文章を書く行為は出力だから、それを担保するために本を読んでいる。読書(入力)もせずにいい文章が書けると思っている人は、お金を入れずにジュースが次々に出てくる魔法の自動販売機のつもりでいるようだ。
出力は入力に従うから、薬を読めば薬が、毒を読めば毒が出るという、子供にもわかる道理で私は手に取る本を吟味する。
いま鞄の中にあるのはNHKテレビテキストの「人生の意味の心理学」。読書好きの友人が電話で、「まるであなたのことが書いてある。ショックを受けるかもしれないが、参考になるだろう」と言うから近所の書店に行ってみたら、NHKテキストのコーナーに並んでいた。発行はNHK出版で価格は524円+税。
「過去は変えられないが未来は変えられる」という言葉をどこかで耳にしたことがある。しかしアドラーによれば、過去も変えられる。過去の意味付けを変えることで、違う過去になるのである。たとえば学歴のない人が、「だから自分の人生はこれっぽっちなのだ」と思うのと、「学校は自分が大人になるじゃまばかりした。だからこちらから拒否した」と思うのとでは、行動と結果に大きな差が出る。
良書を紹介してくれた良き友人に感謝しながら、今2回目を読んでいる。(記=本紙編集長)