現状の変革こそが、安全で質の高い医療を支える原動力
医療と福祉の複合体
当院の最大の特徴は、仁厚会の姉妹法人である社会福祉法人敬仁会との相互補完機能を有することであり、医療と介護の連携が確立されています。日本医療機能評価機構の認定およびISO9001の認証も取得しており、昨年、ともに更新(それぞれ2回目、4回目)を行いました。
さらに、当院は予防医学から終末期(緩和)医療まで保健・診療病床機能的にフルスペックの医療体制をとっております。すなわち、健診事業、在宅医療(在宅療養支援病院、訪問診療、訪問看護・訪問リハ)、急性期に加えて、地域包括、療養機能や山陰地方初の緩和ケア病棟も有しており、法人内に病院と高齢者施設を備える医療と福祉の複合体で、2025年問題への対応を先取りしているといえます。
高齢社会といっても、人間である限り急性期医療が必要であることに変わりはありません。今後は急性期機能の充実にも力を入れる予定です。私自身も、おととしまで外科診療の現場にいましたので、実をいうと、まだまだ手術の現場に立ちたいのです(笑)。
前任地の大分県中津市とは違って、ここは10万人程度の医療圏です。中津の24万人医療圏と比べれば、人口減少こそがこの地域の最大の課題でしょうね。
先日、地域の医療構想に関する会議に出席しました。いわゆる2025年問題にむけて、「少子高齢化で人口が減るから病床を減らすしかない」という医療需要減のみを前提に話が進んでいる。当然、病床減の受け皿として在宅医療などをどう提供するかという展開になるのですが、個人的には、今後は医療のサプライサイドも考慮に入れ「少子高齢化で人口減少の時代だからこそ新たにできることは何か」という視点を併せもつ議論も必要だと感じています。
革新的変化を求む
日本社会全体が高齢化、少子化に突き進んでいます。医療も人口動態の変化に対応することが求められており、たとえば「人口が減少するから病床削減だ」「高齢者が増えるから施設が必要だ」などというアプローチが当然とされています。はたしてそれだけでよいのでしょうか。
ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈博士はかつて、「真空管をいくら研究、改良してもトランジスタは生まれなかった。われわれは将来を現在の延長線上に置きたがるが、変革の時代にはこれまでに存在しなかった革新的なものが誕生し、まったく違う未来が作られる」と述べています。
つまり、さまざまな変革が求められている現在においては、江崎博士の言葉を反芻(はんすう)しつつ、新たな試みやこれまでになかったアイデアに挑戦しなければならないと思うのです。当院においても、職員一人ひとりが病院本来の使命に立ち返り、CHANGEを恐れずに変革にまい進することで、安心で安全な質の高い医療を提供し続けることができると確信しています。
ある調査によれば、この地域の新成人の40%が県外で働くことを希望しているといいます。しかし、当法人などの病院を中心とした町づくりが可能になれば、医療系学校や職員向けの住宅、保育園や幼稚園など関連した業界が活気づくでしょう。さらに、内向きの消極的な議論ではなく、たとえば地域の歴史や観光資源などの特性や特徴を宣伝し、この町に住みたいと思うI・Uターン者で人口を増やす努力も並行して行うべきです。
倉吉市には国の重要保存地区に選定された白壁土蔵群や、南総里見八犬伝のモデルとなった里見忠義と八賢士の墓がある大岳院がありますし、域内には『名探偵コナン』の原作者を顕彰した「青山剛昌ふるさと館」や国宝・三徳山投入堂もあります。人を呼び、町の魅力を知ってもらえる地域資源がいくらでもあると思うのですが、十分には活用できていないと思います。
病む人の傍らに立つ
福澤諭吉が「贈医」(医に贈る)と 題する七言絶句を詠んでいますが、医師にはこの言葉を心にとめてほしいと切に願います。要約すれば、「医師よ、『自分たちは自然(治癒力)の家来にすぎない』などと言わないでほしい。あらゆる手段を尽くして病と闘い、患者を助ける努力をすることで医業の真諦(究極の真実)が生まれるのだ」ということで、福翁は、洞察力、着眼力と卓越した技量をもった医師になれと言っているのです。
私自身もまだ道半ば。まさに「医業の真諦」を究めるため、あるいは地域医療の発展のために尽力してまいります。
鳥取県倉吉市山根43-1
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