岐阜大学大学院医学系研究科 腫瘍制御学講座腫瘍外科学分野  吉田 和弘 教授(岐阜大学医学部附属病院がんセンター長)

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日本の標準治療は常に先端医療です

1984 広島大学医学部を卒業し広島大学原爆放射線医科学研究所(原医研)外科入局1985 松山赤十字病院外科 1987 広島大学大学院外科系専攻 1989 同修了:医学博士 1991 広島大学原医研外科助手 1992-1994 英国オックスフォード大学・ジョンラドクリフ病院 2002 広島大学病院講師 2007 岐阜大学大学院腫瘍制御学講座・腫瘍外科学分野教授 2008 同医学部附属病院がんセンター長併任 2012 中国・青島大学医学部附属煙台病院外科・教授 2014 岐阜大学医学部附属病院先端医療センター副センター長(兼務) ■日本外科学会、認定医・専門医・指導医・評議員、 日本癌治療学会・理事・評議員、日本消化器外科学会・理事・評議員・認定医・専門医・指導医・消化器がん外科治療認定医、 日本胃癌学会・理事・評議員、日本内視鏡外科学会・評議員・技術認定医(胃癌)、日本食道学会・食道外科専門医・食道科認定医・評議員日本癌学会・評議員、日本消化管学会、胃腸科認定医・評議員

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がんを治療する4つのポイント

 がんを治す専門外科医の立場から現在4つのポイントを挙げて、最先端の治療の開発に取り組んでいます。1つは低侵襲治療です。次が機能の温存。3つ目は、手術できない患者さんを、抗がん剤や放射線でがんを小さくすることによって手術すること、そして、新たな治療を開発するための臨床研究あるいは治験です。この4点について説明します。

 ①患者さんは誰もが手術を受けたくないものですが、早期なら手術でほとんど治癒しますから、それをしないのは間違いです。手術をしたくない理由を聞いてみますと、体に傷が残るからと言われます。そこでアプローチを小さくするために、腹腔鏡手術が盛んに行われているわけです。鏡視下手術でより精密な手術ができることと、術後の患者さんの回復が早く、痛みが少ないことが何よりのメリットです。しかしながらその手術には高度な技術を要求されますので、個人差や施設間の格差が存在します。クオリティーの高い手術をするには、技術認定医制度に合格するような訓練が求められます。私はその審査員としてさらにレベルの高い手術の開発と教育を行いたいと思います。②機能温存については、特に直腸がんです。肛門をいかに温存できるかは重要なことです。これまでは人工肛門だといわれていた場合でも、手術技術と根治性の両面から安全を考慮し、再発しない温存手術を徹底し、その安全性を検証してきました。

 ③近年、新たな抗がん剤治療の開発が急速に進んでおり、私もその開発に携わってきました。そして胃がんの分野ではガイドラインに載るような治療も開発することができました。新たな治療の出現で患者さんにより長く生きてもらうことができるようになり、さらに、抗がん剤が以前より格段に効くようになり、転移の部分が小さくなったり消えたりして、切除できるようになる機会が増えました。特に大腸がんでは、ステージ4で手術が出来ない患者さんの予後が延びてきました。その理由は新しい薬剤や分子標的薬が出来たこと、それに加えて従来は不可能だった切除が可能になったことです。

先端医療が常に標準治療になる

 ④臨床試験や治験を展開し、新たな標準治療をつくることが、がん治療専門病院の使命です。患者さんの中には標準治療と先端治療は違うものだと思っている方がずいぶんおられます。でもそれは大きな誤解で、標準治療とは、その時代の最も進んだ治療、最先端治療のことです。そしてその先端医療(標準治療)をさらにグレードアップしていくには、臨床試験が不可欠です。すなわち、標準治療に比べて新たな治療が優れているかどうかを検証するのが、臨床試験や治験であり、それによって、新たな治療が見つかるたびに標準治療も進歩していくことになります。

 従って臨床試験や治験を行うことのできる病院こそ専門病院といえます。私どもは多くの臨床試験や開発治験に携わってきました。わが国のみならず、アジア、ヨーロッパ、アメリカとの共同研究を展開しており、岐阜大学医学部附属病院は新たな標準治療をつくり出すことのできる病院でありたいと思っております。

 高齢化社会における早期発見早期治療

 2025年には75歳以上の方が国民の4分の1を占め、団塊の世代の方々が、がんの好発年齢に達し、たくさんの方ががんになることが予測されます。

 がんは早期で見つかれば治る病気です。私たち、がん専門医は進行がんの治療成績をあげようと努力して、よりよい手術や、より効果のある抗がん剤治療や放射線療法を開発しています。しかしながら、がんをより早い段階で見つけることのほうがより死亡率を下げることができます。そのためには、症状が出てから受診するのでなく、症状のないうちにがん検診を受けることがきわめて重要です。これはわかっているようで、なかなか国民に浸透していないのが現状です。高齢者でも早期に発見されれば、より低侵襲の治療を受けることができ、社会の一員として社会貢献のできる人生を全うしていただくことも可能になります。

 一方、国民全体の問題として、がんになったために職から離れ、復帰が難しいという風潮がまだあります。厚労省は昨年12月に「がん対策加速化プランへの提言」を発表し、がん患者の就労支援についても整備するようがん診療連携拠点病院に通達しました。

 がんは治っているのに仕事を失っているのは大きな間違いです。なぜなら、2人に1人はがんになる時代になっているのですから、活躍の場なくして日本の未来はないわけです。だから早期発見早期治療がこれまで以上に重要になってきます。患者さんの会などが早期発見の啓発を行っておられるのは大変ありがたいことですね。

大志を抱いて大きな気概で

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 これからがんと闘っていく若い医師や学生には、大きな夢を持ってほしい。自分個人の到達目標だけでなく、よりよい研究、治療の開発ができることを夢見てほしいと思います。そしてそれをするには、今何をしなくてはならないかを、日々考えてもらえればと思います。

 一流の外科医になるためには、厳しさも努力も忍耐も必要です。決して簡単な道のりではないですね。しかしながら、よい治療を実践できるには、併せて優れた人格形成も必要です。より広く世の中を見聞し、世界に飛び出して交流を持ってもらいたいと思います。特に若い時には医療以外のいろんなことにチャレンジして、経験を増やしておいてほしい。

 「蒔(ま)かぬ種は生えぬ」といいます。どんな経験であれ、将来きっとそれが役に立ちます。

 新しい研究や治療に難渋する患者さんの治療法、新たな治療の開発のアイデアなど、昔は「チヌの夜釣り」の時にひらめいたものでした。最近はなかなか行けませんが、週に1〜2回の割合で東京に行くので、新幹線の中がアイデアを生む場だったりします。半分目をつむって手術のことや研究や新たなプロジェクト、人事のことなどについて考えます。私にとって貴重な時間です。

岐阜大学医学部附属病院
岐阜市柳戸1番1
TEL:058-230-6000(代表)


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