患者さんに、「良かったね」と声をかけてあげられるのはうれしいし、大事なことです。でも患者さんが悲しんでいる時は、一緒に悲しんではいられません。どうすればいいかと、ありとあらゆる知識と知恵を駆使する。それがわれわれの仕事です。

―趣味から学ぶことはありますか。

大塚助教 剣道は小学生の時からやっていて、今は大学の剣道部に週に1回くらい顔を出しています。相手は学生ですが、剣道は体が動くか動かないかだけではないので、相手の意図を組み込みながら、気持ちを読み合って対戦します。

 自分より強い相手には打ち込みにくかったり、どうせだめだろうと気持ちが負けたところを打たれたり、全体的な落ち着きや、こちらが動いた時の相手の反応で、すでに勝負が決まってしまうことは実際にあります。

佐藤教授 剣道のことはわかりませんが、試合をテレビで見ていて、きれいに決まった時はわかりますよね。大塚先生の手術を見ていると剣道に通じるものがあるのか、打ち込む時の雰囲気みたいなものがあるんです。だから無駄な動きがない。

 私の趣味はひたすら釣りです。それとは別に、人間は寝ている間に考えているのだと思うようになりました。京セラの稲盛和夫名誉会長が同じようなことを言っています。

 極限まで考えていくと、無意識のうちに考え続けるようになることが最近わかりました。

 朝起きた瞬間に答えがわかる。たぶん、寝ている間にリラックスするからでしょうね。そこで解決法が出て来るのかもしれません。ということは、リセットは大事ですね。引きずらないことも。

 呼吸器外科の分野に限らずニュートラルな目で見直すと、新しい発見がたくさんあります。みなさんも今一度ニュートラルに見直してみて、新しい発見をしてみてください。コロンブスの卵はまだまだ転がっています。


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