月曜から土曜までIBD外来を開設しています。
食生活が欧米化したことに伴い、若年層を中心にIBD=炎症性腸疾患の患者が全国で急激に増えているという。北九州はどうなっているのか。IBD治療に詳しい宗祐人副院長と酒見亮介医師に、現状と共立病院の取り組みを聞いた。
―昨秋からIBD外来を開設したそうですね
IBDは炎症性腸疾患(Inflammatory bowelDisease)のことで、潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指します。
近年日本で若年者を中心に急増し、潰瘍性大腸炎は17万人で世界第2位、クローン病も4万人に達しています。2020年の東京オリンピックの時には潰瘍性大腸炎は20万人になるのではといわれていることから、今後も注目される疾患の一つです。最近では若年層だけではなく高齢者の発症もみられるようになっています。この10年で平均発症年齢が5歳程度上昇したとも言われています。
―北九州の現状は。
北九州市では、平成24年度の統計で、潰瘍性大腸炎患者は1108人、クローン病は326人と報告されており、これからは、高齢化していく患者さんや新規発症患者さんへのきちんとした対応が必要になってきます。
―どんな治療ですか。
まずは炎症をしっかり抑えることが大事です。治癒はまだむつかしく、炎症を完全にコントロールして再燃をさせないようにする、つまり、寛解をどれだけ長く維持してあげられるか、長期寛解維持を目標にしています。
クローン病は生物学的製剤が出たことで、炎症をかなりコントロールすることができるようになりました。これからも生物学的製剤がどんどん開発され、治療の選択肢が増えると思います。
―患者の主な希望は。
患者さんには若い人や働き盛りの人が多く、社会生活を妨げないような医療を提供していくことが重要となります。
就学や就労などの妨げにならない土曜日に受診したいとの要望がずいぶんあり、それが月曜日から土曜日までIBD外来を開設した理由の一つです。IBD外来及び投与に1〜2時間を要するレミケード治療を土曜日にやっている施設は、北九州地区では今のところ当院だけです。
またIBD患者さんは精神的負担も大きく、既婚率や就職率、年収が、健常な人と比べて非常に低くて、社会的に厳しい立場に置かれています。栄養療法や特殊な治療薬を必要とすることからも、さまざまな職種が連携しなければ良質な医療は提供できません。
当院では、IBDに対する理解と情報の共有を目的にしたIBDの教室や勉強会を定期的に開催しています。地域の先生方など医療提供者はもちろんのこと、患者さん自身にも正しく理解してもらう必要がありますし、IBD教室が患者さん同士の情報交換の場になればとも思っています。
―主な原因は何でしょう。予防するには。
潰瘍性大腸炎は、原因の一つとして、腸内細菌叢が乱れ、崩れているからともいわれています。その背景には、衛生環境が良くなり過ぎたために、本来ならいるはずの腸内細菌がうまく住み着かなかったり、食事が脂肪の多いものになってしまったりといった理由が考えられるようですが、まだ決め手に欠けているようです。
腹痛や下痢、血便が続いて体重も減ってくる、あるいは難治性の痔になる。そのような場合にはIBDの可能性があります。でも、ハンバーガーなど動物性の脂肪分が多い食事が原因だとはいっても、ほとんどの人はならないわけですから難しいところです。発症すればいろんな助言ができるのですが。
この10年でIBD治療は飛躍的に進み、多くの臨床データが出てきています。患者さんにこれらの客観的データを、副作用も併せてわかりやすく提示し、目標達成のための適切な治療―treat totarget という概念に即して治療選択をしています。
さらには医療機器の充実も計らなければなりません。内視鏡や透視を中心とした医療機器を用いるうえで、できるだけ苦痛を与えない検査が望まれており、最近ではカプセル内視鏡やCT、MRIの検査が欧米では一般化しつつあります。当院でもそれらの検査は可能であり、小腸内視鏡もできる施設ですから、IBDの検査についても充実した医療を提供できると考えています。
IBDは、社会的にはまだ認知度が低く、入退院を繰り返すような大変な病気であることがほとんど知られていませんので、これから外来と併せて、啓蒙活動もやれたらと思っています。