人間性を磨いたうえで医学の世界へ
宮本整形外科病院は1962年、宮本宣義理事長の父である宮本政義前理事長が開設。岡山市内で初めての整形外科病院として診療・手術を行ってきた。
また同じグループの社会福祉法人恵風会では、病院のほかに特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイサービスセンター、サービス付高齢者住宅などの介護施設も運営。地域医療の発展に貢献している。
■退院後の受け皿
JR岡山駅前に駅前診療所が開業したのが1962年。その2年後にこの地に入院機能を移し、宮本整形外科病院を開設しました。開院当時は、腰のヘルニア手術、小児の股関節脱臼治療などを中心にしていました。
そのうち岡山市内にも大規模病院が増えてきました。大がかりな手術はそれらの病院に任せるようになったこともあり、1987年からは内科診療を行うようになりました。昨年4月には関節リウマチの権威である横山良樹先生を迎え、リウマチ外来も設置しました。
介護施設に関しては、ここから3キロほど離れた場所に80床の特別養護老人ホーム・恵風荘を造ったのを皮切りに180床の老人保健施設・恵風苑、30床のケアハウス・恵園などの介護施設を整備しました。また、ここから徒歩5分の場所にレジデンスめぐみというサービス付き高齢者住宅もあります。
手術後、退院しても自宅に帰れない人が半分以上います。しかし、在院日数は短縮の傾向にあり、退院後、施設に移ってもらわなければなりません。当法人内にさまざまな介護施設を有しているので、そのような方々の受け皿になっていると思っています。
近年、女性の社会進出が声高に叫ばれていますが、女性が外に出ると、現実的問題として誰が家で高齢者の面倒を見るのかという問題が生じます。今後、社会の経済基盤を女性にも求めていくのであれば、高齢者を施設で預かる必要があるんです。
先代の理事長が基礎を作ってくれたおかげで、法人内に多くの施設をそろえることができました。これだけ多くの施設を有しているのは岡山では、当法人だけではないでしょうか。
■強みをいかして
当院には高齢の骨折患者さんや脊椎を痛めた患者さんが多くいらっしゃいます。脊椎手術に関しては、岡山大学の整形外科教室と共同で行っています。救急に関しては、大学病院や岡山済生会病院と連携して患者さんのやり取りをしています。
患者さんは近隣住民がほとんどで、なかでも高齢者の割合が年々、増加しています。患者さんが気軽に立ち寄れる、開かれた風通しのよい病院でありたいと考えています。
岡山には大きな病院が数多くあるので、どのような病院であるべきか、ある程度的をしぼっていかないといけません。大規模病院と同じことはできないので、我々の強みをいかしていく必要があると感じています。
■事前説明の重要性
若い患者さんは、手術が成功すると、ほとんどの場合、以前と同じ何の不自由もない生活を送れます。
しかし高齢者になると事情は異なります。手術が成功しても、多少しびれが残ったり、筋力が弱ったりするケースがあるのです。
80歳、90歳でも心は若いので、手術が成功すれば若いころと同じように動けるようになると思いがちですが、必ずしもそうではないことは事前にご説明していますね。
職員には、常に患者さんにていねいに接しなさいと言っています。ひとくちに患者さんといっても百人百様です。なかには対応が難しい方もいらっしゃいます。そういう患者さんにも時間をかけてていねいにご説明し、納得してもらったうえで治療に臨んでいます。
ちょっとしたコミュニケーション不足が思わぬトラブルを生むことがあるので、細心の注意を払わねばなりません。
■人間力のある医師に
医療技術は日進月歩で進化しており、専門分野も細分化しています。もちろん、専門分野はしっかりと勉強する必要があります。しかし、一番大事な核となるものは、コミュニケーション能力ではないでしょうか。それがベースにない人は、どんなに仕事ができても、人がついてこないと思うんです。
近年、成績がいいからといって医学部に進学する人が増えていますが、まずは人間性を磨いたうえで医学を学んでもらいたいですね。建物でいう土台部分、すなわち人間力のある医師が一人でも増えることを願っています。