医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

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 今回は、医療機関の側からみた個人情報保護法の適用範囲について。

 まず、国、地方公共団体、独立行政法人等は、この法律の「個人情報取扱事業者」から除外されています(法二条三項一〜四号)。したがって、国の設置する医療機関(国立ハンセン病療養所)、地方公共団体の設置する各種公立病院、独立行政法人国立病院機構や国立大学法人の設置する病院は、個人情報保護法上の義務を負いません。国立の医療機関であれば、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」に、独立行政法人等の設置する病院であれば、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」に従うことになります。地方公共団体の設置する医療機関の場合には各自治体の制度に従いますが、現在、全ての自治体に個人情報保護条例が制定されています。診療記録開示についていえば、代理人の範囲や、開示拒否に対する救済制度がやや異なることを除けば、ほぼ個人情報保護法による場合と同じ取扱いになっているはずです。

 また、現行の法二条三項五号は、「その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者」を「個人情報取扱事業者」から除外しています。具体的には、識別される特定の個人の数の合計が過去六ヶ月以内のいずれの日においても五〇〇〇を超えない事業者は、この「個人情報取扱事業者」に含まれません(個人情報保護法施行令二条)。

 では、このような小規模な医療機関は、患者からカルテ開示請求を受けた場合、法的義務はないと断ってもいいのでしょうか。

 そういうことではありません。厚労省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」は、上記のような法令の建て付けを説明した上、医療機関はその規模等によらず良質かつ適切な医療・介護サービスの提供ために最善の努力を行う必要があること、また、患者・利用者の立場からは、どの医療機関が法令上の義務を負う個人情報取扱事業者に該当するかが分かりにくいことを指摘し、個人情報取扱事業者としての法令上の義務等を負わない小規模医療機関にも、ガイドラインを遵守する努力を求めています。

 本紙一月号で紹介した福岡地裁平成二三年一二月二〇日判決は、個人情報取扱事業者に該当しない小規模なクリニックに、民法上の顛末報告義務の一環としての診療記録開示義務を認め、開示を拒否した医療機関に三〇万円の慰謝料支払いを命じたものでした。

 すなわち、医療機関についていえば、もともと民法上の診療記録開示義務を負っているのであり、個人情報保護法上の診療記録開示義務を負うか否かにかかわらず、患者の求めに応じて診療記録を開示すべきだというのがこの判決の考え方だと思われます。

 なお、昨年九月に成立した「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律」は、この個人情報保護法二条三項五号を削除しており、この法律が施行されれば(成立した日から二年以内とされています)、小規模医療機関も個人情報取扱事業者と位置付けられることになります。

■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10―2
メディカルセンタービル九大病院前6階☎092・641・2007


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