「寝酒代わりに落語を聞いてみたらどう」。取材先の医師から提案された。彼もそうしているらしい。インターネットにいっぱい動画があるそうだ。
試してみたら見事にはまった。布団に横になって小声で笑っているうちに寝てしまう。晩酌は半分に減った。
お勧めは立川志の輔の新作落語「バールのようなもの」「踊るファックス」。桂歌丸なら「ねずみ」「火焔太鼓」。古今亭志ん朝はどれも芸術で、桂米朝はみな渋い。桂文枝も桂文珍も、腹の皮がよじれるほどおかしい。海外公演も聞けるとは、ネットあってこそだ。
寝られない、もしくは寝つきの悪い夜というものは誰にもある。ストレスの多い職業ならなおのこと。ならば酒で紛らすより笑い飛ばしてしまえ。笑いは酒より百薬の長だと医療者なら誰でも知っている。コミュニケーション力が上達する人だっているだろう。
古典も新作も、上方落語も江戸落語も、笑いながらふと思う。容姿や才に優れた者は大方が苦労し、その逆は間抜けに愚かにたくましく生きている。落語は案外世の本質を突いている。