徳島大学大学院病態情報医学講座 救急集中治療医学 西村匡司 教授

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重症患者の命を救う=集中治療医
誇りを持ってがんばりたい

1981年 大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学医学部附属病院、大阪府立母子保健総合医療センターに勤務。1992年~1994年 ハーバード大学マサチューセッツ総合病院に留学。兵庫医科大学附属病院、大阪大学医学部附属病院に勤務。2004年 徳島大学大学院救急集中治療医学講座教授に就任

―徳島県における徳島大学救急集中治療医の役割を教えてください。

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 集中治療室(ICU・Intensive Care Unit)での集中治療を中心にやっています。私は大阪大学(阪大)出身で、麻酔科医をやっていましたが、2004年から本学で集中治療に取り組んでいます。日本ではまだ専門に行っている人や組織が少なく、医療関係者でもまだ存在価値を知らない方もいます。

 TVドラマなどでICUが登場するのですが、そこで描かれるのは手術をする外科医。術後にICUで患者さんの管理をするのが"集中治療医"の役割となります。

 私も初めてこちらに来た時にびっくりしたのですが、徳島県の県立中央病院と大学病院が並んで建っているという全国的にも珍しい状況です。県の総合特区のため、建物自体も連絡通路でつながっています。ですから、2つの病院の救急が役割分担をし、より重症な患者さんを大学病院で診ていくという役割を果たせば、両院のいい関係が築けると思います。

 海外のデータですが、集中治療医の配置される度合いによって、患者さんの助かる率が数10%変わると言われます。一方、国内では、2014年の診療報酬の改定では、ほとんどの保険点数が下げられる中で、集中治療室管理料は、引き上げられました。

―全国的には、集中治療医は増えていますか。

 現在集中治療専門医は1千人くらいです。が、ICUがある病院の中でも24時間365日、集中治療医が重症の患者さんを診ている病院は2〜3割。ですから、もっと集中治療に携わる医師の数を増やしたいですし、集中治療医の地位向上に力を尽くしたいですね。

―貴院のICUではいかがですか。

 私が赴任する前後3年間を比較すると、死亡率は低下いたしました。理由はいくつかありますが特に、集中治療医が24時間365日診ることで、細かな対応ができるため。たとえば、外科の主治医が術後の患者さんをICUに残して、別の手術に入っている時に患者さんが急変しても、集中治療医が24時間いれば対応できます。

―集中治療医には、幅広い知識が要求されますね。

 そうですね。すべての臓器に関する知識がないといけません。身体全体を診るというのが、アイデンティティーであり、セールスポイントです。

 死亡率がなかなか良くならない疾患に、急性呼吸不全、敗血症があります。これに関しても、4〜5割が亡くなっていたものが、集中治療医がいれば3割程度に減らせます。

―集中治療医になったきっかけは。

 私は麻酔科医としてスタートしたのですが、大きな手術などでは麻酔担当の医師によって、術後の経過が変わります。信頼している先輩から「麻酔科医として上達したいなら、ICUで勤務しなさい」と言われました。

 最初の10年間は、麻酔科とICUで勤務し、留学先では人工呼吸の研究をやり、その後は日本に戻って阪大で集中治療を行いました。そこで指導いただいた先輩の影響も大きかったです。

―徳島大学着任時、集中治療は、ゼロからのスタートだったんですね。

 そうですね。まずこちらに知り合いがいなかったですね(笑)。また、集中治療があまり知られていなかったので、当初は、大変だったこともありましたね。

―実績が見えてくると周囲も変わりましたか。

 それもありますが、重症な患者さんで、主治医の先生も厳しいと思われている患者さんが回復することで少しずつ信頼をいただけるようになりました。治療のやり方を変えることは大変ですが、根気強くやりました。今は看護師、臨床工学技士も積極的です。徳島県全体で見ても、これまでは、亡くなっていたような重症な患者さんが助かっています。ただ、一人でやれることは限られますので、若い後輩を育てられるような教育者となる医師を育てたいです。

―来年2月の神戸での「日本集中治療医学会学術集会」で学会長を務められます。テーマは「BE AN INTENSIVIST」。どんな思いを込めているのですか。

 多くの医者は「こういう風に治療したい」という思いが強い。でも時に、振り返るとそれは「患者さん自身の回復の足を引っ張っているのでは」という治療もあるのです。

 そこで思い浮かべるのが、私が好きな歴史小説の中の宮本武蔵が畑を耕すシーン。「事がうまくいかない時は、水が流れるままにすれば、うまくいくこともある」というメッセージは、患者さんの回復の力を大事にすることで、侍と集中治療医(intesivist)は重なる部分があると思いました。

 「患者さんが良くなろうとしている力を助けるのが私たちの役割。本物のintensivist を目指しましょう」。そんな思いをテーマに込めました。

 私たちは前面に出ることはあまりありませんが「患者さんが重症になった時に助けるのは我々」という誇りを持ち頑張れるような学会にしたいと思っています。


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