来年6月に新病院がグランドオープン「信頼され、愛される病院を目指す」
古川善也院長は今年1月に就任。
今後の抱負や来年6月にグランドオープンする新病院について話を聞いた。
●より良い連携が重要
院長に就任してこれまでを振り返ると、ただただ慌ただしい毎日でした。私は3年間、副院長職に就いていましたが、院長の仕事というのは想像とは随分違い、各病院、行政などとの対外的な折衝がとても多いことに気付かされました。
広島市中心部には、広島大学病院、県立広島病院、広島市立広島市民病院、当院と4つの基幹病院があります。現在、これら4病院が連携し、「この疾患の患者さんはこの病院へ」というように、機能分担しようという動きがあります。その中での当院の役割をしっかりと考えていかなければなりません。
各病院の長所、短所を踏まえて、より良い連携をしていくことが何よりも重要です。
●赤十字病院の使命
当院には赤十字病院として果たすべき使命があります。公的医療、災害救護、看護師養成などは、今後も力を入れていかなければなりません。
また、世界で初めて原爆医療に携わった病院でもあります。病院名にも「原爆」が入っているように、赤十字の使命を果たすと同時に、原爆病院としての使命をまっとうする必要があります。
私は1988(昭和63)年にこの病院に赴任しました。当時、最も驚いたのは、新年度が始まるとすぐに救護班が編成されることです。1班から6班まで医師、看護師、薬剤師、事務が割り当てられます。最初は外科系で編成され、4班くらいからが内科系です。私は5班に割り当てられ、有事の際は、すぐに出動する体制をとっていました。
最近でこそDMATなどがありますが、当時は、その概念すらなかった時代です。病院が一丸となって災害医療に臨む姿勢は、赤十字の理念そのものだと思います。
●がん治療と救急、災害医療に力を注ぐ
原爆が原因の疾患と聞いて真っ先にイメージされるのはがんや血液疾患だと思います。われわれは血液疾患を中心としたがん治療に力を入れなければなりません。
そのために新病院では55床の外来化学療法室を設置しました。家庭生活を送りながら、病状によっては職場復帰も可能になるなど、生活の質の向上が得られるようになりました。がん治療は当院の柱の1つです。
前任の石田照佳院長は「赤十字病院として救急を強化しなければならない」と常々言われていました。石田先生の強いリーダーシップのもと、救急外来は昔に比べて随分大きくなりました。今後も救急に力を入れていかなければなりません。
新病院は免震設計で、屋上には災害用のヘリポートと物資の貯蓄庫を設置しました。災害に強い病院をつくったので、災害医療にも積極的に携わっていきます。高度ながん治療、救急、災害医療は赤十字・原爆病院の使命だと思うので、積極的に取り組み、愛され信頼される病院を目指していきます。
●PFMの導入
当院ではPFM(ペイシェントフローマネージメント)の導入を予定しています。2006年に東海大学病院が導入した入退院マネジメント強化の手法ですが、手術患者さんやクリニカルパス適応患者さんだけでなく、緊急入院患者さんにまで対象を広げる予定です。これにより病棟の負担軽減、平均在院日数の短縮、在宅復帰率の向上などに効果を見込んでいます。
新病院では病診連携課を現在の7倍の広さにして、そこでPFMを実施していく予定です。
●チーム医療が重要
これからはチーム医療が求められます。医師はキャプテンとしてチームをまとめなければなりません。
私は部下にあれこれと指示を出すタイプではありません。自ら率先して行動した結果、部下が着いてきてくれているのだと感じています。だからこそ良好なチームワークを築けているのではないでしょうか。
病気を診るのはもちろん大事ですが、人をみることも大事です。人だけみて病気を診ない医師は論外ですが、病気も人もみられる医師が本当に優秀な医師だと思います。
●職員との交流
数年前から、自由参加による医局旅行をしています。昨年12月には台湾の十份(シーフェン)に行き、天灯という大型のランタンに願い事を書き、空へ飛ばしました。
医局旅行と名付けていますが、医師だけでなく、看護師、技師、事務職員、薬剤師など多職種で行き、職員との親睦を深めています。
また日本酒を持ち寄って、どれがおいしいかという鑑評会のようなことを定期的にしています。20人以上が集まり、お酒を持ってくる人、おつまみを持ってくる人、準備する人の分担をします。一通り飲み終わったら、各自がおいしいと思ったお酒に票を入れて順位を発表するんです。
毎回、とても盛り上げるので、今後も引き続き行っていくことで、さらなるチームワークの深化につながればと思っています。