女性泌尿器外来で特有の疾患に対応
泌尿器の専門病院「にいむら病院」は1980年開業。新村友季子・現理事長の父である研二氏が創業し、TURーP(経尿道的前立腺切除術)などの当時先進的な術式を取り入れてきた。2013年には、鹿児島県内で初めて手術支援ロボットであるダ・ヴィンチを導入。多くの患者が訪れている。
―泌尿器の医師で女性は数少ないのでは。
医学部の女性の比率は以前に比べるとずいぶん増え、3割、大学によっては4割というところもあるようです。しかし、外科系は敬遠されるようで、内科、小児科、総合診療科などが人気です。また、泌尿器疾患の患者は男性が多いこともあり、女性の医師は少ないですね。
―2014年より女性泌尿器外来を開設されました。その理由を教えてください。
首都圏ではあるようですが、鹿児島県内では当院だけかと。九州でもまだ少ないようです。
当院は、もともと男性の患者さんが多かったのですが、だんだんと患者さんの奥さんや家族の方に当院のことが口コミで広がり、女性の患者さんが増えてきました。"女性"と掲げた方がわかりやすく、皆さんが受診しやすいと思いました。
女性には、膀胱、子宮、直腸が骨盤内から出てくる「骨盤臓器脱」や、女性の尿道が男性に比べて短いために起こりやすい「膀胱炎」、さらには「過活動膀胱」など女性に多い疾患があります。しかし、女性が泌尿器科を受診することがまだ一般的でないのか、どこの科に行ったらいいのかわからない、あるいは泌尿器科は敷居が高いと思う方も多いようです。
―開設して女性の受診は増加しましたか。
そうですね。患者数では、膀胱炎が一番多いのですが、過活動膀胱と骨盤臓器脱も増えています。過活動膀胱は、こらえがきかない、またはおしっこが近い、といった症状が主です。女性はつい我慢することも多く、相談もしにくいようです。
また、年のせいで仕方ないと考え、病気だという認識もあまりないようです。最近では、有名な女優さんがCMに出て過活動膀胱について紹介していますが、それを見て受診する方も増えています。
―どのような治療がありますか。
過活動膀胱は、主に薬で治療します。骨盤臓器脱の根本的な治療は手術になります。手術を希望されず症状がある時には、凸形のクッションによって、落ちてきている臓器を支えるガードルのような下着をお勧めする事もあります。
また、骨盤底筋体操は、尿漏れや軽い骨盤臓器脱の患者さんには悪化の予防になります。骨盤臓器脱は高齢化で増加していますが、昔からある病気でもあります。
出産、加齢などが主な原因ですが、アメリカの統計では、閉経後の3〜4割の女性は何らかの脱症状があるというデータもあります。
私がこれまで手掛けた患者さんでは、脱症状のため歩行が困難になるケースもありました。「一体何が出てきているのか」「悪い病気じゃないか」。そんな不安な思いで来られる方が多く、回復後は患者さんに大変喜ばれ、とてもやりがいがあります。宮崎や熊本から来られる患者さんもいます。
―国立がん研究センターは、日本人男性のがんの罹患数の第1位は前立腺がんであると、2015年のがん統計予測で発表しています。
当院の前立腺がんの手術件数は、国内の病院ではトップクラスです。
2013年6月には、鹿児島県内で初めてダ・ヴィンチを導入しました。ダ・ヴィンチは、当時で3億6千万円と高額で、加えて使用する機材も大変高価です。このため採算がとれるのか、といった課題もありましたが、日本のダ・ヴィンチ手術第一人者、秦野直先生(当院にて手術指導)のお勧めもあり導入に至りました。
ダ・ヴィンチによる前立腺がんの摘出手術は、導入から累計で322件(2016年3月10日現在)です。ダ・ヴィンチの良さは、まず患者さんに負担の少ない低侵襲であること。開腹に比べ入院期間も短いことです。
加えて、手術精度が高いことがその強みです。大げさに言えば「これまでは目をつぶって手術していたのか」と思うほど、開腹手術では見えなかったものが良く見えます。このため、小さな血管も見え、出血は平均百ml未満です。
患者さんの生活が手術前と変わらないようにするため、排尿、性機能を維持することも大変大事ですので、その点でも開腹術に比べ優れています。現在は、結果的に開腹手術からほぼダ・ヴィンチへ移行しました。
―これからどういう病院をつくりたいですか。
今、医療を取り巻く環境は、大変厳しい時代だと感じています。しかし、より専門性を極め、最先端で質の高い医療を提供しながら経営的にも安定させたい。
そして、真面目に医療に取り組んでいる人がやりがいを感じ、楽しく働くことができ、患者さんも喜んでいただける、そんな病院を目指していきたいと思っています。
TEL:099・256・6200