徳島大学 糖尿病臨床・研究開発センター 松久 宗英 センター長・教授

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

糖尿病治療における教育者であり支援者を目指す

■略歴 1987 年 岡山大学医学部卒業 1990年 大阪大学医学部第一内科研究生 1993 年カナダトロント大学医学部生理学教室 客員研究員 1995 年 大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学(旧第一内科)医員 2003 年 同研究科助手 2009 年 大阪大学大学院内分泌代謝内科学講師 2010 年 徳島大学 糖尿病臨床・研究開発センター 診療部門長・特任教授 2014 年 同センター長・特任教授 徳島大学病院 アンチエイジング医療センター センター長(併任) ■所属学会 日本内科学会(四国支部 評議員・運営協議会委員)、日本糖尿病学会(学術評議員)ほか

c9-1-1.jpg

―まず、糖尿病について簡単に教えてください。

 糖尿病は血糖値が高くなる疾患で、大きく分けて1型、2型に分かれます。

 1型は、膵臓がインスリンを出さなくなるもので、子どもの時に発症することが多いですが、糖尿病全体で見ると割合は数%です。

 一方、2型は、遺伝体質に対して、肥満などの環境的な要因が加わり発症します。インスリンが効かなくなる、またはインスリンを出す力が弱くなったり、進行するとほとんど出せなくなったりするというものです。

 現在世界には4億1千5百万人、特に中国には1億人の患者がいます。糖尿病に伴う合併症などで、6秒に1人が命を落としています。

―徳島県は、糖尿病の死亡率が高いそうですが、その具体的な対策は。

 1993年に糖尿病による死亡率が13.9人/10万人で国内ワーストワンとなり、以来2007年を除きワースト記録が続いていました。

 そこで、2006年に県と医師会が対策を開始。徳島大も2010年に糖尿病臨床・研究開発センターを設立しました。2014年に減少に転じ、ワースト7位に改善しました。

 対策の中でも、糖尿病の知識を持つ医療人の育成が効果を上げていると思います。まず医師会による糖尿病認定医制度では、約400人が認定されています。患者の生活指導などを行う地域糖尿病療養指導士(LODE:Local Certified DiabetesEducator)の養成にも力を入れています。看護師、栄養士、理学療法士など、約400人がLODEに認定されており、現場での指導にあたります。

 また、糖尿病患者は、歯周病になる傾向もあります。このため徳島県の歯科医院は、血糖値測定器を導入し、疑いのある患者さんの血糖値を計り、「デンタルパスポート」という連絡ノートを通して、内科医との医科歯科連携にも取り組んでいます。

―ICTを活用した県内の糖尿病対策も進んでいるとか。

 徳島糖尿病克服ネットワークというもので、2011年に総務省の事業として始まりました。目的は糖尿病患者の医療連携です。患者さんの情報を、たとえば、大学病院とかかりつけ医が相互に情報を共有することは、患者さんにとっても医師にとってもメリットがあり、国内でも、このようなシステムが徐々に普及してきました。現在は、県内に4つの情報の医療連携ネットワークがあります。ただし、使用している電子カルテのメーカーが病院によって違うため、それぞれのネットワークを超えた連携は困難でした。

 そこで、メーカーに依存しない標準化連携システムを導入しました。これにより、県内の主たる病院が相互に情報連携できるシステムの構築を目指しています。今年度に本格的に運用を開始し、問題あるものの新しい連携システムが進んでいます。

 県単位でネットワークを構築するのは国内でも稀有な取り組みだと思います。しかし、この運用には費用や人的サポートが必要です。自立した運用を実現するため、NpO法人や医師会などが中心に基盤成立が必要であり、喫緊の検討課題です。

 また、これに加え患者さんが自身の歩数や血圧、血糖値の測定結果をスマートフォンを使って記録し、自己管理を支援するシステムの開発も昨年スタートしています。

 試験運用中ですが、システムの有用性を証明できれば、それを通して得られるPHR(PersonalHealth Data)と、先ほどの県のネットワークの医療情報を統合させることで、情報の相乗的な活用の可能性が広がります。

―今後の取り組みは。

 糖尿病患者の高齢化によって、合併症の概念が拡大しており、これまでになかった認知症、骨粗そう症、サルコぺ二ア(進行性および全身性の骨格筋力の低下を特徴とする症候群)などが認知されるようになりました。

 現在、当センターでは、1型糖尿病患者のサルコペニアの有病率が高いことがわかってきました。

 今後は、糖尿病患者のサルコペニアのメカニズムを明らかにしていきたいと考えています。

―医師のやりがいは。

 徳島大に着任してから、まず手掛けたのは「AWADM.com」(通称アワコム)という1型糖尿病患者会の立ち上げでした。1型の患者さんは、子どもの時はサマーキャンプなどで交流の場がありますが、思春期以降になると孤立する傾向にあります。

 また、経験豊富な患者さんは、自己管理もうまく、医療関係者も学ぶことが多いです。

 患者と患者を、そして医療者をつなぐことは、大きな気づきの場を創出します。このため患者さんと遅くまで、アルコール片手に議論することもあります。

 以前の医師は、「これダメ、あれダメ」という厳格な生活制限をもって最善の治療を行うことを目指しましたが、今は患者が、自分の人生をいかに生きるかということを明確にし、患者が治療を選択するなかで、最善の方法を一緒に考え、選んでいくことを大切にしたいと思います。

 糖尿病治療において、医療者は教育者であり支援者たることが最も重要と考えています。

徳島大学病院 
徳島市蔵本町2の50の1
TEL:088(631)3111(代表)


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る