知多半島で唯一の三次救急病院としてさらに連携を強めて
知多半島でただ一つの三次救急病院だという。この地域特有の現状と課題、これから医療をどう守るかを中心に尋ねた。
知多半島は縦に細長い医療圏で、北のほうは公立西知多総合病院がカバーしてくれ、中部を当院と常滑市民病院、南は知多厚生病院がカバーするという、大きく3つに分けられるんですね。その中で特に重症な患者さんが発生した時には三次救急の当院に運ばれてくるという関係です。
三次救急の現状としては南部からが多く、北部は名古屋南部―南区や港区の医療圏になります。
特徴としてあるのは、この地域は療養病床が少ないことでしょうか。しかし地元医師会が非常にがんばってくださって、在宅医療がよく機能しているので、療養病床の少なさは大きな足かせにはなっていません。当院のような病院で療養病床を必要とする患者さんを長く診なければならないというようなことは起こっておらず、在宅のみとり率も非常に高く、県内でもトップクラスです。地域で開業している先生方がとてもよくやっておられ、当院との連携もスムーズにいっています。地形的に閉鎖した医療圏であるだけに、連携が保たれるという面があり、その意味から、医療資源はそれほど多くないのですが、うまく機能していると思います。
さらに公的病院の院長同士のコミュニケーションとして、あいち小児保健医療総合センター、長寿医療センターを加え、6人が年に1回ほど泊まり込んで意見交換をする会があります。
―在宅医療がうまくいっている理由はどこに。
一番は開業医の先生方に、在宅医療と在宅でのみとりを熱心にやられている方が多いということです。医師の熱意によって最後まで患者さんを見放さず、家族との関係もしっかり築き、亡くなり方まで充分な話ができて納得されれば、自宅で亡くなることができます。亡くなるまでの道筋、死に方というものを一緒に考えてあげているという努力が実っているのではないかと思います。
この地域で開業されている先生方の中には半田病院出身の方も多くみえます。大学の人事などでよそから当院に来られ、地域の人たちとの結びつきが強まって、自宅での生活をサポートするためにこの地域で開業されるようです。
―市民病院と三次救急との兼ね合いは。
ここは高度医療を提供する三次救急病院で、紹介状が必要だと理解してくれている市民は少なくはないと思います。紹介率は70~80%、逆紹介率は90~100%です。地域医療連携室ががんばってくれていることもあって、在院日数も11日くらいと比較的短く、それは在宅医療が進んでいることのほかに、当院の周辺にある回復期の病院がうまく機能して、受け皿があるからです。そこは恵まれているところです。
―日本全体が多死社会を迎えようとしています。
医療者あるいは一国民として、一千兆円を超える借金があることを考えれば、医療費を絶対に削減するなとは言いにくい。これから医療需要は、高齢化によって増えていきますが、医療提供のほうはそんなに増やせません。そうなると、無駄を削って今ある医療資源でできる限りの医療をやっていくことを模索せざるをえなくなり、ある程度管理され、制限された医療になることに、医療機関としては協力していかざるを得なくなると思います。自分の病院が生き残るために競争していたのでは、日本の医療が崩壊してしまいますから、勝ち組と負け組をつくらないようにして、サービスを提供できるような流れをつくる必要があるでしょうね。
―現施設の建て替え構想があると聞きました。
今の病院は築33年で、老朽化が目立って配管事故が近年多発しており、でも補修するとしても高額な費用がかかります。それで5~6年先をメドに、新病院の建設が検討されているんです。ヘリポートも敷地内に備えることになると思います。市民病院でありながら三次救急と災害拠点病院として、知多半島で高度な医療が行え、ここで完結できる病院をこれからも目指したいと思います。
―若い医師に助言があれば。
論理的に診断するのは当然のことで、相手にうまく伝えられるコミュニケーション能力も同じくらい大切です。心を通い合わせる話ができ、情報を上手に交換できなければチームの中では働けないし、患者さんにも納得してもらえません。相手の感情を察知して、どうすればこの人に最善のことをしてあげられるだろうかということを瞬時に判断できる能力は、人と関わらなければ身につかないと思います。いろんな場でたくさんの人と関わってコミュニケーション力を磨いておいてほしいです。
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