呼吸器疾患の予防・早期発見・治療を担う
「その使命があると思っています」
福岡県大牟田市にある社会保険大牟田天領病院。三池炭坑創業と同時に始まった病院の歴史は、まもなく130年を迎える。
同病院の杉本峯晴病院長に、専門でもある呼吸器分野をはじめ、特長ある取り組みについて話を聞いた。
―炭坑の町でイメージするのはじん肺です。
最近では、じん肺の新規患者はほとんどなく、呼吸器疾患については、全国とほぼ同じ傾向だと言えるでしょう。肺がん、喘息(ぜんそく)、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺炎などの感染症、間質性肺炎など多くの患者さんが当院にお見えになります。
2012年には呼吸器外科の常勤医師が来てくれて、肺がんの手術ができるようになりました。呼吸器内科と呼吸器外科が一緒になって呼吸器全体を診る。当院は、それができる病院だという自負があります。そして、福岡・熊本両県にまたがる有明地区の呼吸器疾患は、ここで診る使命があると思っています。
呼吸器外科医は現在1人。増やしたいという希望はあります。ただ、なかなか難しい。そんな中、当院に2人いる消化器外科の医師と呼吸器外科医がお互いの手術の際に、助手に付くなど協力し合い、「外科チーム」としてがんばってくれています。非常にうまくいっていると思いますね。
肺がんについては、当院には緩和ケア病棟がありません。そこで、患者さんやご家族の声を聞き、相談に乗る肺がんサロン「レモンタイム」を、2014年11月から開いています。これは、看護部が必要性を感じ、呼吸器科医師と連携してスタートさせてくれた取り組みで、参加者の評判も上々です。
―ご自身は呼吸器内科医ですね。
呼吸器内科は私も含めて5人。この人数がいれば、一通りの対応ができますが、もっと増やしたいというのが本音です。レベルの高い医療をするためには、肺がんのエキスパート、喘息・COPDのエキスパート、呼吸器感染症のエキスパート...というように、それぞれの分野で中心になる人が必要です。その養成のためには、まだ人が足りないのです。
近年、血液中の酸素が下がり、呼吸管理が必要な状態で当院に紹介されてくる患者さんの中に、治療薬による「薬剤性肺炎」の方や、結核の再発、抗がん剤治療による合併症、自然食品の摂取による肺炎の方などがいらっしゃいます。
しかも、その原因に気づかれていないことが多い。私たちは必ず、服用している薬や食品をチェックします。そして、早く的確に診断し、治療するということに力を入れています。
最近は治療薬が格段に進歩しています。でも、効く薬はある意味、怖い。そのような薬でも地域の開業医の先生が、患者さんに安心して使えるように、私たちが事前に肺の状態をチェックすること、それでも何か起きてしまったら、きちんとバックアップすること。それも、当院の役割のひとつだと思います。起こらなくてもいい病気は、起こさない、ということです。
―今後は。
喫煙が主な原因となっているCOPDを予防するため、禁煙運動が大切になってくるでしょう。
COPDの有病者数が全国で530万人。そのうち、症状が出て治療を受けている人は22~23万人というデータがあります。今後、息苦しさなどを訴えて受診する人がさらに増加する可能性が高いということです。COPDこそ防げる病気。禁煙活動に、力を入れていきたいと思っています。
就任以来、充実させてきた健診にも、さらに力を入れたいと考えています。最近、早期の食道がん、胃がん、肺がんを次々と見つけたことで、健診に対する地域の信頼が高まってきました。
2年ほど前には健診機能を評価する第三者機関「健康評価施設査定機構」の認定施設となり、今は依頼を断らないといけないほどです。女性医師による乳がん検診も「説明が丁寧」と評判ですね。人材を確保し、現在より健診の回数を増やすなど、さらに充実を図っていきたいと考えています。
―大牟田は年明け早々の寒波で断水に見舞われたそうですね。
大変でした。病院には1~2日分の貯水がありますが、血液透析など水を大量に使う治療もありますし、断水がどの程度続くかわかりませんでしたからね。対策会議を開いたり、給水車に数回来てもらったりしました。
災害対策を改めて考える、いいきっかけになったと思っています。
福岡県大牟田市天領町1 丁目100 番地
TEL:0944-54-8482